プログラムと使用曲
「BEYOND」は、スケーターの登場口に設置された大きなLEDヴィジョンを背景に、映像とスケートを融合した新しいアイスショーです。
スケーターのパフォーマンスとヴィジョンに映し出された映像が、見事に物語をつないでいます。
ですから、わたしたちはリンクの中で起こっていることなのか、映像の中で起こっていることなのか、時々見分けがつかなくなり、より一層幻想的な空間を堪能できるのです。
これまで暗転するしかなかった場面も、映像が物語をつむぐことにより、一つのストーリーとして深い一体感と高い非日常の体験が可能となりました。
まずはLEDヴィジョンに「BEYOND」のコンセプトや、スケーターたちの紹介動画が映し出されます。
そこから11人のスケーターたちの影が登場するのですが、まるで映像の中から飛び出てきたよう。
映像の中にいるのか、リンクの上に立っているのか分からなくなります。
確かに存在する生身の体で、ゴールドの衣装をまとって滑る最初のプログラムは、スウィング・ジャズの代表曲「Sing, Sing, Sing」。
さあ、いよいよ「BEYOND」の幕開けです。
※ちなみに滋賀公演ではマルティネス エルネストさんがケガのため休場ですので、10人でのショーでした。
Sing, Sing, Sing シング・シング・シング 全員
「BEYOND」最初のプログラムは、この予告通りのまま、きらきらゴールドの衣装で全員で踊る「Sing, Sing, Sing」です。
真央ちゃんだけ衣装にローズのアクセントカラーがついています。
ノリがよい有名なスウィング・ジャズの代表曲ですから、全員で踊る迫力ある群舞と楽しげな雰囲気が一気に観客を沸き立たせます。
わたしたちの心はわしづかみ。
スケーターたちが縦横無尽に次々とリンクを駆け巡り、まずはスケートならではのスピード感をお披露目。
かなり真央ちゃんたちが寄ってきてくれるので、ショートサイドの真ん中の席の当たりは、ラッキーシートですね。
帽子を使ったパフォーマンスもアイスショーならでは。
最後に真央ちゃんが投げた帽子が、映像と一体化してゆくのも遊び心が聞いていて楽しいですよ。
I Got Rhythm アイ・ガット・リズム 柴田以外全員
まさに「IT’S SHOWTIME!!」と言った、ノリのいい「Sing, Sing, Sing」の後、真央ちゃんの投げた帽子はふわりと青い空を舞い、美しい自然の輝く山の中への家へと場面が変わります。
この画像の左手上に映っているように、野性動物も生息する田舎町でしょうか。
わたしはスイスの山奥、アルプスの少女ハイジが浮かびましたが、北アメリカかカナダの風景か…。
登場するのは、小山 渚紗さん、松田 悠良さん、今原 実丘さん、小林 レオニー 百音さん、中村 優さん、山本 恭廉 さん、田村 岳斗さん、女性4人、男性3人、計7人のスケーターです。
曲目の途中で真央ちゃんも登場します。
50年代か60年代のアメリカンポップ風、レトロな衣装がとてもキュート。
男の子たちは掃除用ブラシを、女の子たちはおぼんを持って踊ります。
何か特別な日というより、普段の日常に音楽と踊りが溢れているミュージカル調に物語は進みます。
ここで女の子たちがカゴからおみやげを出して、観客にわたします。
もらえた人はラッキー。
多分子供とかをねらってあげてるみたい。
ほぼすべてのスケーターがジャンプも飛んでいたような気がします。
楽しい、一緒に踊りたくナンバーが続きます。
京都公演でショートサイドの真ん中から見ないと分からない演出だったのですが、踊っているスケーターから、ぱっと花が広がっていくようなLEDヴィジョンの画像が美しかったですね。
やはり一度はショートのど真ん中で観るべきですね。
ヴァイオリンと管弦楽のためのファンタジア 今井遥+柴田
楽しかったミュージカル調のナンバーから一転、LEDヴィジョンには嵐のような不穏な雰囲気が…。
やがて嵐は去り、美しい、おそらくラヴェンダーの花畑がヴィジョンに映し出されます。
もうここで真央ファンなら次の曲が分かりましたね。
「ヴァイオリンと管弦楽のためのファンタジア」映画「ラヴェンダーの咲く庭で」からのナンバーです。
今井遥さんのソロプログラムでした。
