作品情報
被害者: 浮気調査対象者 レノア・ケニカット/パトリシア・クローリィ(池田昌子)
被害者の夫:妻の浮気調査依頼者 アーサー・ケニカット/レイ・ミランド(横森久)
殺害の動機: 弱みを握って脅迫したら逆襲され、うっかり殴る
演出:バーナード・コワルスキー
脚本:リチャード・レビンソン ウィリアム・リンク
殺害の動機と人物相関図
物語は探偵社社長ブリマーが、射撃訓練を行うシーンから始まります。
何とブリマーは両手打ち。
両利きとは、とても器用ですね。
さらにこの射撃場は、ブリマーのオフィス内にあるようで、最新設備の整った何とも大きな探偵事務所のようですよ。
ブリマーは、大物財界人で大手新聞社3社を経営するアーサー・ケニカットより、妻レノアの素行調査依頼を受けています。
このような大物からプライベートな調査を依頼されるということは、信頼された大きな探偵会社だということは明らかですね。
偽の素行調査を報告するブリマー
妻レノアの不貞を疑っていたアーサー・ケニカットに、奥さんは潔白だったと報告するブリマー。
しかしこれは真っ赤な嘘で、妻レノアはどうやらアーチャーという男性と、不倫関係にあったようです。
ブリマーがケニカットに偽の報告をしたのは、レノアに恩を作って利用するためでした。
探偵であるブリマーは情報は大切な商品と考えています。
情報の宝庫である新聞社を経営するケニカットの情報収集力は、まさにブリマーがのどから手がでるほどほしいもの。
特にケニカットを中心とする財界グループが、次の州知事選でどの候補者を支持するか探るように、ブリマーはレノアに頼むのです。
レノア(メーテル)の大逆襲
仕事を終えたブリマーが、海岸の別荘へ帰ると何とレノアが待ち受けていました。
何でもブリマー邸から、3キロの距離にケニカット夫妻は別荘を持っていて歩いてきたのだとか。
レノアは夫ケニカットを探れというブリマーの依頼をきっぱり断ります。
そして自ら夫に自分の不貞を話し、ついでにブリマーの脅迫も伝えると言い切るのです。
かっこいいですねぇ、レノア。
こういう女性好きです。
何てったって声がメーテルですからね!
メーテルにふさわしい選択です。
コロンボに登場する女性は、ここぞというときに気の強い人が多くて素敵です。
しかし財界に顔がきくケニカットに嘘の報告をした上、妻を脅迫したことがばれれば、ブリマーは破滅します。
「それだけはいけません。」と、ブリマーはレノアを止めようとし、二人はもみ合いになります。
カッとなったブリマーは、思わずレノアを殴ってしまいます。
殴られたレノアは倒れた拍子にガラスのテーブルに、頭を強く打って死んでしまいます。
うそーん。
メーテルがあっさり死んじゃったー。
不死身かと思ってたのに…。
ブリマーは慌てて犯罪隠ぺいをはかり、物取りの犯行に見せかけて、車でレノアの遺体を運び、捨て去るのです。
このときの隠ぺい工作が、ブリマーの眼鏡に映し出されるという表現で描かれています。
ブリマーのあせりや緊迫感が伝わってきて、よりミステリアスな効果を演出しています。
物語開始役16分コロンボ登場
さて愛車のフランス社プジョー403に乗って、我らがコロンボ登場です。
何と車のテールランプが切れていて、コロンボは白バイ警察官に車を止められてしまいます。
警察官に免許証を確認されるコロンボ。
その免許証を来週で切れると、警察官が教えてくれます。
ココ、後から重要なシーンで出てくる伏線です。
警察官はコロンボが殺人課の刑事だと知って、現場までバイクで先導してくれます。
刑事なのに警察官に車をとめられてしまう、なんとも言えずコロンボらしい登場シーンですね。
コロンボの疑惑-1 レノアの頬の傷
レノアの死体遺棄現場である廃車置き場に着いたコロンボ。
コロンボはたばこを吸いたいのですが、マッチを持っておらず、「マッチある?」と、聞き倒して4回目でやっと貸してくれる刑事が見つかります。
コロンボが筆記用具やマッチを持たないというのは、シリーズのセオリーです。
ホントにコロンボはどこまでもコロンボですね!
