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ロシアソチオリンピック旅行記3 頑張っている人を応援して自分も頑張った気でいるなよ、オラー!!

浅田真央

浅田真央の起こす奇跡を信じて
100万もかけて
ソチへ乗り込んだ
プチ初老ころん。

初老にもなって
10才以上も年下の
女の子に
こんなに入れあげるなんて
そして
100万も費やすなんで
イタイとお思いであろう。

だが
ころんなど
可愛い方だった。

ソチへ着いてみると
ホンモノの
浅田真央の追っかけに
遭遇することとなる。

フィギュアスケートには
公開練習というものがある。

無料だったり
有料だったり
詳しくは知らないのだが
わたしたちのツアーには
公開練習はついてなかったので
基本行くことができなかった。


ツワモノたちは事前に
闇ルートで入手した
公開練習チケットで
旅の疲れすら癒そうとせず
朝も早くから
会場に乗り込んでいったのである。

わたしは
せっかくロシアまで
来たんだから
オリンピック以外の
町の風景や
異国の情緒なども楽しみたいという
考えだったのだが
ホンモノたちは
浅田真央に向かって
突進するのみ。

その
ホンモノたちには
ホンモノたち仲間がいて
特に
高橋大輔の追っかけをしている
ホンモノの話がすごかった。

男子は
競技が終わった後
いったん日本に帰ったんだと思う。

高橋の追っかけは
高橋を日本で
出迎えるがために
一度日本に戻り
再び
エキシビジョンで
高橋を見るために
ソチ入り
などという
ハードスケジュールをこなす。

スケジュールもすごいが
時間とお金のコストもすごい。

いくら
元プチお嬢とはいえ
ころんには
そんなお金の使い方は
できまてん。

ツワモノたちは
オリンピックだけでなく
各試合を観戦するために
世界中
スケーターたちを
追いかけまわす。

よくもまあそんなに頻繁に
お仕事の休みがとれるなと
思わずお仕事聞いちゃった。

ある人は
専門職で
それなりの収入があるし
仕事辞めても
転職に困らない職種だった。

ある人は
詳しい内容は教えてくれず
ふつうのサラリーマンだが
一生ヒラ決定でしょうねと
答えてくれた。

わたしは
フィギュアスケートは
ほとんどテレビで
応援していたクチだった。

そんなわたしでも
浅田真央の演技前に
いっつも耳につく
男性の応援があった。

テレビ越しでも聞こえる
浅田の演技直前に
張り上げられる大きな男性の声。

「真央!
がんばれ!」

その声の主は
コイツだった。

いやいやいやいや…。

真央、がんばれやないやろ。

お前が仕事頑張って
出世しろやろ。

真央ちゃんは
絶対
お前の100倍は
頑張っとるぞ。

だから
ソチにいるんやろ。

わたしはなんだか急に
わたしの好きなあの人や
わたしの勤めている会社の男の人
わたしの腐れ縁のモト彼でさえも
この男と比べたら
みんな仕事頑張ってるんだなという
気になった。

そして
わたしは
並み居る
ツワモノたちを
目の当たりにして
自分の人生さえ
振り返らずには
いられなかったのです。

何か
違うな…。

この人たち
違うな。

わたしはずっと
浅田真央を
応援してきたけれども

頑張っている人を
応援して
自分も頑張ってる気に
なってちゃ
イカンな。

あの
類まれなる美しさと
強さと気高さを持つ
妖精のような少女が
その尋常でない努力によって
金と欲と虚栄心と自己顕示にまみれた
汚い世界を打ち砕く瞬間を
見届けにきた。

彼女の美しい演技を見ていると
わたしの心まで
浄化されてゆくようだった。

確かにキム・ヨナも
それなりにきれいですよ。

リプニツカヤも愛らしい。

だが人間を超えたもの
この世ではない
おとぎの国に存在するような
魔法のような美しさを
感じるのは
わたしにとって
浅田真央だけなのだ。

とはいえ
浅田真央が
金メダルをとったところで
わたしが
メダルをとったわけではない。

浅田真央が
頑張ったところで
わたしが頑張ったわけでもない。

浅田真央が
金メダルをとれたら
わたしもメダルを
とれたような気になっていた。

浅田真央が
成功したら
わたしも成功したような
気になっていた。

いつしか
浅田真央の夢が
わたしの夢にもなっていた。

そのために
浅田真央と一緒に
わたしもソチを目指した。

つーか
お金ためて
ツアーに応募しただけー。

ちょびっと
ロシア語も習った。

浅田真央が
どんなに素晴らしいことを
成し遂げたところで
それはわたしが
成し遂げたことではない。

浅田真央には
浅田真央の人生があるように
わたしには
わたしの人生がある。

浅田真央が
ソチで一つの
成功を得たと仮定して
わたしはこれからの人生で
何を成し遂げよう。

仮に
浅田真央が
念願の
金メダルを手にして
目的を果たしたとき
そしたら
わたしの目的や夢は
何になるんだろう。

わたしは
わたしの人生の中で
どんな小さなことでもいいから
何かを頑張って
成し遂げなければならない。

それが
あれだけのことを
成し遂げてきた
浅田真央を応援するものとして
浅田に恥じない
生き方というものではないのか。

浅田真央を応援するということは
わたしにとって
一つの現実逃避だったのではないか。

ソチへ行くということは
浅田真央悲願の金メダルを
見届けるということは
わたしの人生の中で
一つの小さなゴールだった。

でもそれは違うだろう。

ツワモノたちを見て
わたしは
ふとそんなことを
考え始めたのです。

だから
真央ちゃんの
ショートプログラムが
あんなことになっても
わたしは
冷静でいられたのかもしれない。

ちなみに
当時流れていた
住友生命の
拝啓 浅田真央様
ってCM
わたしは大嫌いだった。

浅田真央様
わたしは知っています
あなたががんばってきたことを…

みたいな内容だったけど
浅田真央が戦ってきたものは
そんな生易しいもんじゃないぞ、と。

韓国という
異常な国家一つから
敵にまわされてきたんだぞ、と。

国対個人やで?!

ルール全てが
審判全てが
浅田真央を
叩き潰そうと
手ぐすねを引いているんだぞ、と。

それを日本も
スケート連盟も
守るどころか
矢面に立たせただけ。

そんな事情も顧みず
分かった風なことを言う
あのCMが大嫌いだった。


あのCM
最後は
浅田真央ほどではないけど
わたしなりに頑張ってます、
みたいな
しょぼい
自己満足で締められていた。

わたしの中で
あのコは
とっくに人類を凌駕した
崇高な女神だった。

女神と人間を
比べるなんておこがましい。

同列のものとして
語ってほしくもない。

 

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