作品情報
刑事コロンボ:ピーター・フォーク(小池朝雄)
殺人犯:心臓外科医バリー・メイフィールド/レナード・ニモイ(天田俊明)
被害者:看護師シャロン・マーチン/アン・フランシス(翠準子)
心臓外科医:エドムンド・ハイデマン/ウィル・ギア(巖金四郎)
シャロンのルームメイト:マーシャ・ダルトン/ニタ・タルボット(佐原妙子)
演出:ハイ・アバーバック
脚本:シャール・ヘンドリックス
殺害の動機:共同開発中の新薬の名誉を独り占めするため
殺害計画の隠ぺいのため
殺害の動機と人物関係
関西弁をしゃべるおじいちゃん医師
物語は世界有数の心臓外科医エドムンド・ハイデマン博士が、救急車で自分の勤務する病院に緊急搬送されるところから始まります。
呼吸器を外そうとするハイデマン先生は最初のセリフとして
「大丈夫ちゅうに。」と関西弁をしゃべります。
てっきり関西人の設定かと思ったら、関西弁をしゃべったのはその一言だけでした。
コロンボもたまに関西弁をしゃべりますが、日本語吹き替えの翻訳者が関西出身なのでしょうかね…。
ハイデマン先生は心臓の手術を先延ばししていたため、とうとう胸部の激痛で救急車で運び込まれることになったのでした。
そんな状況のためハイデマン博士は、心臓手術をすぐに受ける覚悟を決めたようです。
この朗らかで気のいいおじいちゃん医師のハイデマン先生、なんともほのぼのと良い味を出しています。
今回の殺人犯はスタートレックの、Mr.スポック
ハイデマン医師との共同研究室で不満げに電報を読むバリー・メイフィールド医師。
今回のゲストスター、レナード・ニモイが演じる殺人犯ですね。
レナード・ニモイは、アメリカのSFテレビドラマシリーズ「スタートレック」に登場するバルカン人、Mr.スポック役の俳優として有名なのだそう。
人間ではないバルカン人という宇宙人役は、なかなかハマってますね。
このMr.スポックのキャラクターも冷静沈着な性格なようで、それを彷彿とさせるかのように、今作品の冷酷な殺人犯役もハマっています。
殺人計画の動機
バリー・メイフィールド医師が読んでいるのは、ドイツのブレークマンという研究者がハイデマン博士宛に送った電報でした。
ブレークマンはハイデマン博士が開発中の新薬の研究を共同で行うために、渡米する意思を電報で伝えています。
またその新薬には、あと一年は実験が必要であると考えています。
ハイデマン博士とメイフィールドは、移植の拒絶反応をふせぐ新薬の開発に成功しつつあります。
メイフィールドは自分の名声のため、一刻も早くその新薬を発表したいのですが、ハイデマン博士は慎重になっています。
また新たにブレークマンという共同研究者が増えると、メイフィールドの影が薄くなってしまいます。
つまりメイフィールドにとって、新薬開発のお手柄のためにハイデマン博士が邪魔になってきたのです。
そしてこれから始まるハイデマン博士の心臓手術の主治医となるメイフィールド。
彼にとってハイデマン博士を葬る絶好のチャンスですね。
しかしこれに気が付いた看護師がいます。
被害者役は「死者の身代金」にも登場したアン・フランシス
※画像は「死の方程式/ SHORT FUSE」の1シーン
ハイデマン博士を慕う看護師シャロン・マーチンは、野心家のメイフィールドを嫌っています。
そしてメイフィールドが、ハイデマン博士宛の電報をこっそり読んでいたことに気がつきました。
看護師シャロンを演じるアン・フランシスは、コロンボ第8話「死の方程式/ SHORT FUSE」にも登場します。
口元のホクロがセクシーで印象的な女優さんです。
「死の方程式」では男に利用される、エロ度高めだけどちょっとおバカっぽいステレオタイプな金髪美女役がとても合っていました。
ですが意外なことに、今回の正義感が強くて優秀な看護師役もとてもよく似合っています。
優秀な看護師シャロンは、メイフィールドのあやしい動きをハイデマン博士に進言するのですが、一蹴されてしまいます。
ハイデマン博士はメイフィールドの医者としての能力をとても買っています。
メイフィールドがハイデマン博士に何かするのではないかと、シャロンは手術中も気が気ではありません。
ですがシャロンの心配をよそに、手術は成功したかのように思えました。
すりかえられた糸
ハイデマン博士の心臓手術が無事に終わり、メイフィールドを疑ったのは思い過ごしだったとほっとする看護師シャロン。
しかし勘の鋭いシャロンは手術台の下に落ちていた黒い糸に、違和感を覚えます。
まあこの糸がネタバレタイトルの「溶ける糸」なんでしょうけど、シャロンが手術用に用意した糸とは違う性質のものでした。
シャロンが糸の秘密に気がついたことを察したメイフィールドは、シャロンに近づきます。
シャロンはメイフィールドに、糸がすりかえられたことを突き付けます。
そして、ハイデマン博士が亡くなれば新薬の研究がメイフィールドの功績にできることを口にします。
さらにハイデマン博士が数日後に亡くなる仕掛けがあることを示唆するのです。
「君に嫌われていると知っていたがこれほどとは思ってなかったよ。
それなら糸を調べさせたらいいだろう。」
と穏やかな口調ですっとぼけるメイフィールド。
シャロンはその言葉通りに、どこかに電話して糸を調べさせるようで、翌日会う約束を取り付けました。
その予定を「マックと8時に会う」とシャロンはメモします。
そして帰宅しようと、駐車場へ向かいます。
そこへ待ち受けていたメイフィールドに、シャロンは鉄パイプで殴られ、殺されてしまいました。
つまり何もかもシャロンの予測通りだったということになりますね。
メイフィールドは、シャロンの鍵束と、彼女のバッグからすり替えた糸を奪いました。
それにしてもシャロンは、「死の方程式」では男にだまされ、今回は男に殺され、全くツイてない人生ですね。
物語約15分コロンボ登場
うちのカミさん-1 具合がよくない
物語開始約15分でコロンボが、シャロンの殺害された駐車場に登場です。
コロンボは具合が悪そうでいつも以上に頭がボサボサ。

