結婚相談所のお見合いで出会った殿方セーブタさんは、6回目のデートで「そろそろ結婚に向けた話がしたい。」と言ってきた。
わたしは、まだまだお前と結婚する気になんてなりゃしませんよ、もっとわたしに好かれるように必死に頑張れ!と他人事のように受け流していました。
しかしお互いの理想の結婚生活を語り合うことで、気持ちが盛り上がったり、逆に価値観が違うことが分かって見切りをつけるきっかけになったりするかもしれない。
何らかの前に進むヒントのようなものが探れるかと、結婚に向けた話をしましたよ。
まずは結婚式や披露宴の話だが、長男であるセーブタは「最低限でやりたい。」と言った。
最低限とは、結婚式や披露宴にさほどお金はかけたくはないけど、親戚職場の同僚友人などを招いて、それなりの規模でやりたいって意味だと思う。
これに難色を示すのが、あらゆることに文句をつけるのが得意なプチ初老ころんである。
わたしは、最低限の結婚式なんてまっぴらごめん。
それなりに名の知れたホテルで結婚式と披露宴をやりたいと申し出た。
確かグランヴィアとかリッツカールトンとかウェステンとかでやりたいって言ったのかなぁ。
記憶があいまい。
だってさー、アラフィフとアラフォーの初老カップルが、やっすい結婚式場で披露宴なんて、恥ずかしいじゃん。
若ければ安い結婚式場でも、初々しい新郎新婦が何よりの華になるだろうけどさー。
初老のくたびれたカップルが、ケチケチ安い結婚式場で披露宴なんて、情けなくて軽く死ねる。
だからわたしは絶対に名の知れたホテルでそれなりにゴージャスな結婚式でないとイヤだ。
ホテルですると招待される側もとっても楽だ。
それが無理なら海外で二人でこっそり結婚式を挙げたいと伝えた。
するとセーブタは、「最低限で!」と繰り返すのである。
「最低限とおっしゃるなら、二人だけか家族だけ招待して、海外ウェディングでいいじゃないですか。」
とわたしは伝えた。
するとやっぱりセーブタは、職場の人やら友人やら招待して、きちんとお披露目したいのだと言う。
で、わたしが
「40歳のウェディングドレスなんて、罰ゲームやし…。
誰も見たくないでしょう。」
と、大々的に招待客をつのる披露宴に文句をつけた。
この40歳のウェディングドレスは罰ゲームというのは、二つの意味がある。
一つは、見る側にとっても罰ゲーム。
もう一つは、着せられる方にとっても罰ゲーム。
要は誰も得しないってこと。
ウィンウィンの反対の意味だわな。
この大々的に結婚式を行いたいというセーブタをたしなめる意味で言った
「40歳のウェディングドレスなんて誰も見たくないでしょう。」というわたしの疑問に
セーブタは、ドヤ顔でこう答えた。
「46歳の羽織袴姿、見たいですか?」
………。
………。
ダメだ、コイツ…。
何も言えねえ…。
わたしは
無
になりました。
無です。
返す言葉が見つからないのです。
この饒舌なわたしが、です。
では、わたしがなぜ無になったのか、セーブタと同じぐらい教養のないお前らに、ていねいに説明するとしよう。
まずウェディングドレスです。
純白のウェディングドレスとは、もともとヨーロッパでは、穢れを知らない処女のための衣装なんです。
よって通常は10代の少女のための衣装。
つまり本来は10代のための衣装を、10代の母親ぐらいの年齢である40歳が着るのはキツいと、わたしは申しておるのです。
日本で言えば、未婚の女性が着る振袖に似た解釈ができますね。
しかし振袖はあくまで未婚の女性の正装、だから40歳でも未婚ならば着てはいけないってことはない。
でもまあやっぱり30歳越えて、未婚というものはいかがなものかということで、振袖は若い人のための正装という印象が強いですね。
代わってウェディングドレスは、基本、結婚式という場で、処女である花嫁一人にしか使えない衣装です。
そのような衣装を、売れ残った初老の女が着てお披露目するのは、片腹痛いわという話をわたしはしておるのです。
年齢にそぐわない衣装だから恥ずかしいと申しておるのです。
それにたいしてセーブタは、俺って気のきいた返し、上手いだろ、40歳の花嫁の気持ちを和らげるぜ!!ドヤ!ドヤー!!という顔で
「アラフィフの羽織袴姿、見たいですか?」
と言った。
………。
セーブタよ。
お前は本当にバカだなぁ。
バカバカバカバカバカバカ!!
