刑事コロンボ第13話、「ロンドンの傘/ DAGGER OF THE MIND」のあらすじとネタバレ解説の後半です。
ロンドン警視庁の視察に訪れたコロンボは、案内人ダーク部長の遠い親戚サー・ロジャーの事故死に疑問を持ちます。
コロンボの推理でサー・ロジャーは殺害されたことが分かり、殺人犯は役者夫婦であるとの目ぼしもつきました。
あと一つ、コロンボが必要とするのは、決定的な証拠です。
その証拠となるのがタイトル「ロンドンの傘」の通り、サー・ロジャーの傘なんですね。
後半のかなめである、コロンボと殺人犯夫婦の傘の奪い合いが始まります。
サー・ロジャーの傘の争奪編
楽屋番フェンウィックの傘
舞台マクベスの初日公演が大好評で幕を閉じた後、リリアン・スタンホープとニコラス・フレイムの役者夫婦は、愛車モーガンで帰宅しようとします。
そのときたまたま居合わせた楽屋番ジョー・フェンウィックが、夫婦のために車のドアを開けてくれます。
フェンウィックは、二人のマクベスの舞台を大絶賛です。
ふとニコラスは、フェンウィックがサー・ロジャーの傘を手にしていることに気がつきます。
サー・ロジャーの傘は、レディ・アスターの署名入りで、柄の上に掘り込みがある、この世で二つとない傘なのですって。
ちなみにレディ・アスターとは、おそらくナンシー・アスターのことで、イギリスのアスター財閥に嫁いで、女性で初の国会議員になった人物を指しているのかと思われます。
ニコラスがリリアンに確かめると、彼女はサー・ロジャー死亡後、フェンウィックが楽屋に来たことを思い出すのです。
そしてフェンウィックが自分の傘を置いて、サー・ロジャーの傘を持ち帰ったことに気がつきます。
ニコライはフェンウィック行きつけの酒場に出向き、何とかサー・ロジャーの傘を取り戻しました。
さて、イギリスは階級社会で、上流階級と下流階級では行くお店もぱっくり分かれていると聞きます。
当然フェンウィックは下流階級でそういう酒場に行くのですが、役者は上流階級に当たるのでしょうか。
ニコライがわざわざこんな酒場に出向いてくれたという描写だったので、気になりました。
フェンウィックに聞き込みをするコロンボ
酒場で傘を失ってしまったフェンウィックは、不機嫌な様子で雨の中を歩いています。
そこへフェンウィックを探していたコロンボが、話しかけます。
コロンボは昨日サー・ロジャーが、劇場に現れなかったかをしつこく聞き出そうとします。
しかしフェンウィックによると、サー・ロジャーは20年間舞台前日の仕上げ稽古に顔を出したことは一度もないそうです。
雨に打たれる中、フェンウィックは酒場で傘を盗られたことをコロンボに愚痴ります。
そしてその酒場にニコライがやってきて、皆にお酒をふるまってくれたことを自慢するのです。
フェンウィックの傘が盗まれた場末の酒場で、本来は来るはずのない身分のニコライがやってきてお酒をふるまってくれたこと。
ニコライが訪れた酒場で、フェンウィックの傘が盗まれてしまったこと。
コロンボの中の点と点が線になりました。
コロンボはフェンウィックの盗まれた傘が、サー・ロジャーの傘である可能性を見出すのです。
サー・ロジャー邸に傘を返すはずが…。
リリアンとニコライは、サー・ロジャー邸へ訪れます。
ダーク部長の指示で母屋に泊まって番をするように言われていた、執事タナーが応対します。
ニコライがアービングのマクベスの本が、サンルームにあるかもしれないとタナーを引き付けます。
その間に、リリアンがコートに隠したロジャーの傘を、衣装室へ戻そうとするのですが…
衣装室はもぬけの殻でした。
タナーによると、サー・ロジャーの愛用品であるコートや帽子、傘はろう人形館に運ばれ、展示されることになったのです。
ニコライとリリアンが演じたマクベス夫妻のろう人形も展示されます。
サー・ロジャーの愛用品を持ち出す対応をしたのは、タナーではなく1階つきのメイドだそうです。
ニコライとリリアンは、ろう人形館へ向かうのです。
ロジャー邸から車を走らせた夫婦は、コロンボの乗ったタクシーとぶつかりそうになります。
サー・ロジャー邸を訪ねたコロンボは、タナーにロジャーの傘について聞きこみをします。
ろう人形館に展示される傘
リリアンとニコライ夫婦は、ろう人形館の倉庫窓から忍び込み、サー・ロジャーの荷物を探します。
ニコライは一度ろう人形館に来たことがあるようで、手慣れたものです。
サー・ロジャーのろう人形の首を見つけてしまって怯えるリリアン。