確か紫か青かの長めのスカート丈の衣装だったと記憶しております。
遥さんの清楚華憐な魅力全開に、スピードに乗ったのびやかなスケーティングで、会場はしっとりとした雰囲気に包まれます。
彼女がLEDヴィジョンの前を滑ると、ヴィジョンからぱーっと花が舞ってこぼれ落ちてゆくよう。
音楽とヴィジョンにぴったり合わせて滑るってきっと難しいんでしょうねぇ…。
スパイラルもとても美しいです。
スパイラルは一つの女性スケーターの見せ場だって思うんです。
途中で柴田 嶺さんが合流し、ペアプログラムになります。
柴田 嶺さんは選手時代ペアで活躍したスケーターですから、ペアプログラムはお手の物。
彫りの深いハンサムな顔立ちは、ノーブルな王子役がぴったりとはまり、遥さんと美しい滑りを世界を繰り広げます。
衣装はサンクスツアーのノクターンのときと似たデザインのノーブルな淡い青。
柴田さんは滑りも美しく、ジャンプも安定しており、一緒に鑑賞した全くスケートに興味のないフレディでさえ、
「こいつ上手いな。」と拍手を送っていました。
セイヘイキッズ Say Hey Kid 松田 悠良
続いてビジョンは大自然から離れて、夜の大都会へと迫ってゆきます。
わたしの受けた印象は、ニューヨークのブロードウェイの街並み。
ヴィジョンに映し出された女性は、松田 悠良さん。
画像のピンクの衣装のスケーターです。
演じるのはキャバレーのダンサーでしょうか。
ノリの良いジャズナンバーです。
悠良さんは海外でもスケートをされた経験があるようで、キュートだけどちょっぴりすました踊り子がとても合っていました。
スピードもよく出ており溌剌とした笑顔で、三連続ジャンプもばっちり決めていました。
スパイラルも美しく、手足が細くて華奢できれいですね~。
「Say Hey Kid」は真央ちゃんのノービス時代、小学生の頃のプログラムです。
スケーターたちのソロプログラムは全て真央ちゃんが選んで振り付けしたのだそう。
タラソアコーチや、ローリー・ニコルの振り付けで、あますことなく魅力を引き出された真央ちゃんは、他人の魅力を引き出すのも上手いようですね。
これはやはり長い間、様々なプログラムに挑んできた真央ちゃんだからできること。
同じプログラムばかり滑るような選手じゃあ、難しいんじゃないでしょうか。
Pick Yourself Up ピック・ユアセルフ・アップ 中村&山本&田村
「Say Hey Kid」の曲の途中から、男性たちが合流します。
田村 岳斗さん、中村 優さん、山本 恭廉さん、三人の男性スケーターの競演です。
彼らもまたブロードウェイのダンサーで、ライバルなのか修行中の身の師弟関係なのでしょうか。
競うように自分たちの得意技を順番に披露してゆきます。
流れる曲は「Pick Yourself Up」、ボーカルはナット・キング・コールです。
なまめかしい大人の雰囲気のジャズで、とてもおしゃれでダンディなプログラムですね。
特に最年長スケーター岳斗さんが、ピリリとした渋みを感じさせます。
三人のジャンプ大会がありますね。
山本さんは無難にこなし、中村さんは高さがあり、田村さんは着氷がなめらかです。
シェヘラザード ペアプログラム 真央&柴田
浅田真央現役2011年プログラム
2011年~2012年の浅田現役時代のプログラムシェヘラザードは、特にわたしの大好きなナンバーです。
パンツルックでかわいいと思った衣装は初めてで、歴代の中で一番好きな衣装かもしれません。
でもパンツだとジャンプが飛びにくいそうで、途中でトリプルアクセル仕様とかでスカートに代わってしまいました。
そんな大好きなプログラムでしたから、イントロが流れただけで「シェヘラザードだ!」ってすぐに分かりましたとも!!
あの、これから何か始まる!という音が重なりあって広がっていくメロディーがたまらない!
現役時代に使ったシェヘラザードは、ポップでキュートな曲調で、より異国情緒が強く出るようキラキラにアレンジされていました。
しかし「BEYOND」バージョンは、よく使用されるスタンダードなクラッシックオーケストラバージョンのようで、重厚で格式の高い曲が使われていました。
そして…、
あの愛らしく溌剌とした王妃を演じていた真央ちゃんが、「BEYOND」では、イケメン奴隷を誘惑する淫乱な人妻になっていた…!!