コロンボは殺されたレノアの殴られた頬の傷をじっと見つめています。
どうも指輪をはめている手で殴られたと気がついたようですね。
レノアの身元が分かり、夫のアーサー・ケニカットが遺体を確認します。
この妻の死を悲しむ打ち拉がれた演技が、とても素晴らしいです。
コロンボシリーズは、一話では夫が妻を、二話では妻が夫を、三話では、仕事のパートナーであり親友を、それぞれが計画的に殺害しました。
身内が亡くなったにもかかわらず、犯人たちは自分が殺しただけあって、それほど悲しんいる様子を見せることができないわけです。
それががコロンボの不信感をかい、逮捕のヒントとなります。
しかしこのケニカットの悲しむ様子は、絶対この人は犯人じゃないというオーラが漂ってきて、コロンボもそれを感じ取っています。
身内が殺されたのに、あまり悲しんでいないという描写は、コロンボが犯人の当たりをつけるきっかけとなる、シリーズの一つのセオリーなのでしょうね。
コロンボの疑惑-2 妻を信じすぎる夫
コロンボは、妻レノアを失くした夫ケニカットに、いくつか確認を取ります。
レノアに男性関係はなかったかと尋ねるコロンボに、「一点の疑う余地もなかった。」と言い切るケニカット。
コロンボはここまで自信を持って言い切れるケニカットに、少し違和感を覚えます。
そりゃー、つい先日、有能な探偵社に妻の潔白を証明してもらったばかりだもの、自信満々で言い切れるに決まってますよね!
いい伏線です。
ケニカットがはっきりと妻の潔白を言い切ったことを、逆に疑ったコロンボは、被害者レノアの趣味や交友関係を尋ねながら、さらに男性関係に探りを入れます。
ケニカットはレノアの男性関係を再び否定し、
「親子ほど年の離れた夫婦だったが、愛し合っていた。彼女は私の青春だった。それだけに犯人が憎い。迷宮入りなどにしたら黙っておらんからね。」
と、コロンボに活を入れるのです。
ケニカットの怒りと悲しみが伝わる重厚なシーンです。
コロンボの疑惑-3 レノアの悩み事
ケニカット邸にまねかれたコロンボ。
大豪邸ですね。
コロンボは、事件当日レノアが別荘に出かけ、考え事があるとビーチに出かけたことから、何か悩みを抱えていたことを感じ取ります。
そしてレノアの知人の犯行ではないかと、ケニカットに打ち明けるのです。
指輪をつけた犯人候補発見!
ケニカットは、知らずとはいえ何と!コロンボを犯人であるブリマーと引き合わせます。
警察の捜査力だけでは、犯人逮捕に不安を感じたケニカットは、ブリマーを捜査に協力させたいと申し出るのです。
何でもブリマーは元警察官で、自らこの捜査協力を願い出たとのことでした。
犯人であるブリマーは隠ぺい工作のために、警察の動きを把握しておきたいのでしょうね。
しかしこれがブリマーにとっての大きな落とし穴になってしまいます。
わたしはこのブリマーという犯人、好きですね~。
今までの犯人みたいに高圧的にコロンボを見下した態度をとらず、敬意を払っているからです。
コロンボの警察署長から、有能な刑事だとお聞きしたとコロンボを褒めています。
それゆえに、ここから終始コロンボの手のひらで泳がされるブリマーが気の毒で気の毒で、笑いがとまりません。
人の不幸は蜜の味ですね。
コロンボは大きな指輪をつけたブリマーを見たとたん、犯人だと確信したに違いありません。
殺されたレノアの頬の傷は、この指輪のせいでついたのだとひらめいたのです。
コロンボにとってはまさに鴨が葱を背負ってやってきた気分だったでしょう。
ですからコロンボはこのように述べています。
何と言うか目の前にパ~ッと明かりがついたような気分ですな。
さい先がいいって言うのかついているのか…。
アタシ運命論者でしてね。何でも信じちゃうんです。
占星術 骨相学 手相 何でもござれ。
そしてコロンボは、「ちょっとお手を拝見」と言ってケニカットとブリマーの手相を見ます。
手相を見るというのも方便で、本当はコロンボはブリマーの指輪を確認したかっただけなんです。
本当にコロンボは、油断のならないヤツですよね。
ほぼほぼ口からでまかせだと思うのですが、まずコロンボはケニカットの手相を見ます。
一言で言って吉相ですな。
生命力に優れ、財産運も強い。
これならほとんと言うことなしですよ。
うらやましい限りだ。
これ、ケニカットが財界の大物であることを知っていたら誰でも言えることですよね。
続いてコロンボは本命のブリマーの手を調べます。
う~ん。強烈な意思と仕事にたいする熱意。
知能線のカーブのしかたが一万人に一人というタイプですよ。
頭が切れすぎる。
好調の時はこれ以上の強みはないけれどもいったん曲がってくるとどこまでそれるか分からないって相ですな。
