派遣社員として働くも、直属の上司である性悪係長にやりにくさを感じるプチ初老ころん。
とはいえ、当初はわたしの前任者ウツ子さんがウツ病で逃亡したためであろうか。
性悪係長は、わたしにたいしても気遣いはしてくれていたような気もする。
一度、働きにくいとかない?って聞かれた。
そのときに、ウツ子さんがうつ病だったと教えてもらった。
突然辞めると言い出すので、引きとめるのがたいへんだったとかそんな話。
それから割と人が変わる部署なので、とにかく長く続けてくれそうな人を雇いたかったと言っていた。
ころんさんは続きそう?という、上司なりの気遣いです。
そのときは、まさか性悪係長のせいで、ウツ子さんが鬱になったとは思ってなかったので、気を使ってくれるいい上司だな~と思ってました。
ちなみにウツ子さんが性悪係長のせいでうつ病になったという証拠はないのですが、勝手にわたしが思ってるだけ。
そして現在のわたしのポジションの事務員女性が続かないのも、絶対性悪係長のせいだと、今は確信している。
実際ある男性が嘆いていた。
性悪の下の女の子はすぐ辞める、今度女の子辞めさすなって怒ってやるってね。
そんなある日、また事件が起こった。
わたしの業務の一つに、月末に取引先から届いた請求書の支払処理という仕事がある。
請求書に、どの案件にいくらの請求があるかを確認して、予算と照らし合わせる。
問題がなければ、そのまま社内システムを使って請求処理。
取引先に支払が行われるというわけ。
さほど難しい仕事でもないが、取引先に約束通りお金を払うために、必ずその月中にしなければならない仕事です。
そしてやはりお金に関することなので、重大で責任の重い仕事です。
ところがある日、予算を大きく上回る請求書が届いた。
そこでわたしは性悪係長に相談する。
すると係長は、なんやこれ、と顔をしかめた。
予算よりも大きな請求がしてしまうと赤字になって、それは性悪係長の責任問題になるからです。
そして性悪係長は、
「とりあえず、置いておいて。」
と言った。
???
「え、これ、月末までに処理するようウツ子さんに習っているんですけど…。」
とわたしが困って質問すると、性悪はさらに強い口調で
「とりあえず置いておいて!」
と同じことを言った。
こういう下のものに強い口調で脅かすような物言いをして、口答えできなくするのは、コイツの常套手段である。
さらに横着で傲慢な性格だから、いちいち下のものなんかに、事情を説明するのが面倒なんだと思う。
まあ、わたしもクレームつけるときは、わざと強い口調で言って、先にジャブを打ち、相手に口答えできなくしてやるけどな。
実はわたしと性悪係長は、同じ年月に生まれて誕生日は何と一日違い。
そして血液型も同じA。
運命の星のもとに生まれた双子なのです!
こんな性悪と双子ってことは、わたしも性悪ってこと?
冗談じゃないですわ。
想像するのもおぞましい…。
まあ例え細木和子の占いで同じ星に生まれていて気質が同じでも、わたしは女性だから多少の細やかさってのがあるわな。
だから傲慢な態度はとっても、きちんと細やかな説明して、筋道は通し、自分の正義をこんこんと語る。
さらに高卒と大卒の違いもある。
要は大卒のわたしは高卒の性悪係長よりも、教養と知性と品がありますよ~って言いたいだけですわ。
同じ星のもとに生まれても、育ちや性別などで、多少に性格に違いは出てくるということです。
そのようなことで、今月中に急いでしなければならない仕事を、してはいけない言われ、わたしはまた途方にくれる。
そしてまずウツ子さんに相談する。
ウツ子さんは、性悪係長の対応に驚いて
「請求書到着から30日以内に支払をするという社内ルールがあるのに!」と言っていた。
で、いろいろ悩んでくれた。
こっそり支払処理してしまえば、通るとは思うし、性悪係長は案外忘れてくれるかも、いや、覚えてるかな…などとあれこれブツブツ言っていた。
わたしは
「仮に支払処理をしなくて問題になるとしても、わたしの立場からしたら、性悪係長の指示に従っただけなので、どうしようもないですね。」
などとグチをこぼしてみる。
するとウツ子さんは
「性悪課長は、事務的なことが全然分かってないから、多々ヘンなことをする。
でも最後に上手につじつまを合わせはる。
だから何でもこっちのせいにされるで。
どんだけわたしのせいにされてきたか…。」
と言ったが、その声は、最後の方は震えて湿っていた。