バレエ「シェヘラザード」のストーリー
シェヘラザードは、226年 – 651年に実際にあった王国サーサーン朝が舞台です。
「アラビアンナイト(千夜一夜物語)」の語り手として知られるのがシェヘラザードという女性です。
ですがバレエの演目であるこのシェヘラザードのストーリーは、シャハリヤール王の留守中に王妃ゾベイダが「金の奴隷」と呼ばれた美しい奴隷男性と、密会するというものです。
王妃ゾベイダを真央ちゃんが、金の奴隷をペア経験豊かな柴田嶺さんが演じるペアプログラムなのです。
二人の不倫現場を表現するわけですから、それはもう官能的であの清楚華憐な真央ちゃんがエロエロの性欲我慢できない人妻になっとるというわけですね。
真央ちゃん、金の奴隷の上に、馬乗りになって激しく求め合っておったよ。
わたしも今回まで知らなかったのですが、「シェヘラザード」のシェヘラザードとは、ゾベイダに裏切られたシャハリヤール王がずっと後に結婚する王妃の名前なんです。
ですから「シェヘラザート」にシェヘラザードは出てこないという何ともややこしいタイトルです。
わたしはこれまでずっと真央ちゃんはタイトル通り「シェヘラザード」という王妃を演じてるんだと思っていましたが、そうではなくわたしの壮大な勘違いでしたとさ。
フィギュアスケート版シェヘラザードのみどころ
真央&柴田判シェヘラザードは、ほぼこの動画のバレエプログラムを忠実に再現したプログラムになっています。
このバレエに、フィギュアスケートにしか出せないスピード感が加わるわけです。
このプログラム、真央ちゃんは、衣装を隠すようなフードをかぶってショートサイドの一番左手から登場します。
わたし、ショートサイドの一番右端の席だったから、全く真央ちゃんの登場が見えなかった。
しかし!京都公演一日目では反対の右手から登場してました。
そして二日目!わたしの席隣りの通路を、オレンジ色の布で姿を隠した真央ちゃんが通り抜けました。
そしてスモークの中から登場する真央ちゃんの気高さと美しさといったら!
目に入ったときは、現役時代よりさらに衣装の露出が激しくなってる!と感じました。
続いて柴田さんも登場するのですが、真央ちゃんに見とれている間にいつのまにかわたしの横を通り抜けて、スタンバイしてた模様。
二人ともアスリートですから、鍛えられ挙げた体の露出の高い衣装は、色気はあっても芸術品のようで、下品にならないのが素晴らしいですね。
浅田真央の常人離れした柔らかでしなやか体は、見事に官能的で美しい愛の世界を描き切っていました。
王妃と奴隷ですから、当然女性が立場は上で、当初はほどこしを与えてやるようなつんとすました真央ちゃんを堪能できます。
やがて二人が愛を重ねるうちに、お互いが分身のように、映し合う鏡のように一体化してゆきます。
特に柴田さんとリフトで高く持ち上げられた真央ちゃんが、リンクの中を颯爽と滑ってゆく姿は圧巻でした。
まさに幻想的なおとぎの国の王妃のように、神々しさすらただよっていました。
カルメンメドレー
前奏曲〜プレリュード 小林
シェヘラザードという美しいバレエの世界を堪能した後は、何とオペラ、カルメンの世界です。
バレエとオペラ、さらにミュージカルやジャズが堪能できるこんなショー、観たことありますか?
激しい雷の音の中から登場するのは、黒い衣装に赤いバラの髪飾りをつけた小林 レオニー百音さんです。
キリリとした顔立ちに長身の体が、強くてダイナミックなジプシーカルメンにぴったりと合っていました。
本人もパンフレットでカルメンは得意と述べています。
炎が燃え上がるような情熱と、空気を切り裂くような勢いと迫力があり、音楽とふりつけがぴったりと合っていました。
キレのある演技で、ジャンプも決めてスピンもとてもきれいでした。
前奏曲〜アラゴネーズ 今原
続いて黄色の衣装で登場するのは、小林 レオニー百音さんと同じ年コンビ、今原美丘のソロです。
スペイン調の勇ましくドラマティックな曲調にのって、細かく刻む音にあわせた躍動感のある滑りを魅せます。
パンフレットには、ソロプログラムにジャンプを入れない選択をしたと記載されていましたが、京都公演では両日とも3回転ジャンプをミスなく飛んでいました。
まさに覚悟と進化!