このセリフも、ブリマーがケニカットが信頼を置いている有能な探偵だと分かっていれば、簡単に出ますよね。
しかし「いったん曲がってくるとどこまでそれるか分からないって相ですな。」というセリフは、必ず逮捕してやるというコロンボの執念のようで、ちょっと怖いですね。
それからコロンボは、
「今日伺ったかいがありました。面白い人と知り合いになれて。」
と言って、帰ろうとします。
これももう、事実上のコロンボの勝利宣言のようですね。
犯人見つけちゃった!ラッキー!みたいな…。
そして次の捨てセリフ…。
ああ、ブリマーさん?親指の大きさはイコール野心ですよ。用心してくださいよ でかすぎるから。
ブリマーが何かしらの野心のため、うっかりレノアを殺めたことに感づいているようです。
コロンボは預言者か神か、怖い怖い。
あの片方の目で、物語前半ですでに全てを見透かしています。
コロンボの右目は義眼ですからね。
コロンボは小躍りしながら帰りたい気分だったでしょうか、うっかり出口を間違えて物入れの扉を開けてしまいます。
ケニカットから言えば、皆よく出口と間違えるのだとか。
しかしここで終わらないのがコロンボ。
物入れから、偶然レノアのゴルフセットを見つけ出します。
そしてケニカットから、レノアが通っていたゴルフクラブやレッスンまで聞き出すのです。
その様子を面白くなさそうに聞いているブリマー。
なぜならレノアの不倫相手は、ゴルフのインストラクターであり、ブリマーはそれを知っているからです。
コロンボは物語の大きなヒントにまた一つ、たどり着こうとしています。
しかし一見おっちょこちょいで、手相なんて言い出したコロンボにケニカットは不信感を隠せない様子。
ブリマーも「手相見が横行するようじゃ近頃の警察も質が落ちましたね。」と同意しますが、はてさて本心はどうでしょうか。
コロンボの疑惑-4 ブリマーの車
コロンボはケニカット邸から出る途中、しっかりブリマーの車をチェックしていきます。
車のサビから、潮風の吹く海辺に住んでいることが分かりました。
またコロンボは後でこの車にちょっとしたいたずらをするのです。
うちのカミさん-1 スポーツを勧める
コロンボは早速、殺されたレノアが通っていたゴルフレッスン場に向かいます。
勝手にレッスンの予約ノートを見ていると、ゴルフインストラクターのアーチャーがやってきます。
青い瞳のいい男です。
アーチャーの嘘1 レッスン回数
コロンボはアーチャーに、レノア夫人のことを訪ねます。
アーチャーは「2~3回レッスンをした。」と答えますが、予約ノートによるとレノアは10回以上、レッスンを受けています。
アーチャーの嘘は一瞬でコロンボに見破られ、彼がレノアの不倫相手であったことが、見抜かれてしまいます。
そしてコロンボは強引に、アーチャーにゴルフを教えてくれるように頼むのです。
そこで口実に、うちのカミさんが登場です。
面白そうだよ。警察官なんて因果な商売でね。
年がら年中気の重いことばっかりさ。
うっかりするとノイローゼになりそうだ。
で家内もスポーツをしろって勧めるんだけれどもゴルフなら上品でいいよ。
アーチャーの嘘2 レノアとの関係
さらにコロンボは、レノアのゴルフレッスンは、最初の2回は午後だったのに、残りの13回が夕方になっていたことを、アーチャーに問います。
一日の最期のレッスンなので、その後、ケニカット夫人に食事に誘われたりしたのではないかと、コロンボは探りを入れます。
するとアーチャーは
「いや~エドナとは…あの人とは一度も出かけてませんよ。」
と思わず、レノア・ケニカットの愛称を口にしますね。
二人がただならぬ仲であったことは、もう、だだ漏れです。
そしてコロンボに怒られてしまいます。
一つ忠告しとこう。
同じうそをつくんならもっと上手にやることだ。
下手にごまかそうとするとかえってしっぽを出すぞ。
よく餅屋は餅屋っていうだろう。
アタシは宗田の専門家であんたはゴルフだ。
お互い先輩の言うことは聞かないとね。
デカのくせにこんな余計な忠告をするのもほんのお礼のつもりさ。
ゴルフの手ほどきを受ける以上、あんた先生だ。
そしてコロンボは、見事なゴルフショットを決めます。
簡単じゃないか。
何事でも同じだな。
どこかに無理があったり緊張があるとうまくいかんよ。
こんな簡単なことなら教わらなくてもできそうだ。
さあ、この物語の主要な人物がこれで出そろいました。
いよいよコロンボが犯人を追い詰めてゆきます。
後半に続く。
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