キイさんという男性社員に、突然明後日する宴会の連絡を、10ぐらいの取引先にするように言いつけられたプチ初老ころん。
しょーがないから電話をかけていると、ヒトラー所長に電話の詳細を確認されて、やや不信に思う。
そして…。
その翌日のことです。
その日も皆外出していて、なぜかわたしと性悪係長二人きりになってしまったのです…。
すると性悪係長が
「昨日、反省会の案内の電話を、取引先にかけてたんだって?」
わたしに問い詰めてきた。
???
性悪にしては静かな喋り方だけど、空気の読めないわたしでも分かるぐらい、どうもこれは、怒っておる。
わたしは、何かヤバい雰囲気…とびびりながらも、
わたしは悪くない!キイさんに頼まれたことをしただけや!と
「え?キイさんに頼まれたんで…。」
と答えた。
すると性悪は
「だからキイにも怒ったよ!
ニ度とそんなこと頼むなってな。
だいたいアイツ携帯持ってるんやから、携帯で取引先に連絡すればいいものを…。」
と、やはり怒っていた。
静か~な怒り方だけに、本気の怒り方ですよ。
で、
「仕事中に大声で、宴会の案内の電話をかけるなんて、節操がないよね!」
ってさらに怒られた。
???
わたしは何度か性悪に注意されたことはあるし、怒られたこともある。
しかし、これが最大級に、一番激しく怒られた出来事であった。
節操がない?
わたし、そこまで言われなきゃならないことした?
この発言は、明らかにパワハラのセクハラの人権侵害では?
分からん!
宴会の電話を仕事中にかけたとはいえ、一応社内イベントだし、社員のキイさんに頼まれたんだから、断れないよね。
何でこんなに怒られなきゃいけないんだ。
わたしは悪くない!
理不尽な!
という顔をわたしはしてたんだと思う。
今となっては記憶があいまいだが、多分わたしは一言も性悪に謝らなかったと思う。
わたしは感情が顔に出てると指摘されることがある。
「納得できない顔をしてた。」とか
「何か言いたそうな顔をしてた。」とか
「めっちゃ怖い顔になってんで。」とかさ。
何でこんなに怒られなきゃいけないんだ、と思った謎だが今になって、やっとこのとき性悪が激怒していた理由が分かった。
多分、性悪はその宴会にヒトラー所長を誘ってないのに、ヒトラーに宴会をすることがバレたから怒ってたんだと思う。
要はわたしのしたことは、ヒトラーを誘っていない性悪の顔をつぶしたこと。
同時に、性悪に宴会に誘われていないヒトラーの顔をつぶしたこと。
二人の上司の顔を、同時につぶしたことになるね。
やるね!ころん!
そんなおまいらの一身上の都合なんて知るか!
そんなしょーもない、体育会系の上下関係なんて知るか!
こっちは、急に後二日後に控えた宴会の案内してくれって頼まれたから、いやいやながら必死にやったのによー。
これは所長に隠れて取引先と宴会をすることがばれてしまった八つ当たりでは?
ムッカつくわー。
結局その後、性悪はヒトラーのことを、宴会に誘ったけど来なかったそうです。
ムカつくから、昼休みに内勤女子にこのことをグチる。
当時は何であそこまで怒られたかが分からないでグチっていた。
すると皆「キイさんに頼まれたことをしただけなのにねー。」とわたしに同情的だった。
何でそんなことで怒られるの?理不尽だねって反応だった。
「でもころんさんの電話、面白かったから私も聞きいってしまったわ。」
と国立大学卒業の専門的資格取得者の才媛さんから言われた。
「勉強会は乗気じゃなかったのに、『宴会があるのなら、そういうことなら行きます。』という取引先さんがいて、面白かったねー。」
などと、言われました。
性悪に指摘された通り、確かにわたしの電話は、内容が聞いている人に筒抜けだったようです。
キャバ嬢の同伴出勤のお誘いなみの、お願い電話がオフィス中に筒抜けでした。
ころんの営業トークは、隠しても隠し切れずにキラリと光を放ってるんだろうね~。
さらに才媛さんは
「ころんさんは、絶対営業もできるよね!」
と言ってくれました。
営業ができるんじゃなくて、かつて営業をやってたんやがな。
だから正確に言うと、営業ができるのではなく、できる経験が身についているってことですな。
だからまあ、できると言えばできますわな。
でもわたしは半分謙遜しながら
「そうですか~。」と答えた。
才媛さんが褒めてくれたのは、わたしが取引先に資料の提出のお願い電話をかけているときのこと。
わたしがきちんと筋道を立てて、事情をこんこんと説明しているのが、営業向きだって言ってた。
こちらの言い分をきちんと伝えるというのは、実はなかなかできることじゃないんだってさ。
まあ、わたしは今までも、話に説得力があるとか言われたことはありますわな。
当たり前にしてきたことで、すっかり身についていることなので、自分が特別できる人間とは思わない。
しかし世の中には、わたしができて当たり前と思っていることができない人もいる。
逆に世の中の人が当たり前にできていることが、わたしにはできなこともある。
それって結婚のこと?
そのようなことで、なかなか資料を提出してくれない取引先にわたしは、
「業務が終わっているのに、完了の書類を提出していただけないのは、仕事が終わってないのと同じではないでしょうか。怠慢ではないでしょうか。」
とか
「完了資料が未提出のままだと、何かトラブルがあったときに、お客様にご迷惑をかけることになりますよね。」
などと言って、追い詰めて提出をうながしていた。
まるで借金の取り立てやな。
そしてこの、取引先に電話して必要な書類を提出するように粘り強く交渉する能力、は才媛さんと理子さんと、後もう一人別の女性からもたいへんお褒めをいただいたのです。
別に自慢しているわけでなく、後から、またこのエピソードが出てくるので、印象づけるように、しつこく書きました。
理子さんなんかは、雑談としてだが何度か性悪に
「ころんさんって、電話で取引先に書類を提出してもらうよう交渉する能力すごいですよねー。助かりますよねー。私にはできませんわー。」
という話をしてたという。
性悪も
「ほんまに、ころんさんはすごいわー。」
って言ってたっていうんだよ。
あの性悪だけは、ホンマに性悪で、本心の分からん気味の悪い男やで。
しねしねバーカ。