カタコト人形が揺れるのが、ロジャーの魂が宿ったみたいで不気味ですね。
続いてコロンボとダーク部長や執事タナーが、正式な手続きを踏んで、玄関からろう人形館に入ります。
あの事故を演出した人物はお屋敷の中やサー・ロジャーの習慣をよく知ってるんだ。
と推理を口にするコロンボ。
ろう人形館は、サー・ロジャー殺人事件がセンセーショナルなうちに、展示を急ぐようです。
ろう人形館の従業員のジョーンズが案内してくれます。
コロンボは、ロジャーの傘と間違えられた楽屋番フェンウィックの傘を探します。
しかし傘はすでにニコライとリリアンにすりかえられ、まごうことなきロジャーの傘があるだけでした。
念のためコロンボは、執事タナーに何度も確認します。
執事タナーもダーク部長も、間違いなくサー・ロジャーの傘だと断言するのです。
コロンボの脳裏に、事前に誰かがすりかえた可能性がよぎります。
楽屋番フェンウィックの傘が盗まれたのは、今夜のほんのさっきのこと。
コロンボは、その後のわずかな時間に執事のタナーに傘について尋ねた人物はいないかと尋ねます。
「一人もございません。」と答えるタナー。
コロンボはタクシーでロジャー邸へ向かうときに、ぶつかりそうになったイギリス製の車がニコライ・フレイムではないかと、さらにタナーに問いかけます。
タナーは、イギリス製の車はいくらでもあるし、危険なドライバーもどこにでもいると答えます。
???
タナーは、コロンボが訪問する前に、ニコライとリリアンが訪れたことを、すっとぼけていますよ。
もしや、じーさん、すでに痴呆が始まっているのか???
そしてコロンボは唯一つかみかけた証拠を、逃してしまったというわけです。
執事タナーの策略
イギリスでの女王陛下の使われ方
翌朝、リリアン・スタンホープとニコラス・フレイム夫妻は、自分たちの舞台マクベスを絶賛するいくつもの新聞記事を読みあって、ベッドに入ったままご満悦。
リリアンは、サラ・ベルナール以来の大女優だなんて賞賛の嵐ですね。
サラ・ベルナールは、パリが繁栄した華やかな時代ベル・エポックを象徴する高名な舞台女優なのですって。
写真を見たけど、そこまできれいな人とは思いませんでしたが、ミシャというわたしの好きな画家を見出した、芸術にも誉れ高い大女優だったそうです。
マクベスの舞台成功にニコラスはおどけて、「成功です。女王陛下。」なんて軽口をたたいています。
日本人であるわたしにはよく分かりませんが、誉め言葉やへりくだったりするときに、相手を「女王陛下」と冗談で呼ぶのは、イギリスでは普通のことなのでしょうか。
日本では相手を立てるときに、「天皇陛下」に例えたりなんてまずしないですよね。
「殿」や「王さま」や「姫」だったら使いますけどね。
それほどイギリスでは女王が身近な存在なのか、そもそも女王の数が多いから、「女性の優れた人」というたとえに使いやすいのか…。
一方で日本で「天皇」といえば、日本にしか存在しない唯一無二の存在だから実物が浮かび過ぎて、立派な人として例えにくいのか、ふと疑問がわきました。
執事タナーの訪問
さて、舞台成功の喜びにひたる夫婦に、招かれざる来訪者がやってきます。
朝っぱらという非常識な時間に、執事タナーが焼きたてのクロワッサンを持って、ニコライとリリアン夫婦のアパートを訪ねたのです。
やっとサー・ロジャーにつながる傘を返して、証拠隠滅できたのに、関係者のタナーの突然の来訪に戸惑う夫婦。
雇い主であるサー・ロジャーを失って、新しい勤め先を探しているというタナーに、リリアンが勘づきました。
サー・ロジャーとリリアンのデートのために、ニコライが切符を買ったことを告げ口したのは、タナーだったことを。
「そらやっぱりダドレーさんじゃなかっただろ。」とどこまでも金髪美女のミス・ダドレーをかばうニコライ。
よっぽどダドレー嬢を気に入ってるんですね。
リリアンが女性の勘によりタナーの告げ口に気がついたことに対比して、この状況でどこかのんきにお気に入りの女性をかばう男性特有の下心を持つニコライの描写がおもしろいですよね。
刑事コロンボの魅力は、人物描写が細かくキャラクターがしっかり立っているところでもあります。
執事タナーは、夫婦に自分を雇うように勧めます。そして言います。
「ある傘をお探しだったことは絶対に郊外しておりませんからどうかご安心くださいますよう。
別な傘はもう川の中にでもご処分なさったことを希望しておりますです。」
希望しておりますです?
