好景気でお金がありあまっていたバブル時代。
派手にお金を使うことが、一つのステイタスでした。
ですから、バブル世代は今もお金の払いっぷりが豪快だって思うかもしれません。
ところが…。
実はバブル世代が使っていたお金の多くは、自分の懐を痛めたものではありませんでした。そのお金はどこから出ていたかというと、会社の経費からでした。
当時の企業は今ほどコンプライアンスも充実していませんでしたし、監査もゆるゆる。
何かお金が必要だったら会社の経費で落とすということが、簡単にできた時代です。
だからバブル世代は、会社のお金=自分のお金と勘違いして、他人のお金にたかる気持ちが強いのです。
つまりお金に汚いのです。
またバブル世代の女性といえば、男性におごってもらうのが当たり前という時代でした。
さらにいい女とは、男にたくさんお金を使ってもらえる女性のことだという価値観が、強く根付かされた時代です。
食事代をおごってもらえないなんて、女として価値がないと言われたも同然だったのです。
バブル世代は拝金主義、お金が全ての時代です。
お金が全てならば、愛を大きさもお金で計るのが当然だと考える人も多かったのです。
わたしの勤める会社の食堂が
リフォームされることになった。
しばらく食堂が使えないので
オフィスの仕事机で
一人で食べるか、
会議室を使うか…。
そこでわたしは
「今度皆でお昼を
外に食べに行きましょうよ。」
と提案した。
たまたま
材料課のザイさんが
社用車を支給されたので
車で連れていってもらえばいいと
思ったのだ。
するとわたしの
皆で外にお昼を
食べに行こうという提案に
嬉々として一番に
乗っかったのはバブル姫
(50歳独身・バブル負の遺産)
だったのだが…。
バブル姫が
張り切って言い出したことは
「おっさんどもに
お昼をおごらせよう!」
という提案だった。
わたしはドン引きだった…。
社内でさほど親しくもない
おっさんに
お昼をたかるって
気を使うからイヤじゃ。
しかもバブル姫が
どのおっさんに
たかろうとしているのか
分からないけど
わたしが一言も
喋ったことのない
おっさんかもしれへんやん。
そんな
普段仕事で接点のない
おっさんに
たかろうなんて
あさましくて
恥ずかしい。
わたしだけでなく
その場にいた
他の女性たちも
姫の提案に
黙り込んでしまった。
誰もおっさんたちと
ごはんなんて
行きたくないってこってす。
すると何となく
空気を察したのか
バブル姫は
「あの世代(60歳前後)の
おっさん連中は
子供も独立して
お金が有り余ってるんだから
使ってあげなきゃ。」
と
いつものごとく
自分勝手で
訳の分からない
言い分を述べた。
わたしはすかさず
言い返した。
「いや、
あの世代は
老後の資金を
貯めないといけないから
そこまで余裕はないでしょ。」
で
結局
この皆で車で
ランチに行こうという
わたしの提案は
実現されることなく
食堂の改装は終わった。
聞くところによると
バブル姫は
京都営業所に
移動してきてすぐぐらいは
毎日おっさんたちと
外へランチに出かけていたらしい。
でもいつの間にか
誰とも行かなくなった。
わたしは多分
おっさんどもが
バブル姫に
おごるのがイヤになったか
バブル姫の
話がつまんないから
見捨てられたかだと思う。
またある日の
お昼休みのこと。
わたしたちの会社は
入社何年か経った
社員が結婚すると
お祝金がもらえる。
5万だか
8万だかもらえるらしい。
するとバブル姫が
結婚祝い金がほしいから
同棲して
結婚したことにして
そのお金をもらうと
言い出した。
すでに結婚して
そのお祝金を
もらった
バブル姫の後輩さんに
やいやいと確認する。
特に結婚した証明は不要で
自己申告でいいんでしょってな
感じでな。
わたしは黙って
このアホ話を聞いていた。
最近バブル姫の
言うこと為すことに
全てケチをつけてしまうので
もう黙ろう
なるべく何も言わないでおこうと
思ってるので
黙って聞いていた。
スマホでゲームしながら
聞いていた。
しかしそのお祝金
社内結婚だと
一人分しかもらえないらしい。
そこは二人分
くれればいいのにねー
という話で落ち着いた頃
バブル姫が
「ま
うちの会社の男なんかと
結婚なんてしないけどな!」
と言い放ったところで
わたしは耐えきれず
思わず噴出し
大笑いしてしまった。
いやいやいや…。
うちの会社で
バブル姫と結婚しようなんていう
勇者はいませんから!
と思うと
笑けてきたのである。
突然わたしが
大笑いしたので
皆がびっくりして
こちらを見つめる。
わたしはスマホの
画面をずっと見て
バブル姫の話を
聞かぬふりをしていたので
「なんや、ころん。
スマホで面白いことでも
あったんか?」
とバブル姫に
問われる。
わたしはそれまでの
バブル姫の
結婚もせずに
結婚祝い金をせびろうとする
あさましさに
ほとほと嫌気がさし
ストレスがたまってたんだろうね。
「さっきから
バブル姫さん、
おかしなことしか
言ってないじゃないですか!」
と
とうとう言ってしまった。
「何が面白いんや?」
と再びバブル姫に
問いかけられ
ころんはもう
とまらなくなった。
そもそもね
結婚というのはね
二人ではなく
一対のものとなることで
社会的に成長と
みなされるわけですよ、
とわたしが言うと
バブル姫が
「えらい高尚な話に
なってきたな。」
と口を挟んだ。
わたしは続ける。
結婚というのは
社会的に成長すること。
その成長のお祝として
お金をもらえるのに
結婚もしてないのに
ウソついてお祝金もらうとか
おかしいでしょ。
するとバブル姫は
「同棲でも
成長できるかも
しれへんやん。」
と言った。
いやいやいや…。
そりゃ同棲でも
人間的成長はできるかもしれない。
しかしそれは
社会的な成長と
呼べるものだろうか。
一生この人と添い遂げるという
覚悟をして
籍を入れて儀式を行う。
覚悟だ!
その覚悟が
結婚という名の成長の証。
覚悟もない同棲という成長に
なぜ会社がわざわざ
お祝金など出さねばならぬ?
ジョルジオ・ジョバーナも
言ってるではないか。
大切なのは
覚悟だと!
と、そこまでは
言えませんでした…。
それからバブル姫は
結婚お祝金は
会社のお金だから
誰かが損するわけじゃないので
もらってもいいと言い切っていた。
さらに介護給付金も
あるはずだから
もらえるものは
もらわなきゃと
あれこれ頭を巡らせていた。
わたしも
それ以上は何も言わなかった。
しかし!
そのときは
思いつかなかったが
わたしが正しく
言うべきだったことは
以下だ!!
会社のお金だから
もらっていいというのは
間違いですよ!
会社のお金は
皆が頑張って働いて得た
利益です!
だから社員皆のお金です!
その皆で頑張って
上げた利益を
嘘ついて
盗みとろうなんて
詐欺と一緒ですよ!
毎日顔を合わせて
協力している同僚への
裏切りですよ!
この泥棒乞食が
恥を知れ!!
って今度
会社のお金を
かすめとるようなことを
言い出したら
絶対言ってやる!
ああ、言ってやるさ!
だってここまで言われないと
バブル姫は分からないからね。
この泥棒乞食!
どろぼうこじき
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