全く仕事をしないくせに、自分はできる女だと勘違いがすごいバブル姫。
もちろん京都営業所一番の嫌われ者。
嫌われて一人ぼっちのバブル姫は、他人を取り込み味方につけたいという執念がすごい。
新人二人にそっぽを向かれたことは、以下のシリーズに書いた。
バブル世代は体育会系の年功序列 先輩ズラして新人をいびるバブル姫
そしてわたしも姫の話があまりにつまらないので、直接否定することもしばしば。
つまりバブル姫の話を聞いてくれる人が、ほとんどいなくなってしまったというわけである。
そんなとき、ある営業所が閉鎖されたため、移動してきた50代の独身女性がいる。
閉鎖されたことが転勤理由なので、とじ子さんとでも名前をつけようか。
目鼻立ちははっきりしていて、わたしはバブル姫よりは美人だと思う。
高卒で入社したため、バブル姫より社歴も年齢も2年ほど上なのかなぁ。
二人はもともと顔見知りでもあり年齢も近いことから、当初は仲良くしているように見えた。
とじ子さんが来てから、話を聞いてくれる人ができたため、バブル姫は再び勘違いダンスを生き生きと踊りだすようになったのである。
わたしもとじ子さんのおかげで、バブル姫のつまらない話を聞かなくてすむのでおおいに助かっているというわけである。
これは、大阪支店長婦人のローラさんに聞いた話。
ご主人様の大阪支店長が、バブル姫が大阪支店の新入社員にちょっかいをかけてくるので激おこプンプン丸だと言っていた。
つまりローラさんのご主人様は、うちの新人に手を出すな!って怒ってるんだって。
その話を聞いたちょうど翌日のお昼休みのことです。
たまたまその日、別営業所の新入社員が研修に京都に来てた。
だからお昼休みに新入社員の話になった。
バブル姫は、大阪支社のどこぞの部署の新人の男の子がかっこいいやらどうやらと喋り始めた。
するととじ子さんが、
「よくそんなに新入社員情報を知ってるね。」と聞いたのでバブル姫は、
「月に一回は会議で大阪支社に行くからな。
そのとき、大阪支社をウロウロすんねん。」
と答えた。
とじ子さんもちょっとびっくりした様子で
「え?ウロウロするんや。」
と突っ込んだのに、バブル姫は自信満々に
「うん。ウロウロすんねん。
大阪支社は、ワタシの古巣やからな。」
と答えたものだから、わたしはおかしくておかしくて仕方なく、笑いがとまらなくなった。
だって、バブル姫は仕事があまりにできないために、大阪支社を追い出されたんだよ。
そこを古巣とまるで自分の故郷のように語り、我が物顔でウロウロしながら、めぼしい新入社員を物色する。
恥ずかしいことこの上なし!
そりゃー、ローラさんのご主人様も怒るはずだわさ。
あまりにおかしいのでわたしの笑いはとどまることなく、必死で笑いをこらえているわたしの方が面白かったと、後からりょうさんに言われた。
さらによく分からないバブル姫の自慢話は続く。
何でも女の子の新入社員で、バブル姫と同じ名字のとても可愛い女の子がいるんだって。
自分と同じ名前で、可愛いコだから嬉しいとバブル姫が得意げに語るので、わたしはこんな意地悪を言ってやった。
「でも自分と同じ名字できれいな子だと、きれいな方のバブルさん、ブサイクな方のバブルさんとか、若い方のバブルさん、年よりの方のバブルさん、って言われるからイヤじゃないですか。」
するとバブル姫が言うことには、若い方のバブルさんのお母様は40代。
もう娘ぐらいの年だから、若い方のバブルさん、年がいってる方のバブルさんって言われても気にならないそうです。
わたしはバブル姫は、いまだ二十代のコと張り合っていると思いこんでいたので、意外な答えでした。
世界中で自分が一番美しいと思っているバブル姫。
さすがに娘ぐらいの女性の美しさ若々しさには勝てないと悟り、達観できるよう成長を遂げたのでしょうか。
それから、バブル姫と、その若い方のバブル姫のツーショット写真を見せてくれた。
そのときの写真があまりに印象的だったので、必死に目に焼き付けるべくすぐに似顔絵を描いた。
どこかのお食事屋さんらしい。
まず驚いたことは、月に一度程度しか合わない新入社員を、ランチに連れ出していることである。
あまりに仕事ができないため、大阪支社を追い出された、嫌われ者ばーさんと、ランチに行かなければならないなんて、若い方のバブルちゃん、かわいそう…。
どんなバツゲーム?
さらに仲良しアピールの写真まで撮られちゃって…。
リベンジポルノより怖いんじゃない?