若いのびしろのあるスケーターが、公演中にどんどん進化を遂げていくのも「BEYOND」のみどころ。
フレッシュな若い二人が、情熱の国、スペインへといざないます。
ハバネラ「恋は野の鳥」 小山 中村 山本
いよいよカルメンの登場、赤い衣装を来た小山 渚紗さんです。
なぜ彼女がカルメンだと思ったかというと、ハバネラはカルメンが歌う曲だからです。
ハバネラは、キューバの首都ハバマにちなんだダンス音楽のことです。
「恋はきまぐれ。私に好かれたらおしまいよ!」という歌詞があって、誰のものにもならないのに、恋多きカルメンのモチーフとなる曲です。
小山さんはハバネラを舞う途中で、衣装の黒いショールを男性スケーター(中村優さん?)からはぎとられるんです。
このショールをとる場面が、カルメンがカッシアの花をドン・ホセに投げつけて余韻を残すというシーンのオマージュかと思い、そのように判断しました。
カルメンは悪女なわけですが、渚紗さんが滑るのは清楚華憐なカルメンですね。
この清楚なカルメンにからんでくるのは、フレッシュな同級生男性コンビ、中村優さんと山本恭廉さんです。
中村さんが衛兵伍長ドン・ホセとで、山本さんが闘牛士エスカミーリョかなあ?
カルメンと取り合ったり、二人の男性がカルメンをリフトで持ち上げるシーンも出てきます。
カルメンは去ってゆき、どうやらドン・ホセはにふられたようで、続いて男性スケーター二人の競演となります。
アイスショーを初めて見に行ったときに感じたことは、男性スケーターてちっちゃいんですが、端正こめて作ったお人形さんみたいにシュッとして洗練されていて引き締まっていて皆きれいなんですよね~。
画像の通り、スペインの民族風な衣装もとても似合っていますね。
カルメンはドラマティックで耳に覚えある曲も多く、男性ならではのダイナミックな動きの見せ場にふさわしい演目です。
特に中村優さんは、「BEYOND」のジャンパーを自称しています。
美しい二人の男性スケーターが、男性ならではの大技で、「BEYOND」中盤を盛り上げてゆきます。
ジプシーの踊り 今井
さらにタンバリンを手にした今井遥さんの登場です。
何だか鈴みたいな音がしゃらしゃら鳴っているなと振り返ったら、ちょうどわたしの席の通路を遥かさんが横切っていくところでした。
真央ちゃんのシェヘラザートと同じ場所からスケートを始めます。
今井遥さんはここぞというときに登場しますから、おそらく「BEYOND」の女性準主役のようなポジションなのでしょう。
愛らしく、それでいてスピートに乗った軽やか滑りで魅せます。
エキゾチックなメロディにタンバリンを合わせた振り付けがとてもキュート。
この「ジプシーの踊り」は、ラストに向かって疾走感が増してゆく、非常にフィギュアスケート向きの曲ですね。
闘牛士
カルメンラストは、登場した女性4人、男性2人、計6人の群舞です。
カルメンはどの曲もスペイン調で情熱的、ノリの良いナンバーが多いので、たっぷりと時間が取られていました。
また浅田真央以外の比較的フレッシュで若いメンバーが中心に表現しているところもみどころです。
闘牛士はバラエティーなどの挿入歌によく使われ、誰でも聞いたことのある躍動感のあるエネルギッシュなメロディーです。
フレッシュなメンバーのスピンの競演や、馬が跳ねるような躍動感のある振り付けがみどころです。
ショパン
バラード第1番 ト短調 作品23 浅田真央ソロ
スペインの情熱的なカルメンの世界の後は、ピアノの詩人、ショパンの情緒豊かで叙情的な音楽の登場です。
浅田真央2010~2011年、二十歳の頃のエキシビジョンプログラムで、わたしの大好きな曲です。
だから曲が流れたとたん、すぐにショパンのバラードだ!と分かりましたとも。
浅田真央ほどショパンが似合う女性はいるのでしょうか。
タラソアコーチの作ったこのプログラムは、一人で練習するバレリーナというテーマだそうで、要はストイックに自分と向き合い、自分のためだけにバレエを舞っているわけです。
一人で練習しているわけですから、本来ならわたしたちの目に触れるわけでもないのに、うっかり目にしてしまって、見てはいけない見てはいけないと思いながら、その美しさに息をのみ、目が離せないという、わたしにとってそんなプログラムです。
このバラードはショパンの中でも難解度の高い曲として有名です。
くるくると曲調が代わり、細かなピアノの音色と浅田真央のしなやかな体がぴったりと一致し、それはそれは美しい芸術品を奏でているようです。
