結婚相談所のお見合いで出会い、結婚を前提としたお付き合い中のプチ初老ころんとアラフィフ郵便局員のセーブタさん。
今夜は、出会って二か月、お見合いを入れて実に7回目のデート。
お互い好意を抱いた通常のカップルだったら一番楽しい時ではなかろうか。
なのにわたしたちときたら、なんだか不穏な雰囲気で幕を開けたのであった。
どういう流れでそんな話になったのか、お互いの大学の頃の話になった。
わたしは心理学が学びたかったので、そういう学科を選んだと話した。
わたしが心理学に興味を持ったのはいくつか理由がある。
最も大きな理由は、漫画家とか作家とか、人物を創作する仕事に興味があったから。
登場人物の心理を描写する上で、心理学が役立つかと思ったのだ。
しかし心理学はわたしが思っているような文学的な学問ではなく、もろ理系、つまりほとんど統計学である。
人間の心理傾向はデータによる裏付けがないと、ただの空論なのである。
心理学とは数字の世界、データ、つまり統計学である、というのが、わたしが4年かけて大学で学んだことであった。
で、まあ、わたしがセーブタさんに、「心理学がしたかったんです。」と伝えたら、彼は
「心理学って理系の学問なんですよね。」というようなことを言ってきた。
で、わたしが
「そうですね。
わたしは文系の学問かと思って勉強したんですが、実際はもろ理系で、ちょっと思っていた学問と違いましたね。」
と言ったら、セーブタは
「結婚して専業主婦しても思っていたのと違うとなったらどうするんですか?」
とキツい調子で言い返してきたのである。
ハァアアァアァアァア!?
自分で言うのも何だが、わたしは相当口が立つ方だと思う。
なのにセーブタのこの言いがかりに関しては返す言葉が見つからなかった。
あまりにわたしの常識から説明できないようなことを突っ込んできたからである。
IQが20違うと、話がかみ合わなくて会話が苦痛と聞いたことがあるが、多分それ。
まずさー、わたしは心理学が当初思っていた学問と違ったと言いましたが、これは決してネガティブな意味ではない。
確かに多少のがっかりはあったものの、一つの新しい発見である。
だってさー、学問なんてそんなもんよね。
学んでみて初めてその学問の本質が分かるもんやん。
最初っからその学問の本質が分かっていれば、そもそも学ぶ必要もありゃしまへんで。
100歩譲ってわたしが心理学が思っていた学問と違うと思って、そこで投げ出したなら責められても仕方がない。
しかしわたしは、心理学が文系ではなく理系の学問ということを学んで、理系からのアプローチでちゃんと卒業論文も書いた。
そして卒業した。
感受性の豊かな10代から20代前半にどっぷり学んだこの学問は、わたしという人間を形成するのに大きな影響を与えているはずなのである。
それがいい影響か悪い影響かはわからないけどね。
女にしては理屈っぽくてかわいげがないのも、心理学を学んだから…、かもね!
それをさー、
当初理系を目指して浪人して、2年で挫折して文系で近代にすべりこんだ三浪のセーブタに、何で責められなきゃいけないんだ!
お前の三浪の方がよっぽど無駄だろうがよ!
って今思えば言ってやればよかったんだが、このときのわたしは、セーブタの言い分が、あまりにもすっとんきょうで、会話の文脈から外れた質問のようで、どう返したらいいか分からなかったのである。
このことを乙女課長にグチったら、
「18歳やそこらで自分が将来やりたいことなんて、わかるわけないやん。」と、わたしを慰めてくれたわ。
ですよね~!
むしろ大学行く前に完全に心理学とは何たるか、を理解していたら、そっちの方が恐ろしい高校生やで。
そんな優秀な高校生だったら、セーブタのように頭のハゲ上がって三浪もしているノーナシと、妥協に妥協を重ねて結婚しようとなんてしてないし!!
このハゲー!
違うだろ!
違うだろ!
違うだろー!!
とこのマヌケなハゲは、ころんに豊田真由子を降臨させたのであった。
続く