イギリス本場の執事にしては、ヘンな日本語ですね。
さあこれでタナーが、夫婦がサー・ロジャーを殺害したことに気がついて脅かしていることが分かりましたね。
しかし殺人者の使用人になるなんて、殺されるかもしれなくて怖いから口止め料だけ要求して逃亡すればいいのにね!
わたしならそうするな。
もう、タナーの死亡フラグ、立ってるように見えますね。
ロンドン観光名所ビッグ・ベン
ダーク部長とコロンボは、またもやロンドンの観光地を巡っています。
ダーク部長が
「イギリスといえば誰もがシャーロック・ホームズを思い浮かべるだろうがね。
現在のロンドン警視庁の最新捜査システムに比べればホームズなどものの数にも入らん。
我々が誇る最新の…。」
なんてウンチクを語ってるのに、コロンボは全く聞いてません。
フイッシュ・アンド・チップスってのはうまいもんですな。
なんて、イギリスの名物料理に夢中ですよ。
ちょうどビッグ・ベンの愛称で知られるウェストミンスター宮殿(英国国会議事堂)の時計台の鐘が鳴ります。
たいしたもんだ。古いのに一分しか遅れてない。
というコロンボ。
ビッグ・ベンは1859年に完成した時計台で、奏でられるチャイムの音は、日本の学校で採用されているメロディーなんですって。
正式な曲名は「ウェストミンスターの鐘」というそうで、学校のチャイム音って、ちゃんと曲名があったんですね。
初めて知りました。
いや~、コロンボって勉強になるなぁ。
執事タナーの行く末
ニコライとリリアン夫婦は、自転車を愛車モーガンにくくりつけています。
またしても悪だくみなのかニコライは
「実行してみせよう。決意の鈍らぬうちに。」
と、マクベスの芝居のセリフなのか、決心を口にしています。
ちなみにこのシーン、リリアンの吹き替え声優が変わってますね。
と一方でニコライは
「自転車なんて10年も乗っていないぞ。」
愚痴ってます。
執事タナーによると、サー・ロジャー邸に現在警察はいないそうです。
ニコライは
「全くタナーは役に立つ。実に忠実なやつだ。ハハハ。大したもんだ。」
と絶賛してますが、ヤケクソなのでしょうか。
自転車でサー・ロジャーの屋敷の一角にあるタナー邸に向かったニコライは、タナーを待ち構えています。
ニコライはタナーに、なるべく高価な本をロジャー邸から持ち出すように頼んでいます。
その本を売ったお金をタナーの給料にし、サー・ロジャーの殺害を強盗に見せかけるためです。
そしてニコライはリリアンとの計画通り、タナーの家で彼を自殺に見せかけて殺害しました。
タナーの床下から出てきた、ニコライの探していたアービングの本を始めとする高価な書物の数に、警察は、サー・ロジャー殺害犯はタナーだと断定しました。
そしてタナーは自分がしでかした大罪が恐ろしくなって、自殺したということにされてしまいました。
これで何もかもニコライとリリアンの思惑通りです。
うちのカミさん?と言ったのはオキーフ刑事
サー・ロジャー殺害が、執事タナーの仕業だったという新聞記事を読んで、がっくりとうなだれるコロンボ。
そこへオキーフ刑事が、「グッドニュースです。」とコロンボに良い知らせを持ってきます。
サー・ロジャー殺害のニュースかと喜んだコロンボですが、実は空港で行方不明になったカミさんのスーツケースが出てきたとの知らせでした。
あんなにスーツケースを探していたコロンボが、さらにがっくりとうなだれます。
何か一つでも、サー・ロジャーが殺された夜にどこにいたかが分かる手がかりや証拠があればというコロンボに、オキーフ刑事は
「まあ私も妻によく言うんですが、『刑事の家庭は楽しくはない』とね。」
とあらまあ、コロンボの定番セリフを、ぱくっちゃいましたね。
コロンボは何度も読み直した新聞から、今日の午後からろう人形が展示されるという記事を見つけます。
そして最後の賭けに出るべく、ロサンゼルスへ帰る予定をキャンセルして、ろう人形館に再び向かうのです。
コロンボ最後の大芝居
ろう人形館に集結
ニコライとリリアン夫婦もまた、自分たちの舞台マクベスの人形が飾られるろう人形館に呼び出されていました。
コロンボに呼び出されたダーク部長もすでに到着しています。
そこへ傘を購入したコロンボが駆けつけます。
雨の多いロンドンで傘を手にしたコロンボを見てリリアンは
「もうまるで生っ粋のロンドンっ子ね。」
と声をかけます。
コロンボはロスへのみやげに、突然傘がいいとひらめいたのだと言います。
ニコライが、自分たちを読んだのは誰かと、人形館のジョーンズに尋ねます。
コロンボはろう人形館のニコライとリリアンの人形にかけられたカーテンを開けるよううながします。
ニコライとリリアンが演じたマクベス夫妻の人形を見てコロンボは
こりゃすごい。
何度も言うようですが初日のお二人のあのすばらしい演技を拝見してアタシもう…。
といつものごとく、過剰な持ち上げっぷり。
ニコライがそれを遮って、再びなぜ自分たちが呼ばれたのかと問いかけます。
コロンボはさらに、夫婦の隣に飾られたサー・ロジャーの人形のカーテンをあけるように、ジョーンズに頼みます。
コロンボの嫌味-1 ショックでしょ?
