しかし!
20歳も年下の新入社員、吉高 由里子風清楚系あざと女子のゆりこさんも、グリーソンさん押しと人目もはばからず好意をアピールしているではないか!
神は絶対勝つことのできないこの恋のバトルを繰り広げろというのか。
やっぱかっこいいのかなぁ。
グリーソンさん。
営業だし確かにシュッとして細身。
顔は好みがあるが、わたしは大沢たかおに似ていると思う。
そんなある日のことです。
うっかりバブル姫と、後輩さんと、わたしの三人で和室えお昼を一緒に食べることになった。
そのときたまたまグリーソンさんの話になって、りょうさんが「グリーソンさんが 60 歳まで独身だったら結婚してあげる。」と繰り返す話になった。
そのことについては前回の記事で書いておる。
男性ファンを作りたくて必死な女がやりがちなウザい行動実例7つ
わたしはずっとりょうさんがグリーソンさんのことを好きだからそんな話を持ち出すのかなって思っていた。
でもね、りょうさんはグリーソンさんが自分のことを好きだと思ってるから、恋愛的有利に立っているアピールとしてそういう話をするんだって気がついた。
と、私が言うと
バブル姫と後輩さんは口をそろえて
「グリーソンさんは、りょうさんみたいな自己主張強いタイプは好みじゃない。」
当然グリーソンさんに想いを寄せるわたしとしては、彼がどんな女性が好みか気になるわけ。
そう聞いてみるとバブル姫は
何ていうかこう~、女らしいタイプや。
りょうさんも見た目は女らしいじゃないですか。
とさらに具体的に好みを教えてほしくて、わたしは掘り下げて聞いてみる。
バブル姫は要はグリーソンさんは、清楚でおとなしいタイプが好きであると説明した。
前の奥さんがそんなタイプだったらしい。
えぇ~。
そしたらわたし、ダメじゃん!
わたしは清楚でおとなしいというよりは、気が強くてうるさいイメージ。
よく言えば、元気で明るい。
まあ、りょうさんも元気で明るい…、というよりは、やかましいタイプだわな。
それと言葉使いがびっくりするほど下品。
グリーソンさんの好みの女性像が、わたしとかけ離れたタイプと聞いて、やっぱりこの恋、無理かも…、と弱気になっちゃうわたし。
バブル姫は、いかにも男性を知り尽くしたかのように男の女性の好みは生涯変わることはないなどと講釈をれる。
グリーソンさんの歴代彼女、知ってるんですか?
と聞いてみると、バブル姫はグリーソンさんの歴代彼女を
二人知ってる。
アタシとグッソー(バブル姫独特のグリーソンさんの呼び名)は 30年の仲や。
グッソーのことは何でも知ってる。
と知ったかぶり。
ほんまけぇ~と思ったが、肝心のグリーソンさんは実はバブル姫のことを嫌ってるのにね!
わたしに
バブル姫さんとはあんまりしゃべらないようにしてんねん。
って言ってたもの。
それでバブル姫が、グリーソンさんの女性の好みは何でも分かるって得意げに繰り返すもんだから、わたしはふと、ライバルというには圧倒的に差をつけられている恋敵の清楚系あざと女子のゆりこさんが浮かんだ。
グリーソンさんの好みは、新入社員のゆりこさんみたいなタイプですか?
と聞いてみたらバブル姫は
まさにあのこは、グッソーのど真ん中や。
と言うもんだから、
ところんの心がざわつき、ウツになるのも無理もない。
そしてバブル姫は
でもゆりこさんは、絶対にグッソーのものにはならへんけどな。
と、得意げにグリーソンさんを落とすようなことを言うのがムカついて
あらゆりこさん、グリーソンさんのことが好きだって言ってましたよ。
といったとたん、ゆりこさんがフラっと和室に入ってきたのである。
ねえ、ゆりこさん。
グリーソンさんと映画行きたいって言ってたものね。
とわたしがそのままゆりこさんに話かけると、ゆりこさんはくねくねしながら「はい。行きたいです。」と答えた。
バブル姫は、新しい世界を見たかのように
最近はおじさんブームってドラマでもやってるから、若いコにも需要があるのかな。
と、一応は感心してみせる。
わたしは本当は気が気でないくせに、大ショックを受けているくせに、涼しい顔をして何事もないように
そうねぇ。グリーソンさんだったらお金もあるからデートも全おごりだし、気を使ってくれるし、若い男の子とデートするより、案外楽しいかもしれないねぇ。
などと、思っていることとは全く違うことを、ゆりこさんに進めてみる。
余裕のあるフリをして壊れそうな心を守っているんだね。
ゆりこさんは、フフフと笑った。
ねぇ、グリーソンさん。
あなたどんないいことをしてこんな奇跡が巡ってきたの?
30 歳ぐらいで離婚して、その後女っけは一切なく。
そして 50 歳を超えて 30 歳近くも年下の、ストライクゾーンど真ん中の新入社員に想いを寄せられるなんて、今までの苦労がむくわれたね。
男冥利に尽きるってもんです。
今まで頑張ってくたこと、神様が見てくだすってたんですね。
おめでとう!
両想いおめでとう!
本当におめでとう!
そこにわたしの物語はない。
30人近くの男性とお見合いしても結婚できず、あっという間に子供が産めない年齢になった、ブスでババアでデブの誰も振り返らない女に、キラキラとした恋物語は落ちてこない。
若くてかわいいコが毎年入社する職場の中で、最年長の独身女がなぜ選ばれ愛されると思ったのか。
朽ちてゆく。
ただ朽ちてゆく。
恋と呼ぶにはあまりにおこがましい年おいた醜女の断末魔の執着は、誰に知られくこともなく、光が当たることもなく、ただ朽ちてゆく。
最初から何もなかったかのように。
最初から何もなかったのだ。
ありもしないことをあると思い込んでいただけなのだ。
何もないのだから、何も失うはずもない。
そう自分に言い聞かせれば、苦しいことなど、何もない。
みじめなことも何もない。
わたしの物語など、誰も振り返らないわたしの物語など、最初から存在しない。
存在しないものから、悲しみや苦しみが生まれるはずもない。
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