白いバレリーナ風の衣装が好きだったのですが、「BEYOND」では少し露出を控えたスカート丈が眺めの青いドレスでした。
だけど背中がぱっくりと開いていて、10年の時を越え、大人になりしっとりとしたそれでいてドラマティックな滑りで魅せます。
いつまでもいつまでも見ていたくなる、浅田真央の持つそのままの美しさが堪能できるプログラムです。
ジャンプも三回入ってましたし、後半のたたみかけるようなスピード感とI字スピン(Y字スピンかもしれない)も、見事なものです。
幻想即興曲 全員
ドラマティックでしんみりするバラードの後は、同じショパンでも疾走感のある幻想即興曲です。
この曲はオープニングとラストを除いて、メンバー全員で滑る唯一の群舞なのですって。
以外だったのは、幻想即興曲、群舞がとても似合う曲調なんです。
この曲は乃木坂46の振り付けなどで有名なSeishiroさんというダンサーの振り付けです。
澪のCMで真央さんの振り付けをしたことがご縁なのだとか。
Seishiroさんは、ダンサーたちに同時に違う形のポーズや振りつけをすることでできあがる独特の世界観が魅力の振付師です。
確かにあまり人間ってこういう姿勢はとらないなという不思議なポーズは、曲の名前の通り、幻想的な空間を作り出していました。
それぞれ違う動きをしても、決してドタバタせずなめらかで、それできて無機質でロボットっぽいんですよね。
つけ袖が羽根のように見える白い衣装は、まるで天使のよう。
ピアノの音色が、天使の羽根の動きとぴったりと合うんです!
くねくねして人間の自然な動きに逆らうような動きは、この世のものじゃない存在感を醸し出していました。
わたしには異世界から舞い降りた天使たちが、地上でつかの間の戯れを楽しんでいるように見えました。
天使たちがスピード感のあるこの曲に乗って、くるくると駆け巡る迫力は圧巻。
昇りつめてゆくような曲調に、スケーターたちのテンションも舞い上がってゆくようで、非常にダイナミックで不思議な余韻を残すプログラムになりました。
香りの演出
さらに新しい試みとして香りの演出がありました!
恐らくグッズで販売されている「幻想即興曲」をイメージしたフレグランス《BEYOND NOTE #02》の香りだと思うんです。
S席以上でないと分からないかもしれませんが、演目中、強く香ってきましたよ。
オンラインでは売り切れですが、わたしはこのフレグランス、京都公演で購入できました。
帰る頃には売り切れてましたね。
シュニトケのタンゴ 中村&山本&田村
天使たちが去った後、不思議な空間は消え失せて、次に奏でられるのは情熱的でありながらどこか退廃的な音楽「シュニトケのタンゴ」です。
ドイツユダヤ系の音楽家であるアルフレット・シュニトケが作曲したタンゴで、ソビエト連邦の映画「AGONY(苦悶)『邦題:ロマノフ王朝の最期』」の使用曲として有名です。
苦悶とか最期がテーマの映画ですから、「滅び」がこの曲の一つのモチーフでしょうか。
浅田真央2010年~2011年のショートプログラムでした。
最初に登場するのは中村 優さん。
続いて山本 恭廉さん、最後に田村 岳斗さんと、男性三人の情熱的なタンゴです。
透け感のあるセクシーな衣装が、けだるいタンゴの雰囲気に合っており、おしゃれですね。
中村優さんはなかなかの流し目で色気を魅せ、山本 恭廉さんは底抜けに明るい笑顔がとてもキュート。
田村 岳斗さんは最年長の大人の魅力で背も高く、胸元が一番開いている衣装でした。
この曲は同じフレーズが何度も繰り返されながら盛り上がってゆく、もの悲しさの中に不思議な強さと激しさを感じさせる音楽です。
その激しさを増す迫力のある曲調を、力強い男性三人の男性の滑りが盛り上げてゆきます。
それは滅びの直前に、一層強く燃える断末魔の叫びのようですね。
白鳥の湖 女性全員&柴田&田村
ヴィジョンがまた新たな物語を紡ぎ始め、白鳥の衣装をまとった真央ちゃんが映し出されます。
2012年~2013年シーズンの、フリープログラムですね。
当時は4分半につめこまれた白鳥の湖が、何とまあ、本場バレエさながら深い物語性のある壮大なショーに生まれ変わりました。
おそらく「BEYOND」で最も長く演出にも凝ったプログラムなのですが、記載している使用曲には正直自信ないです。
そんなにバレエ詳しくないので、間違っていたらごめんね!