サー・ロジャーのろう人形には、例の傘もきちんと飾られています。
その人形を見てコロンボはおおげさにほめたたえた後、ニコライとリリアン夫婦に
お宅は親密でいらしたから、やはりショックでしょ。
と声をかけます。
リリアンは悲しみにくれるふりをして泣き出しますが、ニコライは何とも居心地の悪そうな表情。
コロンボの嫌味-2 タナーの首つり
さらにコロンボは
ここの恐怖の部屋にはゾッとするようなのがいくらもありますよ。
と追い打ち。
悪趣味も甚だしいよ、見世物にするとは、と怒るニコライに
お気持ちは分かりますよ。
でもね殺人は人気があってどうやらお客が喜ぶらしいんですよ。
今にタナーさんの首つりもきっと出ますよ。
と、ホントにコロンボは性格が悪いというか、犯人を追い込むのが上手いというか、やっぱりニコライが怒り出します。
「世間の人間は卑しい好みを持ってる。君もその一人だよ。失礼しますよ。」
核心をつくコロンボ ホシはお宅ですよ
その場を後にしようとしたニコライとリリアンに、コロンボはとうとう言い切ります。
アタシはタナーさんが殺したとは思わないんです。
ホシはお宅ですよ。
リリアンは、あきれたフリをして笑ってごまかします。
「まあコロンボさん。あなたを好きになりかけていたのに。」
これ、女性として上手なセリフだと思いますねぇ。
わたしもイヤなこと言ってくる男性に、これからはこう言うことにします。
「せっかくあなたのことを好きになりかけてたのに。」ってね。
でもコロンボには通用しません。
コロンボ最後の王手 サー・ロジャーの傘
コロンボは、サー・ロジャーはどこか別な場所で殺されて、屋敷に移されたのだと言います。
そして殺された夜に、ロジャーがどこで誰に会っていたのかを立証できれば、辻褄が全て合うのだと。
サー・ロジャーが亡くなった夜、リリアンの楽屋に訪れたことを証明するのが、彼の傘です。
雨に濡れた傘を建物内に持ち込んだ場合、すぼめてどこか端の方へ立てかけます。
しかしたいていの人は濡れている間は巻かずに、乾くまで待ちます。
困るのは、その間に傘の中に何かが入ってしまうこと。
とんでもないものが入ります。
と言って、コロンボはたばこの灰を、壁に立てかけられた傘に入れちゃうんですね。
お行儀が悪いですね。
コロンボは、サー・ロジャーの傘に入った可能性のあるリリアンの衣装であるネックレスのパールをポケットから探します。
そこで咳払いをして、再びサー・ロジャーのろう人形を見て指差し
実によく出来てますなぁ。
ここですね。ここ。
コロンボは衣装係からもらってきたリリアンの衣装パールのネックレスの一粒を見せます。
ダーク部長は、ジョーンズにサー・ロジャーのろう人形に添えられた傘を取ってくるように言います。
見込みですがね。かなり有望な見込みだと思うんですよ。
と、サー・ロジャーの傘に、リリアンのネックレスのパールが入っていることを示唆するコロンボ。
「いいえ、違うわ。」と否定するリリアンに
なに、すぐ分かるこってす。
というコロンボ。
「こってす。」て、コロンボによく合ったふざけた言い回しですね。
ジョーンズが傘を開くと、パールが一粒、傘から転がり落ちます。
それを拾ったダーク部長が
「同じものだ。全く同じだ。」と、リリアンの衣装であることを確認するのです。
さあ、はっきりとした証拠を突き付けられた、ニコライは精神錯乱し笑い出してしまいます。
そしてマクベスのセリフ「明日…明日という日…。」を突然しゃべりだしたのです。
それを見てリリアンは
「ニックやめて。彼(コロンボ)が入れたのよ。ねえ分からないの。」
と表情はこわばっていますが、案外冷静です。
ダーク部長が傘に触れたものがいないかを、ジョーンズに確認します。
ありません、それは証言します、とジョーンズは答えます。
コロンボの声優が一言だけ変わった理由
