結婚相談所のお見合いで出会ったセーブタさんと、結婚にむけての話をつめているプチ初老ころん。
わたしはその月でP企業の派遣契約を終えることになっていた。
しかし次の仕事はまだ決まっていない状態でした。
次の仕事について、わたしは慌てて働くつもりなはいと、セーブタさんに伝えた。
というのも、前回のUSJデートのときに、もっと長く続けられるところで働けばいいのに、とセーブタにグチグチ言われたことを根に持っているからです。
わたしの働き方について、やいやい口出されるのがイヤだったのです。
お前の望むような働き方をするつもりはありませんと、遠まわしの抗議運動です。
「村田製作所の採用面接を受けたときに、英語が必要だって言われたから、この機会に語学留学でも行こうかな。」
と、わたしはあえてのんきなことを言ってやった。
セーブタは、多分わたしのこのような考えが面白くないようだった。
しかし建前で
「そうですね。しばらくゆっくりするのもいいですね。」
と、確かに言った。
確かに言ったが、内心はそうは思ってないんだろうなというのが、バレバレの言い方でした。
もしセーブタと結婚するなら、専業主婦することがたった今、決まったわけやん。
だったら慌てて仕事を見つけることもないし、長く働けるところを探す意味もない。
結婚後、すぐ退職なんてことになったら、就職先の企業にも迷惑かけるしね!
逆に結婚して住むところが決まってから、その近くに勤め先を探した方が、長く働けるやん。
と言いつつ、実際は、必死で仕事を探している状態でした。
わたしは厚生年金や社会保険料を切らしてしまいたくなかったので、できれば引き続き同じ派遣会社で働きたいと思っていた。
といっても、同じ派遣会社で仕事を続けようと思ったら、一つづつしか紹介してもらえない。
確かすでに次の面接は決まっていたと思う。
そのことは、セーブタには伝えなかった。
やいやい口出されたくなかったからね。
この派遣以外に就職活動をしていたか、あまり記憶にない。
さて、セーブタさんには姉が二人いる。
どっちの姉か忘れたが、日本で最大手の自動車産業、トヨタ勤務の男性と結婚したらしい。
高卒だけどトヨタの技術職だから、かなりのお給料をもらっているとセーブタは言った。
その高卒と言ったセーブタに、何だか高卒をバカにしたような響きを感じて、わたしは重要なミッションを思い出したのです。
のりこちゃんに与えられた、セーブタが現役で近大に入れるとは思えないので浪人してないか聞いてこいというミッションです。
そこでわたしはセーブタに
「大学には現役で合格されたのですか?」
と聞いてみた。
するとセーブタは…
1…
2…
3…
「三浪しました。」
と言った。
わたしは一瞬聞き間違えかと思った。
まさか近畿大学程度の中堅私立を、三浪もして入るヤツなんているわけないと思ったのだ。
そこで「え?何浪?」と聞き返したら、再びセーブタは
「三浪しました。」
と、恥ずかしげもなくはっきり言ったのである。
「え!?
さ、三浪?
三浪?
三浪って…。
それ親甘やかせ過ぎでしょ!!」
とわたしは驚きのあまり、セーブタとセーブタの親を責め立てた。
セーブタは
「自分たちの頃は、一番受験戦争が厳しかったから…。」
と言い訳しておった。
嫌いやわー。
こういうセーブタの、本来は自分が負うべき責任を、何でも他の要因のせいにするところ。
嫌いやわー。
こういう言い訳、一番嫌い。
だって、同じ条件で、東大京大に合格している人だっているやんね!
しかも受験戦争のピークは、セーブタの世代ではなくもう少し上の世代だって乙女課長が言ってた。
お前が三浪したのは、時代のせいではない!
単にお前がバカだからだよ。
姑息な言い訳をするセーブタにイラッとしたので、わたしは思い切り三浪をバカにするような態度をとったかと思う。
するとセーブタはもともとは理系を目指していたと言い出した。
「図面を書いたりしたかったんです。
こういう図面をね。」
と、セーブタは図面をかく仕草をした。
図面…って、建築系ってことか?
よく分からん。
しかしやりたいことがあって浪人したんなら、それを貫き通せばいいのに。
理系が無理だったから、途中で文系に方向転換して、やっと近大に滑り込んだのだと。
わたしとデート中に、すぐ謎の方向転換をして無駄にわたしを歩かせる要素は、すでにこの頃から培われていたようです。
近大なんて、せいぜい1浪ぐらいしかいないだろうから、三浪のセーブタはさぞかし浮いておったことだろうね!
それでいて高卒のことを見下したようなことを言うから笑える。
人が三年で終えることを、倍の六年もかかっておいてさ。
三浪して近大入るぐらいなら、高卒で働く人の方がよほど立派やで。
ま、三浪までして手に入れた学歴だもん。
高卒よりマシだって思わないと、プライドがたもてんわな。
やっすいハゲたプライドがよー。
全くセーブタにはがっかりだね!
いくら待望の男の子だからって、三浪もさせる両親もどうかと思うね。
こんなバカ家族と家族になるの、イヤになってきた。
しかし!三浪もさせるってことは、お金持ちの家なんだろうね~。
三浪させるほど甘やかして手塩にかけた長男坊が、アラフィフになっても一人の女からも愛されず、結婚もできず、孫の顔も見せてくれないとかどんな罰ゲーム!
バーカバーカバカ家族。
ザマーみろ!
ケケ。
カバ!!
わたしがこの家族に嫁入りすることになったあかつきには、一切この家族の言うことを聞かないことにする。
だってこの家族の言うこと聞いてたら、三浪もするバカ息子ができるだけだもんね。
そしてこの金持ち家族の遺産だけを目当てに結婚することにする。
そしてもし子供に恵まれたら、その教育も全てわたしが行って、セーブタ一家には一切口を挟ませないことにする。
「あなたのいうこと聞いてたら、このコを三浪させることになっちゃう!」
って言ってやるね。
そしてわたしはだんだん謎が解けてきたのである。
どうも頭の動きがにぶいなと思っていたセーブタ。
三浪しても中堅私立大学しか合格できなかったことを考えると、これはもう、セーブタの脳みそは進化がおくれているらしいと、考えざるを得ない。
続く