カバ!!
羽織袴は、全ての日本男子の第一正装やないけ!!
年齢と全く関係ないわ!
七五三で着ても、結婚式で着ても、それが晴れがましい席であるならば、いつ何時、どんな年齢で着用しても、ちぐはぐじゃないわ!
アラフィフで着ても、一切そぐわない衣装ではありゃしません。
年齢と合わないから見るに堪えられないという衣装ではありません。
だって昨年のノーベル医学生理学賞の授賞式で、本庶佑(ほんじょたすく)教授、着ておったやんねー。
あの人、70歳を越えてるやんねー。
遠い異国で、素晴らしい功績を残した日本人が、世界で最も権威ある賞を、第一礼装である民族衣装の羽織袴で受賞する。
あの羽織袴姿を見て、日本人として誇らしい気持ちにならない人などいるのだろうか。
見たいよね!
羽織袴でノーベル賞を受賞する日本人、これからもたくさん見たいよね!
50歳だろうと80歳だろうと100歳だろうとさー。
でも仮に、女性がノーベル賞をとってウェディングドレスを着ていたらおかしいよね!
セーブタの理論で言うと、70歳越えて羽織袴をまとう偉大な研究者を否定することになるな!
お前は本当にバカだなぁ。
バカバカバカバカバカバカ!!
カバ!!
結婚式でしか着用しないウェディングドレスと、羽織袴を同列に語ることはおかしい!
どんな教育を受けて、こんなバカになったのか。
親の顔が見たいで、ってわたしの義両親になるかもしれない親か。
こんなバカ家族と、家族になるなんてイヤじゃ!
もう泣いてやる!
ウェエエエェェエン!!
とまあ、ますますセーブタから心が離れてゆくころんなのであった。
セーブタ滑り過ぎ!
いくらハゲてるからって、いくら滑りやすい頭だからって、そこまで滑ることないでしょう。
ちなみにこの話を、バブル姫にしたんやわ。
そしたらバブル姫は、映画「最高の人生の見つけ方」で吉永さゆりがウェディングドレスを着ていたけど、素敵だったと言った。
だから似合えばいくつになっても着てもいいってさ。
いやいやいやいや…。
わたしは40歳がウェディングドレスを着るのがおかしいと言いたいのではなく、ウェディングドレスと羽織袴を一緒にしたセーブタの頭の悪さがイヤだと言っているのである。
それを、気のきいたジョークの言える俺ってドヤ顔で語ったのが、マヌケ過ぎると言っているのである。
こんな男どう思う?という話をしてるのである。
そこでセーブタがバブル姫のように、
「40歳のウェディングドレスを見たくないってことはない。
どんな女性でもウェディングドレスは似合うものだ。」
ぐらいのことを言ってくれれば、そっか、結婚式やろうか、ぐらいの気持ちにもわたしはなるかもしれない。
しかしウェディングドレスの比較として、羽織袴を持ち出したズレ具合にわたしは不満を感じているのである。
で再度バブル姫に、問題は年齢関係なくドレスが似合えばいいとうことではない、ウェディングドレスと羽織袴を同等に語ったことにたいして違和感を覚えたのだ、と説明するやん。
そしたらバブル姫は、
「それはもう分かった。似合えばいいやん。」の一点張り!
「バブル姫さんもセーブタと同じレベルの頭ってことですね!」って言ってやった。
話が通じない!
セーブタもバブル姫も話が噛み合わないのです!!
教養のないヤツと喋ってるとイライラする。
IQ(知能指数)が20違うと、話が噛み合わなくて会話がつらいのだそうです。
セーブタもバブル姫も、きっとIQが相当低いんだろうな。
ん?
実はわたしが二人よりも、IQが低いのだったりして。
続く