結婚相談所でお見合いして交際成立したセーブタさんと、お見合いから数えて7回目のデートの日となったこの日。
わたしはすでにパワハラ激しいP企業に籍はあったがもう勤務することはなく、有給消化中であった。
そしてこの日、新しい派遣先の面接日でもあった。
だから昼間に面接に行って、一度家に帰って着替えてから、夜、セーブタさんと飲みに行く約束をしていた。
わたしとセーブタさんはお互いの職場の中継地点で待ち合わせをしており、適当な飲み屋に入る。
早い段階で、セーブタさんはわたしに、
「僕と結婚するというイメージが湧いてきましたか。」
なんて聞いてきた。
なるわけないやろ!と内心思いながら、別にセーブタなんてどうでもよかったので、
「どーうでしょうかね~。」
となめた答えをくれてやった。
それから、今日の昼間は何をしていたかの話になった。
わたしがすでに有給消化中で働いていないことに、セーブタさんは驚いているようだった。
何度も説明してましたけどね。
今月で退職しますってね。
「え…。次の仕事、決まってるんですよね…。」
とセーブタが心配そうに聞いてきたので、わたしはイラッとして、
「前回会ったとき、わたし、何て説明した?」
とタメ口で言い返してやった。
わたしは怒るとタメ口になる。
そして酔っ払ても、タメ口になる。
今日は怒りとお酒の両コンボなので、タメ口になりやすい日である。
するとセーブタさんは、
「あ…、留学するとか言ってらっしゃいましたね…。」
と答えた。
わたしは、
「そうですね。
慌てて働くつもりはないってお伝えしましたよね。
また働くとまとまった休みがとりにくくなるし、今のうちに留学や旅行に行くのもいいかもしれないって説明しましたよね。」
と言ってやった。
実はついさっき、セーブタと落ち合ってお店に入ってすぐぐらいに派遣会社から電話がかかってきていた。
セーブタを待たせて電話をとったその内容は、本日面接した新しい企業の内定の知らせだった。
つまり次の仕事は決まりたてのほやほやの状態。
本来ならば結婚を前提とした付き合いをしているセーブタさんにこのことを伝えるべきであろう。
しかしわたしは、何度も無職になる可能性を説明していたのに、働いて当たり前というセーブタの態度にイラッとした。
だから何となく、さっき仕事が決まったばかりであることを打ち明けずにいた。
まだいつから働くかは決まってなかったしね。
そして無職であるわたしをセーブタが受け入れるのかどうか試してやったのだ。
どうせ専業主婦をすることは前回決まったんだし、慌てて働く必要なんてない。
無職であるわたしを受け入れられないなら、この男と結婚する価値はない。
するとセーブタは、わたしが留学を考えていると言ったことにたいして、文句をつけてきた。
「留学から帰ってきたら、現実が待ってますよ!」
と脅かすようなキツい言い方をしてきやがった。
これに黙っているわたしではない。
セーブタより10倍ぐらいキツい言い方で、というより嫌味たっぷりな言い方で
「現実って何ですか~?」
って聞いてやった。
無料ラインスタンプにある、こーんな顔して聞いてやったのさ。
するとセーブタは、わたしの厳しい言い方に怖れをなしたのか
「留学から帰ってきたら、僕と結婚するという現実です。」
とヘラヘラとしたごまかし笑いを浮かべながら答えた。
よくもこんな歯の浮くようなセリフが言えたもんだわ。
ハゲでデブでアラフィフ売れ残りのモテない男ナンバー1のくせにね!
普通の女なら、空気を読んでここで引くのだろう。
しかし奴隷としか思っていないセーブタが、おこがましくもわたしに意見しようとしたことに、イライラしていたので
「そういう風には聞こえませんでしたけどね!」
ってさらに嫌味度とキツさレベルをあげて言ってやった。
全くわたしという女は、どこまでも気が強くできてやがる。
そのようなことで、今夜のデートは何だか不穏な動きで始まったのです。
続く