ヒトラーのリストを作り、従わないものはリストに加えて次々退職に追い込むヒトラー所長。
ある時期、また新しい女性営業社員が転勤してくることになった。
50代初めぐらいの年齢の独身女性だったと記憶している。
社歴は長く専門的な資格はたくさん持っているという。
どんな人かなという話になったとき、ヒトラー所長はつぶやいた。
「俺のもとに寄こすってことは、辞めさせたいヤツなのかもしれないな…。」
それって、ヒトラー所長は使えない不用社員の回収屋さんってこと?
結果的にわたしが知っているだけで、ヒトラー所長は、赴任して1年も経たないうちに、6人ぐらい辞めさせている。
あるとき、わたしはある女性にふと言ってみた。
「自分に従わないから辞めさせてヒトラー帝国を作ったところで、どうせ所長クラスは三年で移動やん。
その移動先でもまた、一から気に入らない人を辞めさせ続けるんかな。」
すると、その割と聡明と有名であり、国立大学卒業の才媛さんは、こう答えた。
「上に上がっていく人やから、いいんちゃう?」
つまり才媛さんが言うには、40代ですでに所長ってことは、いずれはさらに上に上がって、人事権を握れるぐらいの立場になるから、自分の王国を作ってもいいって意味だと思う。
この才媛さん、今後あんまり登場しないと思うけど、一応名前を「才媛さん」ってつけておくね。
さて、新しく転勤してきた営業女性に話を戻そう。
ヒトラー所長の予言通り、こちらの想像以上に仕事のできない女性だった。
というより根本的に営業に向いておらず、お客様の前に出してはいけない人だった。
わたしはこの女性は発達障害だったのではないかと疑っている。
まず、聞かれたことにきちんと答えられず、自分の言い分のみ一方的に話すタイプであった。すでに営業不向きという特性であるどころか、これではまともな人間関係すら築けない。
だからヒトラー所長に基本的な営業トークから指導されていた。
それ、入社して一年目の新入社員に教える内容ですよね。
結局半年間で2件しか契約がとれなかったという体たらく。
しかもそのうち1件は、お情けで誰かに恵んでもらったらしい。
ただし、良い顧客を与えてもらえなかったという気の毒な一面もある。
ま、ほぼ売上がゼロってことで、ゼロ=れいってことで、レイカさんと名付けます。
誰が採用したんだー、ってヒトラーがよく怒っていた。
なぜこんな人を採用したのかという話ですが、一件穏やかな人当たりでまぁるい親しみやすいフォルム。
そして割と難関な専門的な資格を複数持っているから、ここまでできないとは思わなかったんじゃないかな。
あるとき、レイカさんの直属の上司が、アイツはアホやとグチグチ不満をこぼしていた。
そこでわたしは
「でもレイカさん、難しい資格、たくさん持っていらっしゃいますよね。
アホでは取得できないような資格ですよね。」
と聞いてみると、その上司は
「多分、資格を取った後に、ぶっ壊れたんだろう。」と答えた。
この上司、性悪どもが巣くうP企業の中では、割と優しくて人当たりもよく、わたしのお気に入りの男性だった。
なので、オキニ店長と名付けます。
優しいと思っていたオキニ店長が、レイカさんには聞くに堪えないような怒り方をするので、わたしは衝撃だった。
オキニ店長って、怒鳴ったり、暴言を吐いたりする人だったんだ~ってね。
温厚な人を怒りでいっぱいにするぐらい、レイカさんはとんちんかんなのである。
しかもけっこう自分の言い分も激しく言うというか、言い訳も多かった。
二人でやいのやいのとやりあっていた。
もうわたしは
「オキニ店長の人格が変わっちゃうから、レイカさん、言うこと聞いて~。」
と泣きながらレイカさんに頼もうかと思ったぐらい。
自分のお気に入りの素敵なはずの男性が、醜悪な暴言を吐く姿を見るのは耐えがたいですね。
しかもレイカさんって、自分は仕事ができると思っているらしいよ。
自分の成績が上がらないのは、周りのせいだと思ってるんだって。
出来ない人って、自分ができると思い込んでいる人が多い。
自分はできないんだと思うとさ、人はできるように努力するやん。
でも最初からできると思ってる人は、特に努力の必要性を感じない。
だからそこで思考停止してしまって、成長ができないんだろうね。
レイカさんとかバブル姫とかね。
ここでは少し、レイカさんのとんちんかんエピソードをいくつか紹介しよう。
まず時速60キロで高速道路を走り抜ける。
ノロ過ぎ!
