5年近くも勤めたアール企業を、たったの引継ぎ期間2週間で退職したプチ初老ころん。
これは、まだ退職が決まる数か月前のお話である。
ワンマン常務に大量の書類をシュレッダーにかけるように依頼された。
で、シュレッダーかけていると、メール文が印刷された書類が目に飛び込んできた。
何気なく読んでみると…。
兵庫の営業所で働くある女性事務員から、所長のパワーハラスメントを訴える内容だった。
見てはいけない見てはいけないと思いつつ、こんな面白いこと、見ずにすませるわたしではない。
そのパワハラを訴えるメールを送った女性を、兵庫の女性ということで、ヒョウコさんと名付けよう。
年はわたしより少し上だったので、当時40代だったと思う。
詳しい年齢は覚えてないんだけど、ロスジェネ世代ではなく、バブル世代に近いんじゃないかな。
彼女もまた、シガさんと同じく、共産主義大改革でパートから正社員になったクチだった。
確かバツイチのシンママだったと記憶している。
わたしはヒョウコさんの電話の印象が悪かったので、彼女のことをあまり好きではなかった。
ヒョウコさんがパワハラを訴えた男性は、わたしより年下の三十代半ばの若い所長。
なので若井所長と名付けよう。
若井所長は、ヒョウコさんとは逆に、電話の印象はすごくよかった。
割と好きな声。
仕事もすごくていねい。
が、逆に言うと神経質ってことだよね。
会議か何かで若井所長が京都に来たとき、わたしに用事があったらしく、席まで近づいてきた。
たまたまそのとき、Yahooをパソコン画面に開いていたわたしに、
「今、Yahoo開いてましたね。」
と、わざわざ指摘してきた。
他の営業所の事務員が、Yahoo見てたからって、いちいち注意する?
Yahooぐらい見るだろうよ。
だって、Yahooの天気予報を見て、業務計画立てないといけないもん。
今日は晴れだから、自転車で証明書類取りに行けるわっとかね。
今日行っとかないと、しばらく雨だわとかね。
そのように、いちいち細かいうるさい所長だったようです。
ちなみに言うまでもなく、乞食部長と仲が悪かった。
いつも若井所長は、いつも乞食部長にプンプン怒ってた。
乞食を好きなヤツなんてアール企業にはいないって、わたし書くの一体何度めなんだろうね。
ヒョウコさんがパワハラを密告するメールを送った相手は、若井所長の上司である人好部長と、さらにその上司であるワンマン常務、さらに人事のナオミ課長の三人だったと記憶している。
そのメールを読んで、しょっぱなからわたしがあきれたことには、次のように綴られていたからだ。
……………
長文なので、時間のあるときに読んでください。
以前から、若井所長のパワハラに悩んでいて、他に仕事を探したのですが、見つからないのでアール会社を続けることにします。
……………
ねえ、他に仕事探していたけど見つからないとか、言う必要ある?
これってアール企業にたいしても失礼じゃない?
転職を考えるほと、追い詰められている可哀想なアテクシを訴えたいわけ?
何だかアマタが可哀想な女だなーと、わたしはそのメールをこっそり読み進める。
で、具体的なパワハラの内容が続かれていた。
ヒョウコさんは、基本自転車通勤をしている。
ある日、電車かバスか忘れたけど、公共機関を使って通勤をした。
そしてその交通費を、若井所長に請求したところ、自分が早く帰りたいからと勝手に公共機関を使って、後だしで請求するのはおかしいだろうと注意を受けたそうだ。
で、ヒョウコさんが、「じゃあ、どうすればいいんですか?」と言い返したところ、
「事前に申請してほしい。」とのこと。
ねぇ、これってパワハラ?
若井所長の言ってることが、いたって正論じゃない?
だってさー、通勤方法って事前に申請して、定期代とか決まるやん。
自転車通勤でも、確かアール企業は最低限交通費という形で、多少の金額が支給されていたはず。
さらに、勝手にその申請外の通勤方法に変えたら、交通費の二重取りやんね。
しかも勝手に交通経路変えると、何か事故などが起きたときに、労災の対象外になるんとちゃうの?