逆にバブル姫の立場に身を置いて考えてみよう。
いくら古巣とはいえ、月に一度訪れる程度のオフィスにいる娘ぐらいの新入社員を、ランチに誘いだせるか。
まともな神経を持ち合わせた社会人ならできるはずもない。
まともな神経を持ち合わせていないのがバブル姫。
そしてバブル姫が、かわいいかわいいと絶賛していた若い方のバブルさんだが、そこまで言うほどかわいくもなかった。
いや、確かに若くてかわいいし、何の前情報もなければ、決しておせじでもなく「かわいいお嬢さんね。」と言える。
しかしバブル姫があまりにハードルを上げたため、特別突き抜けてかわいいのかと思ったら、普通にかわいい程度。
わたしの会社にも二人新卒の女性社員が入ってきたが、だいたい同じぐらいのかわいさ。
その二人も営業職で入社したから、一般的には美人な方ですが、特別突き抜けてかわいいというわけでもない。
何が言いたいかというと、バブル姫は、自分と同じ名字だから、自分と同じぐらい突き抜けてかわいいのよ、という謎の自慢がしたかったということです。
名字が同じというだけで、まるで自分の分身ように自慢し、それが自分の自慢になるという、謎の姫のマイルール。
失笑を禁じえない。
そしてそのダブルバブルのツーショット写真がかなり痛々しかった。
制服姿の若い方のバブルさんは、確かに若くてかわいくてキラキラしている。
しかし隣で私服で写っているバブル姫は、年老い痩せこけて貧相に見えた。
そしてその老いに必死に逆らおうと、年齢に似合わない濃いメイクがまた痛々しさを誘う。
また、大きく胸があき、たにまがむき出しのサマードレスを着ている。
とても職場で行われる会議に出席する身だしなみではない。
これではまるで水商売女!
まぶしいほどにフレッシュで清楚な女の魅力は、必死で女にしがみつく老女の痛々しさをより一層際立たせていたのである。
わたしは、
「本当に親娘みたいですね…。」と感想を述べるのが精いっぱいであった。
バブル姫は、そーや、親子みたいやろ、となぜか嬉しそうだった。
すかさず、とじ子さんが言う。
「これで、ひーちゃんの後を継ぐ人ができたね!」
バブル姫も、
「そうや、ワタシの後釜や。」と満足そうに言った。
悪いなー。
悪い悪い悪い悪い悪い悪い。
一番悪い。
本当に悪い女だ、とわたしは初めて気がついた。
バブル姫ではなく、とじ子さんのことだ。
とじ子さんは、わざとバブル姫をおだてて勘違いさせて、おかしな発言を引き出して楽しんでいるのだ。
その手があったか!
そういう楽しみ方があったのね。
わたしはバブル姫の勘違い自慢話にイライラして、否定ばかりしていた。
しかし否定するのではなく、持ち上げて、勘違いダンスを踊るのを楽しむ、それがバブル姫の正しいトリセツだったのである。
お世辞や社交辞令が分からないため、発達障害疑惑があるバブル姫。
おそらく今までもわざとバブル姫を持ち上げて、踊るのを楽しんできた悪いヤツらがたくさんいたのだろうな。
でなきゃ、なかなかここまで勘違いが増長できるものではない。
その証拠にとじ子さんは、
「今度の社内女子会で、バブル姫を知っているコたちに、報告しないといけないねん!」と熱心にバブル姫から、さまざまな情報を聞き出そうとしていた。
本当に、いけないヒト!
そして若い方のバブルさん、こんな勘違いおばさんに目をつけられて可哀想…。
バブル姫の後を継ぐって…
それって嫌われて嫌われて大阪支社を追い出されるってことだよね。
仕事はできないのに一番いばっている、給料泥棒乞食になれってことだよね。
50年間男が切れたことがないのに、誰からも愛されず、結婚もできないってことだよね!
京大ノーベル賞科学者の、山中教授の精子がほしい~と絶叫しろってことだよね!
若い方のバブルちゃん、前世でどんな悪いことをして、そのような忌み嫌われる人生を送らなければならないというのか。
彼女はまだたった22歳。
若くて美しく、成功した将来が期待される新人だというのに…。
バブル姫から全力で逃げて~、逃げて逃げて逃げて~。
バブル姫をストーカーで訴えろ!
大阪支社のローラさんのご主人さま。
どうか、若い方のバブルちゃんを、年老いたバブル姫から守ってあげて!!
女は、キラキラと輝く美しく新しい命を生みだしたとき、若さへの敗北を知るのだという。
赤子の若さには勝てないとあきらめ、美しいという役割を子供に譲ることができるのだ。
そしてその小さくて美しい命を守る方にまわるのだ。
たとえ老いて美しさを失っても、美しい赤子を生みだしたことが、何よりの満足となり人生はより深く、喜びに満ちたものとなる。
もう子供を産めないバブル姫は、ただ名字が同じというだけで、若くて美しい女をまるで自分が生み出したものかのように勘違いをしている。
そしてその女に自分を投影させて、プライドを守ろうとしているのかもしれない。
要はハタ迷惑な勘違いおばちゃんってことです。