ころんの漫画
「死ぬほど好き」は
始めて先生に見てもらって
描いたお話でした。
だから起承転結は
きちんとしているはず。
この漫画。
絵は下手だと思うけど
わたしなりにディテールに
凝ってるんだよん。
童話の中のお姫様に憧れる少女
という設定なので作品中に
モチーフとしてお姫様物語を
登場させてみた。
それと主人公の女の子の
その時々の心情を花で表してみた。
まず3ページ目の
千鶴ちゃんが登場するシーン。
ここは回りに
すみれの花を飛ばしてみた。
まだ恋を知らない
清純で可憐なイメージです。
そして恋が始まり
彼女の愛は絶好調に咲き誇る。
周りは薔薇で飾ってみた。
靴を脱いで足に口付けしてるのは
「シンデレラ」のメタファーです。
右下に描かれてるのは
ガラスの靴にしたかったんだけど
そんなの今時はいてる人いないので
マイサンダルを描いておいた。
グレースのサンダルで
キラキラが可愛くて
お気に入りなんだけど
ヒール高いし足が痛くなるので
あんまし履いてない。
おしゃれはたいへんだのう。
そして女性として
一皮むけた彼女は
しっとりとしたユリになります。
10ページ目で
ルカの家に押しかけるシーンね。
だけどルカに冷たくされて
ユリ、2コマで終わってるやんって
先生に突っ込まれたわ。
彼女はここでルカのお土産として
りんごを持ってくるんですよ。
いわずとしれた
「白雪姫」のメタファー。
ルカにふられた千鶴ちゃんは
傷心で雨の中をさまよい
事故にあいます。
2コマ目にりんごがコロンと
落ちてるのが
お分かりいただけるでしょうか。
これは毒りんごを食べて
魔女になったって意味です。
だからルカの部屋で
鏡から覗くシーンがあるけど
ちゃんと足元にりんごが
落ちてるんだよ。
そして可憐なすみれから
始まったにも関わらず
魔性のものになった
千鶴ちゃん。
ラストはとうとうこんな
わけの分からない花に
なってしまいます。
で、
途中千鶴ちゃんが
寝たきりになるシーンと
ラスト、
ルカが植物人間に
なってしまうのは
「ねむり姫(いばら姫)」の
メタファー。
ラスト、バラでかこまれてるのも
誰も入り込めないいばらで囲まれた
ねむり姫のお城のイメージ。
こういう
こじゃれたことを考えるのが
楽しくて仕方ない。
でもこういう工夫に
気づいてくれる人は
いないので
自分で説明しておきました。
タイトルも
自分では上手いこと
つけたなって思ってる。
「死ぬほど好き」
ホンマに死んでるからね。
正確に言うと死にかけた。
この話を思いついたのが
大学生の頃に読んだ本。
タイトル忘れたけど
多分ジェンダー論から
少女漫画を語った
本だったと思う。
その本によると、
少女漫画というのは
たいてい一途だけど
ちょっとどじなところもある女の子が
前向きに努力することによって
素敵な彼と恋を成就させるという
構成でできている。
「ときめきトゥナイト」
「星の瞳のシルエット」
「ポニーテール白書」
などなど
りぼんっ子だったわたし
が読んできた少女漫画は
なるほど
そういうストーリーばかりだった。
しかしその本によると
そういうストーリーばかり
繰り返し読ませることで
少女たちは一途に尽くす
恋愛スタイルこそ
正しいという
刷り込みをされる。
そしてそこでは
一途でちょっとダメな自分を
かっこいい男性に、
そのままの君が好きと
認めてもらうことによって
究極の自己肯定が発生する。
つまりこのような一途な少女たち
男性による許容により自己肯定が
行なわれるという女性たちは
実は男性によって都合の良い女性像って
ことが書かれていた。
男性に尽くし
男性に肯定してもらい
男性によって喜びを
与えてもらえる少女漫画の
主人公像は
少女のための存在ではなく
男性の求める女性像
なんだって書かれていた。
わたしは
目からウロコが落ちた。
わたしの信じてた少女漫画は
わたしたちを
ただただ男性にとって
都合のいい女性になるように
洗脳していただけだったのかと。
価値観の変わった瞬間だった。
だまされていた。
わたしはあんなに
大好きで憧れた少女漫画に
だまされていたアルよ。
現実は少女漫画のような
一途な女性こそが
報われるというわけではない。
むしろ一途で情の深い女ほど
男性にいいように
利用されてしまうのではないのか。
そして心優しい女の子ほど
恋に狂わさやすいことも
少しずつ分かり始めた頃に
この本を読んだのである。
「死ぬほど好き」の主人公
千鶴ちゃんは本来は心優しい
控えめな女の子である。
ここでは少女漫画ではなく
お姫様のおとぎ話に憧れる少女という
設定にしたけれども
要は信じてた少女漫画の世界に
裏切られた少女の復讐の物語である。
そしてわたしが信じていた
少女漫画の世界へのアンチテーゼ、
決別と挑戦状という意味もこめて
この話を描いた。
わたしなりに深い意味を
こめてたんです。
でもわたしは
「ときめきトゥナイト」も
「星の瞳のシルエット」も
好きですよ。
今読んでも十分おもしろいし
真壁くんかっこいいしね。
いまだに少女漫画を描いてる
池野恋先生の感性も
すばらしいと思う。
少女漫画ってある程度の
若さがないと
描くのキツイんだよね。
だからわたしは
ヤングレディスという
少女漫画とレディースの
中間みたいな層をねらって
当時は漫画を描いていた。
でも結局それすらも
キツくなってきて
今に至るというわけです。
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