オフィスでのある日のお昼休みのことです。
社内イベントやら欠勤者やらで、わたしとバブル姫とS子さんと、三人で過ごさなければならない日があった。
そのこととは別に、時間をさかのぼって、前日の出来事から綴るとしよう。
わたしの務める子会社で、大きなパワーハラスメント事件が起こっていた。
その事件について、わたしはS子さんの見解を聞きたかったのである。
パワハラ事件は、わたしが帰宅した後にオフィスで起こったので、翌日に聞いた話。
材料課に、わたしより少し年下の30代後半のザイさんという女性がいる。
愛想のいい、面倒見の良い、心優しい女性です。
バブル姫の相手をしてあげるのは、ザイさんぐらいという、慈悲深い女性です。
その昔、京都に配属されてたった一か月で、心を病んだといって逃げ出していったアラカンのおっちゃんがいた。
ザイさんだけが、その変わり者の自称うつ病のおっさんの心を、すっかりとらえていたことが、わたしにはとても衝撃だった。
あんなわけのわからんおっさんの世話を焼いて、心をつかむなんて、ザイさんってどんな人?と思って、考えてみたところ、答えが出た。
「ザイさんって、他人の懐に入り込み過ぎてしまうんだね…。」
と、その答えを皆の前で披露したところ、みんなゲラゲラ笑っておった。
ザイさんも、膝を打った様子で、倒れこんでゲラゲラ笑っておった。
他人の世話を焼きすぎて、懐に入り込み過ぎて、ヘンなおっさんにつきまとわれてしまう、ザイさんってそんな人です。
だから介護士って呼ばれています。
そしていつものごとく、ザイさんがかいがいしくうだつの上がらない営業のおっさんどものお世話を焼いて、チョロチョロしていたときのことです。
ザイさんの上司である50代の男性部長より、
「売上をとってこれない営業の世話を焼く必要はない。
もっと売上をとってくる営業のフォローをしてあげて。」
という指示がくだった。
この指示は上長として、決して間違ってはいない指示である。
ザイさんは残業が多いという問題も抱えていた。
その残業を減らすためにも、怠け者で仕事のできないおっさんたちの世話を焼きすぎて残業をする必要はない、という部長のお考えがあっての指示なのです。
ところが困っている人をどうしてもほっておけないのがザイさん。
ついつい、うだつの上がらないおっさんどものお世話を焼いて走り回っていると、とうとう部長が怒り出したのです。
「何をちょろちょろしとんねん!!!」とな。
するとまじめな性格のザイさんが、自分の言い分を説明しようとしたところ、部長は
「そんなごちゃごちゃ言うんやったら、お前はもう何もせんでいい!
会社やめろ!!」
とまあ、激怒して、パワーハラスメントで訴えられたら負けちゃうようなことを、怒鳴り散らしたという。
で、ザイさんはかわいそうに泣きながら帰っていったと…。
翌日、わたしはザイさんから、部長に辞めろと言われたので、会社を辞めようと思うと相談された。
で、部長に、会社はやめますが、今か抱えている案件をきちんと終わらせたいので、いついつで退職します、とメールで伝えたらしい。
ザイさんは高度な専門資格を持っているので、転職先なんて腐るほどあるんです。
正直、その資格を持っている部下を退職に追い込んだら、部長の立場が危うくなるぐらいの資格です。
すると部長から
「辞めるなんて後ろ向きな考えは、周りの人に失礼です。
今あなたがやるべきことは、皆と一丸となって、この営業所を日本一にすることです。」
とメールで返事があったそう。
「自分で辞めろと言っておいて、周りに失礼っておかしいよなぁ?」
とわたしが感想を述べると
「そうやねん!言ってることが支離滅裂で、気持ち悪いねん!!」
とザイさんは、目に涙を浮かべながら言った。
で、わたしも
「これといって大きな失敗をしたわけでもないし、会社に大損害を与えたわけでもないのに、辞めろまで言うのは、ひどいパワハラですよね。」
とザイさんを慰めた。
このままでは、ザイさんが会社を辞めてしまうかもしれない。
ということで、ザイさんの先輩にあたるS子さんに何とかしてもらおうと、相談したかったのである。
続く
本日はあまり登場しなかったバブル姫の今日の衣装です。
本日も安定の、ワンピONワンピ。
真っ赤なワンピにカジュアルなチェックシャツ合わせて、メリハリのきいたバブルコーデに。