第10曲 情景:モデラート
美しく静かな夜のこと。
5羽の美しい白鳥が、深い森の湖のほとりをかこむように羽根を閉じてたたずんでいます。
低くふせて氷にぴったりと体を添わせる姿はもう、白鳥にしか見えません!
やがて白鳥たちは羽根を広げて、少しづつ立ち上がり踊りだします。
恐らく白鳥から人間へと戻ってゆく姿を描いているのでしょう。
この白鳥たちは、ロットバルトという悪魔に呪いをかけられて、王女オデットとともに人間から白鳥に変えられてしまったオデットの侍女たちです。
夜の間だけ、白鳥から人間に戻ることができるのです。
やがて白鳥狩りをするために、王子ジークフリート(柴田 嶺さん )がやってきます。
そして悪魔ロットバルト(田村 岳斗さん)があらわれて、一波乱も二波乱も起こりそうな不穏な空気がただよいます。
ロットバルトはふくろうの悪魔だそうで、黒い羽根のついたおどろおどろしい衣装も素敵ですよ。
第13曲 白鳥たちの踊り
さあ、白い衣装を来た浅田真央のオデット姫が登場です。
王子ジークフリートと恋に落ちるペアプログラムですね。
このシーンの見せ場として、2回転スロージャンプがありますが、滋賀公演初日は失敗でしたね。
翌日も観に行きましたが、1回転だったような…。
もう忘れちゃった。
京都公演では二日とも成功していました。
パ・ダクシオン:アンダンテ – アンダンテ・ノン・トロッポ【オデットと王子のパ・ダクシオン】
モデラート・アッサイ【オデット・ソロ】
コーダ:アレグロ・ヴィーヴォ
第5曲 パ・ド・ドゥ
ビジョンにはお城の風景が映し出されます。
王子ジークフリートが、お妃を選ぶための舞踏会の開催です。
白鳥オデット姫にうりふたつである悪魔ロットバルトの娘、黒鳥オディールが王子を誘惑します。
黒鳥の浅田真央は、その名の通り黒い衣装で、片足だけレースのストッキングがついたアシンメトリーの衣装です。
これが片方だけのストッキングが何ともいえず妖艶で、王子を誘惑する魔性の女性の悪さを引き立てています。
黒鳥は意地の悪い顔をして、観客にも悪をアピールしていますよ。
そしてこのシーン最大の見せ場が、浅田真央にしかできないステップ、本場バレエさながらのの32回転グラン・フェッテ・アン・トゥールナンです。
白鳥の湖の見せ場であるグラン・フェッテは、最も有名で難易度の高い回転技です。
現役シーズンの頃、この回転技を取り入れた難しいステップは、世界一美しいとされた浅田真央のステップの一つの代表作でもありました。
しかし今回の「BEYOND」の大回転、競技と違って制限時間がないものですから、いつまでもいつまでもリンクを大きく使って周り続けるのです。
これができるフィギュアスケーターが、浅田のほかにいるのでしょうか。
わたしはここで、オリンピックを越えたもの、競技をこえたもの、をまざまざと見せつけられました。
浅田真央にオリンピックメダルなど必要なかった。
なぜならあくまでルールという制約にしばられた競技であるオリンピックの制限の中では、本当の浅田の持つ技術や魅力、素晴らしさを計ることができないからです。
ちなみにこの大回転は、少し上から観る方がおすすめです。
SS席だけが素晴らしいわけではないのです。
アンダンテ
テンポ・ディ・ヴァルス
コーダ:アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ
第29曲 フィナーレの情景:アンダンテ – アレグロ・アジタート
たった4分程度の競技と違って、深い物語性を見せてくれた白鳥の湖もいよいよ終幕です。
見事王子ジークフリートを誘惑するのに成功した黒鳥オディール。
父親のロットバルトとともに、王子を置き去りにして去ってゆきます。
一人残され途方にくれるジークフリート。
あれ?白鳥の湖って、ハッピーエンドじゃなかったっけ?と思ったのですが、悲劇で終わるバージョンもあるのですって。
チャールダッシュ 女性全員&柴田以外の男性
続いてLEDビジョンにお城のような建物が映し出されます。
ハリーポッターのような雰囲気でした。
そのお城に一室の、大きな本棚が並ぶ図書室のようなところで、真央ちゃんが一冊の本を選び出します。
その本に書かれた題名が「Csárdás(チャールダッシュ)」、浅田真央、2006~2007シーズンのフリースケーティング曲です。
「チャール」はハンガリー語で酒場という意味で、「チャールダッシュ」は男女ペアで踊るハンガリーの民族舞踊です。
中世ヨーロッパのエスニック風な衣装がとてもキュート。
ひらひらと風をはらんで舞うスカートの動きにも注目です。
ピアノのポロロンという音に合わせて計算されたかのようにスカートがひらりと舞い上がるんです!
