作品情報
刑事コロンボ:ピーター・フォーク(小池朝雄)
殺人犯:海兵隊元英雄 マーチン・ホリスター/エディ・アルバート(久松保夫)
被害者:元部下海兵隊資材調達部 ロジャー・ダットン/ジョン・カー(中曽根雅夫)
殺人の目撃者:アーク公園職員 ヘレン・スチュワート/スザンヌ・プレシェット(鈴木弘子)
目撃者の母:ウォルターズ夫人/ケイト・レイド(高橋和枝)
殺害の動機:不正の口封じ
- 演出:ジャック・スマイト
脚本:ジョン・T・デュガン
殺人の目的と目撃者
殺人の動機
海兵隊の英雄、マーチン・ホリスター将軍は退役後、建設会社を経営して荒稼ぎし、海辺の豪邸に住んでいました。
そこへ元部下の海兵隊ダットン大佐が慌てて駆けつけてきます。
ダットン大佐は、軍の特別監査が入るため、二人で行っていた不正、経費の水増しや入札価格の漏洩などがばれてしまう恐れがあると知らせにきたのです。
将軍の軍人語録-1 戦友としては頼むに足りん
怯えてスイスに国外逃亡するというダットン大佐に、ホリスター将軍は言い放ちます。
戦況不利になるとたちまち浮足だつような人間はいざとなると口も軽いもんだ。
従って戦友としては頼むに足りん。
そして海兵隊幹部学校メモリアルホール宛に送るはずだった、箱詰めされたホリスター将軍の戦歴の記念品の中から、銃を取り出します。
不正の口封じのため、ダットン大佐を銃殺したのです。
何と、殺人の目撃者が…
しかしこの殺害を、海辺でボート遊びをしていたヘレンという女性が目撃してしまうのです。
ヘレンは警察に通報し、バスローブを来た男が制服の男を銃で撃ったことを証言します。
そして事件が起こった屋敷と、自分の住所と連絡先を駆けつけた警察官サンチェスに伝えるのです。
しかし若いサンチェスは、事件現場が海兵隊の有名な英雄ホリスター将軍邸と聞いて、よりベテランの刑事に担当をしてもらうよう、本部に願い出ます。
コロンボ登場 物語開始約11分
殺人課ベテラン刑事として、物語開始約11分で、愛車プジョー403に乗ったコロンボ登場です。
ホリスター将軍邸で待機していた警官サンチェスは、コロンボにここに車を停めないように注意します。
コロンボが警部だって分からなかったようですね。
コロンボファンのわたしからすれば、ロサンゼルス刑事といえば、よれよれのレインコートファッションコロンボのイメージしかありません。
が、実際あんな風貌の刑事など、いないのでしょうね。
自分が待ちかねていた警部がコロンボだと気が付いたサンチェスは、「パトカーで来られると思っていたので。」と言って、謝罪します。
その後、コロンボはベテランらしくテキパキとサンチェスに指示を与え、ホリスター邸を訪ねるのです。
ホリスター将軍のアリバイと記念品への執着
将軍の軍人語録-2 職務上黙殺はできん
コロンボは、ホリスター将軍宅を訪ね、拳銃発射事件の通報があったことを伝えます。
ホリスター将軍は思わぬ目撃者に内心は冷や冷やだったのでしょうが、さすが軍人、肝が据わっています。
穏やかじゃないな。職務上黙殺はできん。
わしも現役時代は君と同じ立場に立たされたことがある。
と、いたって冷静に快くコロンボの捜査を受け入れるのです。
思い出のこもった戦利品
ちょうどホリスター邸には、母校の海兵隊幹部学校の士官候補生二人が、訪れていました。
母校のメモリアルホールに飾る、ホリスター将軍の戦歴を物語る寄贈品を運びに来ていたのです。
軍人としてこれに過ぎる名誉はない。
とホリスター将軍は誇らしげです。
そして今夜、ホリスター将軍の陳列室の開設を祝って、祝賀会も開かれるとのことです。
コロンボはすでに閉じられようとしていた、記念品を収めた大きな箱の中身を見たいと申し出ます。