わたしも詳しくないから、分からないけどさー。
ヒョウコさん、たいがいイタイ女だな、若井所長とモメるはずやで、と思いつつメールを読み進める。
次のパワハラ事例については、意味がよく分からなかったんだけど、乙女課長に聞いたところ、多分以下のような出来事だと思う。
兵庫営業所は、家賃の支払い処理が必要だった。
それを本来は所長である若井さんがやるべきである。
なのにそれを、ヒョウコさんが家賃支払いをさせられそうになって、断ると、とても不機嫌な顔をされた、とかそういう内容。
よく分からないが、支払処理なんてそんな難しい仕事でもあるまいし、どっちがやってもいーやんなー。
くだらんことでモメとるなー。
くららんことでモメるのはいいとして、これがパワハラって…。
どんだけパワハラの定義、低いんだろう。
パワハラの定義ぐらい調べてから、メールを送ればいいのにね!
やっぱ滋賀県のシガさんといいヒョウコさんといい、パートから社員になった人ってロクなヤツいないね!
とはいえ、わたしは、イケないものを見てしまった、誰にも喋ってはいけないなと、そっとそのメールが印刷された用紙を、シュレッダーにかけた。
で、やっぱりどうしても我慢できなくなって、1時間しかもたなかった。
よって一時間後、紙袋さんにベラベラしゃべった。
それから、乙女課長、アトム部長、上村部長にも喋った。
ナガイ部長にはお酒の席で喋った。
ナガイ部長は、少し兵庫営業所にもいたので、「そういうこと言いそうなコやわ~。」って言ってた。
ほかにもいろんな人にベラベラ言いふらした。
ふん。
わたしに大切な書類の廃棄を頼むワンマン常務が悪い。
わたしは悪くない!
で、これはわたしが退職してからの話なんだけど、アール会社のお花見に呼ばれた。
そのときに、ヒョウコさんが来ていた。
そのお花見の後、ヒョウコさんと同じ職場で働く男性と帰り道が同じだった。
どうせ退職した会社の同僚で、もう会うことがあるかも分からない。
だからわたしは調子に乗って、その男性にメールを盗み見てしまったことを、またしてもベラベラ喋った。
その男性は苦笑いだった。
で、若井所長とヒョウコさんは一時期とても仲が悪かったんだけど、最近は和解したみたいと言っていた。
そもそもヒョウコさんが、パワハラを相談したワンマン常務だが、ヤツこそはパワハラ隊長。
今までパワハラで何人破壊してきたことか。
それはまた次回書くとして、ワンマン常務の中で、ヒョウコさんの身に怒った程度のことが、パワハラと認定されるはずもない。
そして若井所長は、ワンマン常務にも人好部長にも信頼を置かれた所長であった。
つまり二人とも絶対、若井所長の味方をするってわけ。
さて、わたしの退職後、人員募集をかけたが、なかなか次の人が決まらなかったらしい。
やっと決まったと思ったら、2.3日出社しただけで、その後フェイドアウトしたらしいよ。
なぜ次の人が決まらなかったかというと、ころんの呪いかな。
ウソウソ、一番の理由は給料の安さだと思いマンモス。
わたしだって、ハローワークのおっちゃんに勧められなかったら、こんな給料安いところ、絶対応募してなかったし。
で、あまりにわたしの後が決まらなくて、結局、兵庫からヒョウコさんを転勤させたみたい。
若井所長のパワハラを訴えたものの、飛ばされたのはヒョウコさんだったという結果でした。
ま、契約社員がしていた仕事を、正社員が請け負ってくれるってことで、ナガイ部長や紙袋さんにとってはよかったんでねーの。
ヒョウコさんも、温厚でおとなしいナガイ部長が上司だし、若宮所長の下よりも働きやすいんでねーの。
知らんけど。