何度も言いますが、フィギュアスケートの魅力は風を巻き起こすぐらいのぐらいのスピード感ですよね!
一人だけオレンジのスカートを身に着けているのは松田 悠良さんですね。
彼女のソロの動きもありますので、チャールダッシュのメインスケーターなのでしょう。
ジャンプも決めていました。
バックを彩るイチョウの木や風車などの風景は、オランダっぽく感じました。
男女ペアで踊る「チャールダッシュ」は、数名で踊る群舞だと思うのですが、エルニ君の欠席により男性が一人足りないのでしょうね。
大きく輪になってリンクを広く使う群舞は、多人数ならではの迫力です。
「チャールダッシュ」はフィギュアスケートでもよく使われる曲だけあって、盛り上がってゆくときに疾走感や、楽し気でノリのいいメロディーが、「BEYOND」の後半を盛り上げます。
Capricci カプリース 浅田真央ソロ
イタリアの作曲家ニコロ・パガニーニが作曲したヴァイオリン独奏曲カプリースとは奇想曲という意味です。
奇想曲は形式にとらわれない気まぐれな性格を表す楽曲のこと。
パガニーニはヴァイオリンの超絶技巧奏者として有名で、「悪魔に魂を売り渡した代わりにその演奏技術を得た。」と言われるほどの伝説のヴァイオリニストでした。
そのためかこのカプリース、何とも気まぐれでありながら中毒性の高い曲で、美しく切なく情緒的でありながら、激しさや情熱、官能、それでいて楽しさもただよわせるような不思議な曲ですね。
2009-2010年、浅田真央バンクーバーオリンピックのエキシビジョンプログラムです。
あれから12年の時を越えて、大人になった浅田真央が魅せるカプリースは、パープルの衣装がとてもセクシーです。
細かく刻むヴァイオリンの音と浅田真央の動きがぴったりと重なり、その滑りの素晴らしさの真骨頂が発揮されるプログラムです。
またピアノの調べはドラマティックに回転する浅田真央から奏でられているような一体感。
音楽とスピードに乗って広いリンクを縦横無尽に滑り、なんとまあ、クリムキンイーグルで魅せます。
狂ったような激しさと、一方で不思議な優雅さを感じさせるプログラムです。
美しい曲、情熱的な曲、しっとりとした曲、楽しい曲、何を滑ってもこれほど絵になるスケーターが他にいるなら教えてほしいでーす。
愛の夢 全員
情熱的なカプリースの後は、美しくも儚く、優しく幻想的なフランツ・リスト作曲「愛の夢」です。
ピアノを習っていたわたしが弾くことのできる中で最も難易度の高いという思い出の大好きな曲です。
今はもう弾けなくなっちゃったけど…。
浅田真央2010-2012年の2シーズンに渡って使用したフリープログラムですね。
さあ、夢のような世界「BEYOND」ももうクライマックスに近づいています。
この夢のように美しい世界は、「愛の夢」により天へと昇華されてゆくようです。
このプログラム、一人づつ登場してやがて全員で舞う群舞ですね。
まずは柴田 嶺さんと小山 渚紗さんが登場します。
続いて今原美丘さん、松田 悠良さんのが登場し、女性らしいきれいなスピンで魅せます。
それから中村 優さん、山本 恭廉さん、小林 レオニー 百音さん、今井遥さん、田村 岳斗さんの順で登場していたと記憶しています。
わたしは気がつかなかったのですが、松田悠良さんが浅田真央さんにプレゼントを手渡しするシーンが再現されているそうです。
そしてわたしが最も好きだったシーン、浅田真央さんが駆けだしてゆく振り付けがあったんですね。
このシーンは田村岳斗さんが駆けだしていました。
「覚悟と進化」という「BEYOND」のテーマの中で、何か夢的なもの、到達点に向かって駆け出していったのでしょうか。
優しく果てしない世界がどんどんとふくらんで世界を包みこんでゆくようです。
非常に幻想的で甘美、それでいて少しほろ苦さも漂うしっとりとしたプログラムです。
BEYOND 全員
さあいよいよ「BEYOND」もクライマックスです。
ラストを飾るのはこのアイスショーのオリジナルテーマ曲「BEYOND」ですね。
