結婚相談所でお見合いして、交際成立したセーブタさんと嵐山を初デート中のプチ初老ころん。
初デートなどどいう甘い響きはもはや皆無、炎天下の中ひたすら歩かされるという地獄の歩行訓練に過ぎなかった…。
どこまで歩かされるんだろう…と思っていたら、どうやら最初の目的地についたらしい。
もう忘れたけど、京都嵐山という舞台を考えると、どっかの寺院だわな。
ちなみにこのデートでランチの写真は撮影したものの、他の写真がないのは、ぐったりと疲れ果てていて、写真をとる気力がなかったからです。
そんなわけで、どこの寺院か知らないけど、嵐山では恐らく有名であろう寺院にたどりついた。
で、中に入ったらお庭が有名らしく、入場して散策したいとセーブタさんが言った。
えぇー…。
もう歩くの疲れたので、お庭の散策なんかしたくないんだけど…。
と思ったけれども、お庭が見所の寺院なら、散策しないとここまで来た意味ないわな、とあきらめるしかなかった。
もう歩きたくないわたしは、お金出してまでお庭なんて見たくないわと思ってたら、セーブタさんが、入場料払ってくれたわ。
不調の体を引きずって、わたしはお庭の散策をする。
これがまたでっかいお庭で、どこまで歩けばこの地獄が終わるのか…。
すると木陰のあるベンチがあったので
「ここで休んでいきましょう。」
とわたしは提案した。
木陰のあるベンチで並んで座り
「疲れましたねー、今日は暑いですねー。」
と、もうぐったりダウン中であることを、アピールしてみる。
わたしが暑い暑いと、お茶を飲んで、手をパタパタさせて、汗ばんだ肌をあおいでたら、セーブタさんが、扇子を貸してくれた。
気のきくことに、セーブタさんは二つ扇子を持っていた。
そこでわたしはひとつを借りて、セーブタさんが残りのひとつで、あおぐ。
わたしはデブなので暑がりの汗っかきなんです。
セーブタさんもデブなので、暑がりの汗っかきでしょう。
だから扇子は手放せない必須アイテムなのでしょう。
デブのカップルが、二人並んで、扇子であおぎながら涼をとる。
何かたわいのないおしゃべりもしたんだろうけど、もう忘れた。
腰かけて休んだので、わたしは少しは楽になったものの、何となく気だるい気分は、とれるものでもない。
しかしいつまでもここで休んでいても仕方ないので、そろそろ行きましょうかとわたしの方から提案したと記憶している。
しかし少し歩いたところで、やはりまた体調がおもわしくなくなってきた。
セーブタさんは第二の目的地に向かっているようだ。
そこでわたしは、もう限界です!とばかりに、体調が悪いことを、セーブタさんに伝えることにした。
「わたし、ちょっと日の光が苦手で…。
体調が悪くなってきたので、もう歩くのが無理かな…。」
するとセーブタさんは
「それはたいへんだ!
どこかで冷たいものでもとりましょか。」
と提案してくれた。
何だ、いい人じゃん。
…と思ったのもつかの間
「でも、あと5分だけ、頑張れませんかぁ~。」
と言ってきやがった!!
どうやらあと5分ほどで、次の目的地に着くらしい。
たとえあと5分、わたしが頑張って歩いたところで、そこでまた寺院の見学か、お庭の散策かで、歩かないといけないんだろう?
それすらも苦痛だから、こうして、もう歩けませんと伝えたというのに…。
もう歩けないと女性が言っているのなら、帰るか休むかだろうが!!
と、私は怒りを感じずにはいられないわけです。
お前一人で行け!
わたしゃ帰る!!
と言いたかったものの、わたしは本日どうしてもやり遂げなければならないミッションがある。
それは昔の男に買ってもらった、全くご利益のないお守りを、野宮神社に返しに行くことだ。
だからわたしは、とりあえず野宮神社には絶対に行かなければならないことを伝えた。
どうやらここから、5~10分程度の場所にあるらしい。
本当はもうセーブタがムカつくから一人で行って、そのまま帰宅してやろうかと思った。
だけどわたしは方向音痴で土地勘もないので、野宮神社の場所が分からない。
不本意ではあるが、この男に案内させるのが賢明であろう。
わたしたちは、野宮神社に向かって足を進める。
おそらくここは、有名な嵯峨野の竹林かと思う。
重い体を引きずりながら…
重いってのは、デブなので体重が重いって意味じゃないよ、
それもあるけど、体調不良で疲れて体が重くって感じてるって意味だからね、
重い体を引きずりながら、わたしは野宮神社を目指して力を振り絞る。
すると突然セーブタさんが
「このまま無理をして歩き続けたら、ぶっ倒れたりするんですかぁ~?」
と聞いてきた…。
何かコイツ、さっきからムカつくわー。
あまりにも無神経な質問に、わたしは返す言葉が思いつかない。
セーブタは続ける。
「よく朝礼でぶっ倒れている人、いますよね。
あんな感じですかぁ?」
と聞いてくるから、わたしはイライラしながら
「朝礼は貧血で倒れてるんでしょ。
わたしは貧血ではなくて、まあ、多少貧血が出ることもありますけど、日光が苦手で、当たり過ぎると気分が悪くなるんです!!」
と言ってやった。
しかしセーブタは、わたしがイラついているのにも全く気がつかず、しつこく同じ質問を繰り返す。
「朝礼でぶっ倒れたりするんですかぁ?」
さっきから
ぶっ倒れる
ぶっ倒れる
ぶっ倒れるって連呼しやがって。
下品な言葉使いだなー!
おい!
6歳も年下の女性に使う言葉使いやないで!
ホンマ、ムカつくわー!
ムカついてイラつくわ!
わたしはこのムカつきとイラつきを、あますことなく表現しながら
「わたしもね、大人なんだから、倒れそうと思ったら休んだり、救急車呼んだりするでしょ!
自分の体の調子ぐらい、自分で分かるでしょ!
大人なんだから!!
ぶっ倒れたことなんてないです!!」
とキツイ調子で言ってやった。
コイツ、ムカつくわー。
今日限りや!
今日でお前とは終わりや!
やはり三回目のジンクスは当たったな。
この相談所で出会って交際成立しても、三回会った時点でお互いのイヤなところが目につき終わる。
もれなくコイツとも、今日でさよならじゃ!
こんな話は噛み合わないわ、延々と歩き続けされられるわ、ハゲでデブな男なんて、いらないアル!
ころんはもうお前なんかいらないアルよ!
と、わたしは、今日でお別れすることを固く心に誓うのであった。
続く