ウツ病のウツ子さんは、何でも自分のせいにされた苦しみを思い出して、怒りに震えたんだろうね。
結局ウツ子さんに相談してみたけど、具体的な解決法はない。
ただ性悪係長は何かあったら部下のせいにする人間性を持っていることだけは分かった。
それから同じ事務所内で働いている営業事務のカンコさんというアラフィフ独身女性に相談してみる。
このカンコさんも驚くほど性格が悪かったのだが、当時のわたしは気がついていなかった。
韓国のビックバンというアイドルグループにはまっていて、頻繁にライブに出かけていた。
もうアラフィフのいい年をした女性が、韓国なんかのアイドルグループにはまるなんて、大和撫子としてのたしなみを疑うね。
で、一緒にライブに行く友達いるんだ~と思ってたら、お母さんと出かけてたらしい。
韓国より名前をいただいて、カンコさんです。
とにかく女性の正社員事務員は、カンコさんしかいなかったので、彼女しか相談できないわけです。
するとカンコさんにめちゃくちゃ怒られた~。
「仕事をしてもらったから、請求処理をしないなんて、ダメに決まってるでしょ。
じゃあ、ころんさんが派遣で働いていて、派遣会社から請求書が届いたのに予算がないと言って、給料を支払わないのと一緒ですよ!」
そりゃー、カンコさんの言うことがいたって正論なんだけど、じゃあ、わたしはどうすればいいのさ。
で、
「わたしは性悪係長の言う通りにしただけです。」と言い返すと
「言うことを聞いていいことと、悪いことがあるでしょ!」
ってさらに怒られたぁ~。
そらそーだわな。
じゃあ、死ねって言われたら死ぬのかって話やわな。
カンコさんはわたしを責めるだけ責め立てて追い詰めるだけで、具体的に助けてくれるわけでもない。
所長に相談するとか、性悪係長に物申してくれるとか、そんなことをしてくれるはずもない。
いち平社員であるカンコさんより、性悪係長の方が立ち場は上だもんね。
わたしはどうすればいいの~。
派遣ってこんなに悩ましいお仕事なの~。
わたしはもう考えるのも面倒になって、そのまま放置することにした。
放置するってことは、性悪係長の言うとおりにするってことだわな。
そして30日以内に支払をしなければならないのに、放置して二カ月後。
とうとう取引先から電話がかかってきた!
お金が払われておりませんってね!
そらそーだわな。
で、性悪係長が対応してくれるのかと思ったら、わたしが対応させられた!
で、平謝りの上、社内処理が遅れておりまして…と言い訳するしかないわな。
で、今月中に必ず処理をします、できない場合は連絡しますと言って、何とか納得していただけました。
で、性悪係長に報告したら、予算ができたから、処理していいってさ。
二か月かけて、あちこちから予算をかき集めてきたらしいよ。
こんなことが、三度ほどあった。
わたしは毎月毎月予算が足りなかったらどうしようと、ビクビクしながら請求処理をしていた。
で、月末ギリギリに予算不足が判明したら打つ手なしで怖いから、取引先に頼んで、毎月20日までに確定している支払だけでも先に教えてもらうことにした。
支払がまた遅れてしまっては申し訳ないので~と上手いこと言って、無理を聞いていただきました。
わたしはこれでも上手いこと言うのが得意なのよ。
業務を前倒しして、余裕を作ることで対策を考える時間が少しでもできるもんね。
それからこの出来事を派遣会社に相談する。
すると派遣会社もびっくりした様子で、こちらから所長に相談してみましょうか、と提案してくれた。
わたしは毎月必ず起こるトラブルでもないので、今度こういうことがあったら、お願いしますとだけ頼んでおいた。
それ以降は、同じようなトラブルは起こらなかった。
そしてわたしは性悪係長への不信感を強くする。
今回の件で分かったこと。
性悪係長は、都合の悪いことは部下のせいにする、つまり無責任。
性悪係長は、取引先の支払いを平気で滞らせる、つまりだらしない。
性悪係長は、取引先をムシケラ程度にしか思っていない。
性悪係長は、とにかく性悪である。とにかくとにかく性悪である。
P企業は取引先に支払をしないブラック企業である!
恥知らずな泥棒乞食企業である!
この出来事によりP企業は、取引先の支払いを平気でとどこおらせたり、奴隷みたいな扱いをすることで、成り上がってきた下品な会社なんだろうな~と思った次第であります。
もうこんな会社いやじゃ!