あるとき、ヒトラー所長が高速道路で車を運転していると、前を走っている車が、ずいぶん遅いので不信に思ったという。
その遅い流れを作っているのが、なんと!レイカさんだった。
「皆の迷惑になるから、高速を使うな!裏道を走れ!」
ってレイカさんは怒られていた。
またあるときは、亀岡市かどっかの市役所に用事があって出かけて行ったという。
すると車を停車する場所がなかった。
だから用事をすませず、そのまま帰ってきた…。
もうこれだけで、レイカさんがいかに使えない人材か分かるよね。
もう…、何も言えなねぇ…。
そして極め付けの珍行動は…。
あるとき、レイカさんはお客様と約束ができて、わざわざ訪問することになったという。
しかし約束の時間になっても、レイカさんが一向に現れないと、お客様からお電話があった。
そのお客様が言うには、怒っているわけではなく、途中で事故にでもあっているかもしれないので念のための確認の連絡をしてくれたのだった。
その電話を受けた事務員さんが、レイカさんに連絡する。
するとレイカさんは、ちゃんと訪問して、息子さんとお話しましたという返事だった。
で、再度事務員さんが、お客様に電話をしてその旨説明すると
「うちに息子はいませんけど。」
というお返事だったらしい。
………。
………。
レイカさん、一体誰の家に行って、誰と商談してたんだ!!
謎だ!
謎なんだ!
このようにレイカさんの珍行動を数えあげれば、キリがない。
ほかにもいろいろやらかしていたんだと思うが、もうわたしの方も記憶があいまい。
レイカさん、この営業所に来てから一切仕事してないよね。
一体何しに会社に来てるんだか。
当然のごとく、ヒトラー所長の抹殺リストにくわえられるわけである。
ほぼ毎日のように、皆の前でさらしものにされ、ネチネチ怒鳴られていた。
しかしレイカさんが言うには、以前の営業所よりも、ここの営業所の人の方が優しいんだってさ。
何が悪いかをきちんと言ってくれるからだって。
それ、以前の営業所で冷たく突き放され過ぎて、普通に接してるだけでも、優しいと感じてるだけじゃないの。
以前の営業所では、レイカさんのためにいつも一人事務員さんがつきっきりになっていたらしい。
何をしでかすか分からないからだろうね。
だからヒトラー所長の、辞めさせるための怒鳴り付け見せしめ公開処刑も、レイカさんにはあんまり響いていないみたい。
そこでヒトラーが続いて行った攻撃は、次々とレイカさんの仕事道具を取り上げることだった。
売上を取れない人間に、社内設備を使う権利はないと言って、ノートパソコンをまず取り上げたのかな。
それから社用車。
車を使う資格がないといって取り上げられた。
レイカさんは、車でしか行けないような地域にお客様を持っているわけ。
これでは、訪問ができないじゃんね。
それからさらにヒトラー所長は、メンテナンス課の修理担当者を使う資格がないと言って、人員を使うことも禁じた。
最後には携帯電話まで取り上げそうな勢いであった。
これでどうやって営業活動をしろと言うのだろう。
毎日、ヒトラー所長は日課のように朝礼で、レイカさんが数字をとれないから、皆の足を引っ張って赤字にしていると、ネチネチ責め立てた。
そしてとうとう!
営業所を赤字にしているなら、皆の迷惑なのでいる必要がない。
来月1500万円売上ないなら、退職すると会議の場で約束させたのである。
半年で、2件、恐らく数万円の売り上げしかなかった人が、たったの一か月で1500万円もとれるわけないやんね。
これはレイカさんの能力を越えた仕事を強要したということで、完全無欠のパワーハラスメントである。
そこでわたしは、昼休みにつぶやいた。
「もしわたしが、レイカさんみたいな扱いを受けたら、パワーハラスメントでヒトラー所長を訴えるわ。
だって絶対に勝てるもん!!」
すると韓国アイドルビックバン好きの、カンコさんが言った。
「そこで訴えようという知恵のある人は、あそこまで失態を重ねることはないんじゃないですか?」
ま、そらそーかもしれないね。
カンコさんは、毎日毎日レイカさんがヒトラー所長に怒鳴られているのを聞いていると気分が悪いから、辞めてもらって一向にかまわないんだってさ。
わたしもレイカさんが退職したところで痛くもかゆくもないわな。
ほとんど業務で関わることもないんだから。
そしてレイカさんは、その後、1円の売り上げを上げることもできなかった。
そしてヒトラーとの約束通り、無理やり退職させられて去っていった。
特に送別会もなく、誰からも見送られることもなく。
レイカさんとは何だったのか。
ころんのただのブログネタだわな。
レイカさんは、ある女性営業さんに
「ワタシがいなくなったら、今度はアナタがターゲットにされますよ!」
と言い残して去っていったという。
その女性営業さんは細身できれいな人で、いかにも仕事ができそうな見た目だった。
けど精神的にもろくいつも泣いていた。
儚げな人なので、ハカナさんと名前をつけます。
実はそのハカナさん、ヒトラー所長のお気に入りだったのね。
そんなことも分からず、その女性もレイカさんと同じ運命をたどると、捨てセリフを吐いていったレイカさん。
どこまでもトンチンカンだのー。
しかしレイカさんの予言通り、その営業女性は、やはり同じ運命をたどることになる。
その話はいずれまた。