捜査に手落ちがあると帰ってから上司にどなられるもんですから。
と、コロンボは今回は「うちのカミさん…。」を使わず、上司を口実にしていますね。
しぶしぶ箱の中身を開放するホリスター将軍。
そのコレクションの数々を見てコロンボは
うわ~。ぎょうさんある。
と言います。
ねぇ「ぎょうさん」って「たくさん」って意味だと思うのですが、関西弁ですよね。
誰が訳したのでしょう、「ぎょうさん」って…。
関西弁なのに、なぜかとてもコロンボにマッチした訳し方です。
関西圏以外の人、この訳を見て、意味、通じるのでしょうかね。
ホリスター将軍は
全てこれ戦塵にまみれたもの。一つ一つに思い出が籠っておる。
と、とても戦利品を大切に思っていることが分かります。
制服の男はホリスター将軍
発砲事件で、制服姿の男が撃たれたと聞いたホリスター将軍は、それは自分であると言い出します。
寄贈品を詰めているうちに、懐かしくなって着てみたのだと。
そしてまた、目撃されたバスローブ姿の男も自分であると言うのです。
思い出のライター
コロンボがいつものごとく、たばこを吸うのにマッチを探しています。
ホリスター将軍は退役記念に部下の幕僚から送られた立派なライターを、コロンボに貸します。
こいつはホリスター陳列室に寄贈しないのですか?
と聞くコロンボに、何もかも出してたまるか、と、これが特に思い出深い大切なライターであることを強く述べるのです。
ホリスター将軍のコレクションという題目通り、将軍が本当に思い出を大切にしており、それをコレクションしているのが分かります。
寝室の軍服の思い入れ
さらにコロンボは寝室とクローゼットにある軍服を見せてもらいます。
過去の遺物だよ。わたしにとっては貴重なものだがね。
と軍服への思い入れを語り、いかに軍人時代のアイテムに思い入れがあるかがうかがえますね。
海兵隊射撃大会で優勝した記念のメダル
コロンボは、発泡事件があったという通報のため、念のためにホリスター将軍に拳銃を持っているかと確認します。
ホリスター将軍は、射撃の練習用の小さな22経口の銃があるだけだと言って、見せてくれます。
その銃は、海兵隊射撃大会で優勝した記念のメダルと一緒に大切におさめられていました。
このようにホリスター将軍は現役時代の勲章や記念をとても大切にしていることが、ふしぶしから伝わりますね。
後にこの行為が、将軍の足元を救うことになります。
ホリスター将軍は、この銃を取り出してウロウロしていた様子を、目撃者が見て発砲したと勘違いしたのではないかと、コロンボに伝えます。
もう一つ…1 忘れていました ヨット調査の件
これといった手掛かりを見つけられなかったコロンボは、立ち去ろうとします。
そしていつものごとく、振り返って定番セリフ「もう一つ、忘れていました。」を口にします。
コロンボは、部下にホリスター将軍のヨットを勝手に調べさせたことを説明します。
将軍の軍人語録-3 常に先制攻撃を唱えてきた
コロンボが許可もなく将軍のヨットを調べたことも
わしは常に先制先生攻撃を唱えてきた。君のやり方はそれにかなってると言える。まあ済んだことだし大目にみておこう。
と軍人の英雄らしく、大きな心でコロンボを受け入れるのでした。
そしていつも見た瞬間、犯人に感づくコロンボが、今回は一切手がかりをつかめなかったのです。
さらにあろうことか、目撃者ヘレンが、「酔っぱらっていたんじゃないか。」とまで疑うのです。
目撃者を探し当てるホリスター将軍
海辺からヨットに乗った目撃者の存在を聞いて、ホリスター将軍はヨットハーバーを訪れます。
そして目撃者が誰かを探し当て、住所さえも手に入れるのです。
怖いですね!