Devin Kinoshita(デビン木下)さんと言う音楽家が作った曲で、京都公演にお越しでラストに紹介されていらっしゃいました。
少し安室奈美恵さんの「Hero」という曲に似ている曲調だと感じました。
荘厳な奥行きのある曲ですが、ドラマティックで強さと美しさの両方を感じさせる響きです。
まさに覚悟、進化、挑戦にぴったりの楽曲ですね。
さらなる進化を遂げ、高みに登ってゆくのにふさわしい美しくゴージャスな羽根のついた衣装です。
ラストの挨拶のとき、手をあげるだけで舞い上がってゆくように、とてもこの羽根が映えるんです。
わたしにとっては本当に美しい天使たちが舞い降りて、夢の世界を見せてくれたような印象でしたが、浅田真央のイメージではフェニックスらしいです。
フェニックスは、炎の中から何度でも蘇るため、不死鳥や火の鳥とも呼ばれていますね。
このフェニックスたちは、何度でも立ち上がり、情熱という炎を燃やし続け、次なる大地に夢を届けるために再び舞い上がってゆくのでしょう。
いいえ大地よりも地球よりももっと大きなもの。
わたしはこの浅田真央が「BEYOND」にこめたものとして、終わりのない宇宙のイメージが浮かびました。
黒をベースとしたBEYONDカラーに、キラキラとしたゴールドの光は星のまたたきのようで、まさに宇宙色です。
手塚治虫の漫画作品「火の鳥」に登場するフェニックスは、宇宙や時空さえも飛び越え自由に飛び回っていました。
浅田真央の宇宙スケールのスケートへの果てなき愛は、燃え尽きることなどありまてん!
オリンピックを越えたもの
いや~「BEYOND」、すばらしかったですね~。
「サンクスツアー」とどちらが良いかと聞かれれば、サンクツツアーは色とりどりのカラフルなお花がイメージでグッズも華やかでレディなわたしの好みでした。
また色んなプログラムを楽しめるバラエティー豊かなアイスショーでした。
「BEYOND」は黒とゴールドがイメージカラーで、大人のかっこよさや洗練さを増したアイスショーでした。
次から次へと紡いでゆく「サンクスツアー」と違って、「カルメン」や「白鳥の湖」など、一つの世界をじっくりと見せていくような作りに感じました。
どちらが良いかは好みですが、どちらも素晴らしい浅田真央の頭の中のやりたいことが実現されたショーには違いありません。
「サンクスツアー」を開催しているうちに、さらにイメージが膨らんできて、それを「BEYOND」でやってのけたという印象です。
「BEYOND」で新しい真央ちゃんが見られるかと思ったけど、ほとんどは過去に使った曲で、新しいプログラムは、「Sing, Sing, Sing」と「BEYOND」だけでしたね。
それでも全然斬新で新鮮で新しい真央ちゃんが発揮されたショーでした。
今回、使用曲を細かく調べたので、京都公演までにしっかり聞いて予習して、さらにその世界観を深く堪能する予定です。
わたしが「BEYOND」で感じたこと、それはやはりテーマにもあるように「覚悟・進化・挑戦」です。
白鳥の湖で書いたように、決してルールのあるオリンピック競技の制限の中ではできないことが、この「BEYOND」には強く息づいていました。
勝負事にルールがあるのは仕方がない。
ルールがないショーだからこそ実現できたこの日常を越えてゆく挑戦と進化を、わたしはどのように語り、伝えれば良いのでしょう。
まさに浅田真央は唯一無二の存在、こんなスケーターは二度とあらわれないのではないでしょうか。
日本スケート連盟は、これほどのスケーターにオリンピックメダルを獲らせることができなかったことを、未来永劫恥続ければいい。
浅田真央の宇宙すら凌駕するその愛を、地上に姿をあらわしたフィギュアスケートの女神のその神々しい姿を、感じることの幸せを、史上の喜びを、またたび一緒に体験しようではありませんか!
では、次回は「BEYOND」大阪公演でお会いしましょう!
まだチケット当たっておらんけどな。
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