煙が目にしみる/Smoke Gets In Your Eyes
「煙が目にしみる/Smoke Gets In Your Eyes」は1933年にミュージカル「ロバータ/Roberta」の舞台のために書かれた曲です。
ジャズのスタンダートナンバーとして有名です。
作曲:ジェローム・カーン/Jerome David Kern
作詞:オットー・ハルバック/Otto Harbach
「煙が目にしみる/Smoke Gets In Your Eyes」は恋の炎が消えたとき、その煙が目にしみて涙がとまらないという意味ですね。
ミュージカルの曲らしく、比喩的でおしゃれなタイトルです。
盲目のように愛を信じていた若葉の頃と、失ってしまった今の悲しみを、高らかに歌い上げます。
壮大でゆったりとしたメロディーは、あまりに優しく美しく、狂おしいほどの哀愁を呼び起こします。
美しい音楽や芸術とは、悲しみや苦しみに打ちひしがれた時に、生み出されるもの なのかもしれません。
悲しみや苦しみもまた、感動の一部だと知れば、生きる喜びを味わい尽くす要素だとすれば、なおいっそう人生が愛しくなるでしょう。
絶望から立ち上がってゆく人間の気高さと美しさに、惜しみない賛歌を送らずにはい られません。
素晴らしい名曲なので、世界中の有名な歌手がカバーしています。
ガートルード・ニーセン
1933年に「ガートルード・ニーセン/Gertrude Niesen」によって録音された初代「煙が目にしみる」です。
この時代を知らないし生きたはずもないのに、何とも言えない懐かしさがこみあげてきます。
ナット・キング・コール/Nat King Cole
1946年にカバーされた「ナット・キング・コール/Nat King Cole」バージョンです。
ナット・キング・コールはジャズピアニストとしても名高く、ピアノ版「煙が目にしみる」も情緒深く美しく響きます。
プラターズ/The Platters
1958年にリバイバルヒットした、コーラスグループ「ザ・プラターズ/The Platters」バージョンです。
このカバーが一番有名で、わたしも一番好きな「煙が目にしみる」です。
イントロが流れた瞬間、人生で最も愛しく美しい時間の中に永遠にとどまったままいられるような、そんな不思議な世界に連れていかれます。
リフレインが多いのも、止まったときの中で漂っているような感覚を味わえる特徴でしょう。
わたしたちは何度、人生の中でこのような美しい時間に出会うことができるのでしょうか。
J.D.サウザー/John David Souther
わたしがこの曲を知るきっかけとなったのは、1989年スティーブン・スピルバーグ監督作品の「ALWAYS」という映画で挿入歌として使われていたからです。
オードリーヘップバーン最後の出演作で知られるこの映画、ストーリーは全然覚えてないんです。
確か幽霊の話で、オードリーは妖精の役だったような…。
この映画の中で「煙が目にしみる」を歌っていたのが、「J.D.サウザー/John David Souther」ですね。
この曲はラストの「Smoke Gets In Your Eyes」を朗々と歌い上げれるのが一つの聞かせどころだと思うのです。
そのラストを飾る深みのあるドラマティックな響きが、人生のあらゆる悲しみ苦しみを煙ともに昇華させてゆくようです。
この美しい曲に出会えた幸せを、
この世界は美しいのだと知った喜びを
この美しい世界に生まれ落ちた奇跡を、
わたしたちも朗々と歌い上げようではありませんか。
コメント