目撃者ヘレン邸を訪れるコロンボ
ホリスター将軍に疑うところがなかったコロンボですが、念のために目撃者のヘレン邸を訪れます。
刑事だと名乗るコロンボですが、ヘレンの母ウォルターズ夫人は、「身分証を見せろ。」と嫌な感じ。
「どう見てもお巡りさんとは思えないけどね。」と顔をしかめて言うウォルターズ夫人。
やはりコロンボは、刑事としてはありえない風体なのでしょうね。
コロンボの優しさ ヘレンの趣味に関心を見せる
まずコロンボは、ヘレンが粘土で作っている動物、つまりヘレンの趣味に関心を見せます。
楽しいでしょうな。こういう事をしていると。
するとウォルターズ夫人が、「心の病の治療にもなるんですよ。」と嫌味を言います。
ヘレンはどうやら心を病んでいるようなのです。
子供と動物相手の仕事(アーク公園の職員)をしているというヘレンに
はは~羨ましい仕事だ。
と、ニコニコして、コロンボは女性にはとことん優しいですね。
と、思ったけど、コロンボはこの時点では、ヘレンの証言を信じていませんでした。
ホリスター将軍邸を捜査したけれども、何もなかったとコロンボはヘレンに伝えます。
見間違いや、ヘレンが酔っぱらっていたのではないかというコロンボにヘレンはご立腹。
確かに制服の男が、バスローブの男に撃たれるのを見た、私はもう病気じゃないと言って譲りません。
ですがね。
殺人容疑で人を告発するのは容易ならん事ですよ。
と、コロンボはヘレンの証言を、全く信じていないようなのでした。
ヘレン邸を訪れるホリスター将軍
タキシードでばっちり決めたホリスター将軍は、殺害したダットン大佐の車に乗って、ヘレン邸を訪れます。
そのダンディないでたちのホリスター将軍に、ヘレンの母ウォルターズ夫人は、柔和な態度。
コロンボには、「身分証見せろ。」なんて言ってたくせにね。
ホリスター将軍は、「私に見覚えありませんか?」と聞きますが、ヘレンは「いいえ。」と答えます。
ホリスター将軍は、ヘレンが通報した相手が自分だと伝え、今夜11時からのニュースを見てほしいと頼みます。
そうすれば、私という人間がお分かりいただけるでしょう。では失礼。
と言って、将軍は去ってゆきます。
そしてダットン大佐の車を、街中に乗り捨てて、祝賀会に徒歩で出かけます。
ホリスター将軍を讃える祝賀会のニュース
コロンボは行きつけらしきお店の店主バートと、ホリスター将軍のニュースを見ています。
ティモシー・ケリー演じるこの店主バートは、第二話「死者の身代金」にも登場しますが、どうもお店は違うようですね。
第二話での登場シーンです。
ニュースでは、ホリスター将軍の母校に海兵隊幹部学校のメモリアルホールに、陳列室ができたことを伝えています。
そしてマーチン・J・ホリスターの名は永遠に語り伝えられ、現代では珍しくなった勇将という言葉がそのまま当てはまる人であると大絶賛です。
ホリスター将軍伝説
伝説1
朝鮮戦争の初期、大いなる決断力と統率力を発揮して苦境に追い込まれた連合軍をたちまち立ち直らせた。
伝説2
真珠をちりばめたコルト45口径の銃を愛用し、「鋼鉄の騎士」と呼ばれる
伝説3
連隊の先頭になって突進し、弾が切れたにもかかわらず、ピストルを振りかざして敵陣深く突入
敵の司令官およびその幕僚を一挙に捕虜にするという武勲
伝説4
前線を視察中、地雷で重症、そのため退役
伝説5
退役20周年に母校のメモリアルホールに名誉の殿堂入り
このホリスター将軍の数々の伝説を観て、コロンボは何か気になることがあるようです。
釣りに行くと言って、バートのお店を立ち去ります。
一方で同じくこのニュースを観ていたヘレンと母親のウォルターズ夫人。
ウォルターズ夫人は、ホリスター将軍のような立派な人物が、人を撃つはずもないので、ヘレンの見間違いではないかと、彼女を責めます。
ヘレンは、ここでも確かに見たと言い張ります。
あんたの確かは当てにならない、トムという財産のない男と結婚して浮気された離婚されたことを、夫人は責めるのです。