錯乱するニコライを見てリリアンは、
「この人正気じゃないのよ。」と言った後、なぜか吹き替え声優が変わって
「普通の状態じゃないの。」と言います。
コロンボも小池朝雄に変わって銀河万丈が一言だけ
よ~く分かってます。
と言います。
なぜこの一言だけ声優が変わったかというと、おそらくですが、今は放送禁止用語となっている「きちがい」というセリフが入っていたからではないでしょうか。
「きちがい」は気が狂った人間のことで、気狂いとも書きます。
「きちがい」は1970年代前半までは、普通に使われていたのですが、大阪府精神障害者家族会連合会の抗議によって、使われなくなっていったのですって。
夫がきちがいになってしまったリリアンは、ニコライをかばうべくとうとう観念します。
「サー・ロジャーはわたしのせい。事故だったのよ。誓って言うわ。バカなことしちゃって。」
と泣きながら自白します。
でも夫ニコライは、執事タナーを殺しちゃってますしね。
そしてリリアンとニコライは、本庁に連行されるのです。
コロンボが証拠をねつ造?
ダーク部長はコロンボに、
「ついていたな。傘に入っているとどうして分かった?見込みは千に一つだった。」
と問いかけます。
何がヒントだった?と尋ねるダーク部長にコロンボは
部長もね3年か4年生のころ同級生のかわいい女の子が気になることあったでしょ?
振り向かせようてんでね…。
と言って、壊れたネックレスのパールを一粒取り出して、咳払いしてからのー、
どうも今日はのどがね…。
盛んにやったもんだ。
と言って、パールを指ではじいて飛ばしてみせました。
パールは見事に、展示されている王様のようなろう人形が手にしていた聖杯の中に入りました。
「やったな。」というダーク部長。
それが英国紳士のセリフでしょうか?
ということは、本当はサー・ロジャーの傘に、パールは入ってなかったということですよね?
コロンボが証拠をねつ造したということですよね?
これはれっきとした犯罪では???
その後、コロンボは待っていたタクシーを断って、歩いてロンドンを後にします。
おみやげの傘を手にしてロンドンを歩くコロンボは、何ともコロンボらしく、さまになっています。
コロンボの王手
今回のコロンボの王手は、殺人現場にあったであろうサー・ロジャーの傘に、もみ合いで切れたネックレスの一粒を入れて、証拠をねつ造するでした。
いやはやこんなこと、許されていいのでしょうかね…。
定番セリフ、「うちのカミさん」は6回、あともう1回オキーフ刑事のセリフにも登場したので、7回と数えましょうか。
同じく定番セリフ「もう一つだけ」はありませんでした。
今作品「ロンドンの傘」は、イギリスらしい音楽がたくさん流れ、おのぼりさんと化したコロンボの観光、そして仲の良い役者夫婦のかけあいなど、とても楽しい作品でした。
「ロンドンの傘」という邦題も、ロンドンと犯行を暴くアイテムになった傘が入っていて、上手いタイトルだと思います。
ちなみに本題である「DAGGER OF THE MIND」は、「空想の短剣」という意味で、マクベスのセリフで登場するようです。
ミステリ作品としてみると、計画的な完全犯罪ではなく、うっかり殺人である過失致死だったので、弱い印象を受けました。
綿密に練られた計画殺人ならまだしも、粗だらけのはずのうっかり殺人を立証するために、証拠をねつ造したのも、ちょっといただけませんでした。
ミステリ作品としては疑問が生じますが、コロンボのキャラクターが活かされたコメディ作品としては、成功といったところでしょうか。
まあ、わたしとしてはロンドン観光がコロンボと一緒に楽しめたので、好きな作品です。
ではまた、刑事コロンボで会いましょう。
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