ダットン大佐の遺体
将軍の軍人語録-4 深酒と朝寝は軍人にとって最大の敵
祝賀会の後、明け方4時にホリスター将軍は幕僚に送られ帰宅しました。
幕僚たちがさらにお酒を誘う中、
深酒と朝寝は軍人にとって最大の敵だぞ。
と、家路につきます。
そして隠し扉に隠していたダットン大佐の遺体を、ヨットで運び海へ捨てるのです。
コロンボの捜査開始
アタシの兄 1 釣り師
明け方暗いうちに、ダットン大佐の遺体をヨットで海に捨てたホリスター将軍。
ホリスター将軍のヨットが戻ることを、ヨット乗り場で釣りをしながらコロンボが待ち受けていました。
仕事と趣味の両立だと、コロンボは兄のことを口にします。
兄はいっぱしの釣り師なんですが、彼に言わせると釣りの秘訣は早起き。
誰も彼もおきださないうちに浜へ出て糸を垂れるのが一番なんだそうですよ。
獲物は寝ぼけてボヤーンとしてるし。
今回は、「うちのカミさん…。」が一度もなかった代わりに、家族の話としてコロンボのお兄さんが登場しましたね。
確かかは分かりませんが、英語音声にすると「ジョージ」って聞こえます。
ジョージというお兄さんがいるのでしょうか。
そしてこの「獲物は寝ぼけてボヤーンとしてるし。」という訳し方。
「ボヤーン」という訳、これもまた秀逸で、コロンボのキャラクターに合ってますね。
もう、コロンボ専門の翻訳者かと思っちゃう。
コロンボの疑惑-1 ホリスター将軍の釣りの時間
コロンボは、他の釣り船は今から出ていくのに、ホリスター将軍の船がもう帰還したことを、不思議に思い尋ねるのです。
将軍の軍人語録-5 人の意表をつく
コロンボの疑問にホリスター将軍は
釣りも戦闘も同じことだ。
人の意表をつかんと大戦果を上げることはできん。
と答えます。
そういえば閣下
戦略にかけても敵から一目置かれてたとか。
アタシもあやかりたいですな。
閣下みたいに戦術にたけていて敵の動きをつかむ洞察力を備えていれば犯人の逮捕はもちろん犯罪を事前に防ぐ事もできるんじゃないですか。
と、コロンボは歯の浮くようなことを言ってます。
戦略にたけていて敵の動きをつかむ洞察力を備えているなんて、これはホリスター将軍ではなく、コロンボのことですよね。
その証拠に、立ち去ろうとするホリスター将軍をコロンボはひきとめます。
刑事なんて因果な商売しているとつまらないことが気になりましてね。
全く嫌な役回りですよ。
これ、コロンボが肝心なことをズバリ聞くときの上等手段ですよね。
刑事なのでつまらないことが気になると言い訳して、犯人からしたらヒヤリとすることを、ズケズケ聞きます。
そして「嫌な役回り」という表現に似た言い回しも、コロンボは頻繁に口にします。
要は、「刑事で人を疑うことが仕事だからいやいやつまらないことを聞くんだけど、自分も本当はつらいんだから、許してちょんまげ。」というコロンボのポーズです。
本当はコロンボはそう思っておらず、とりあえず下手に出ておけば、間違いないだろうぐらい思ってますよ。
これがまさにコロンボの戦略にたけていて、敵の動きをつかむ洞察力ですね。
コロンボの疑惑-2 愛用コルト45口径の銃の行方
コロンボはニュースで観たホリスター将軍のトレードマークである真珠を散りばめたコルト45口径の銃が、将軍邸になかったことに疑問を持ちます。
ホリスター将軍は、野戦病院に入っていたときに、何者かが持ち出したようで紛失してしまったと説明します。
そして複製を作ってメモリアルホールの陳列室に飾ってあると言うのです。
この説明を聞いた後のコロンボの表情が何とも言えず、不思議なんです。
画像の通り、首をかしげているようでもあるし、微笑んでいるようにも見えます。
とにかく将軍の説明にコロンボは何か感じることがあったようです。
さあ、コロンボはホリスター将軍が何かを隠していることを確信しつつあります。
物語がどう展開してゆくか、次回に続きます。
続く