どっかにコーヒーない?
と頭をさましたいのか、部下にコーヒーを頼んでいます。
「知りませんな。」と部下にあっさり断られるコロンボですが、「お疲れのようですな。」と心配されています。

ああ…。そうなんだよ。
カミさんの具合がよくなくって…
胃をどうかしたらしいよ。
と、一度目の「うちのカミさん」登場ですね。
カミさんの具合が悪いためコロンボは徹夜してもうろうとしているようです。

コーヒーないんだね?
と、しつこくコーヒーをほしがっていますね。
そしてコロンボは徹夜で朝食にもありつけなかったのか、ポケットからゆでたまごを取り出しました。
そしてあろうことか何と被害者のシャロンの車で、トントントンと卵の殻を割ってむき始めたのです。
その殻をそこらへんに落とすものですから、鑑識に「現場を汚さないでください。」と注意を受けてます。
コロンボは本当に何やってんだか。
シャロンの自宅を荒らすメイフィールド
シャロン殺害後の翌朝、メイフィールドは彼女から盗んだ鍵を使って家に侵入します。
シャロンのルームメイトであるマーシャ・ダルトンが出かけるのを見計らって、家を荒らします。
何かを徹底的に探ったように偽装し、モルヒネの薬瓶を取り出しました。
モルヒネは痛み止めや麻酔の補助薬として使われますが、麻薬にもなります。
その頃、調子の悪いコロンボは、オレンジジュースの差し入れを受けますが

コーヒーない?
と、どこまでもコーヒーにご執心です。
ハンクという警官が凶器らしい鉄パイプを持ってきて、指紋はないとコロンボに報告します。
コロンボはハンクに凶器を

ちゃんと持っててくれない?
と言って、しっかりと持たせ、何とそれでゆでたまごを割ったのです。
被害者の車でたまごを割るわ、殺された凶器でたまごを割るわ、コロンボって本当におちゃめですね。
コロンボの疑惑-1 冷静過ぎる医者
シャロンの自宅を荒らし終えたメイフィールドは、病院に出勤します。
そしてシャロン殺害のニュースを電話で受けるメイフィールドは、動揺するふりをしながらも、時計の時間をなおしています。
「犯人は分かったのかい?」と電話の相手アレックスに聞くメイフィールドに

まだ分からんのですよ。
と、部屋を訪ねたコロンボが返事をします。
相変わらず徹夜で眠そうなコロンボは

何しろ病院てのは迷路みたいで迷子になっちまった。
西野別館とか東の新館とか…。
とクドクド言い訳して、トロいふりをしているのか、本当にトロいのか…。
要件を聞くメイフィールドに

ひどいこってす。
あんな若いご婦人がねぇ。
と、「ひどいこってす」、「こってす」て、方言なのでしょうかね。
コロンボにとてもマッチした言い回しです。
メイフィールドはコロンボに「物取りですか?」とシャロンが殺害された理由を尋ねます。
物取りの仕業に誘導したいようにも思えますね。
コロンボはまだ物取りとも何とも言えないので参考になる話を探していると答えます。

どうもさえないな。
コーヒーさえありゃねえ。
と、4回目のコーヒーおねだりですよ。
シャロンは自分よりハイデマン博士と親しかったというメイフィールド。
手術したばかりのハイデマン博士をチェックするために、立ち去ろうとします。

先生は名医なんでしょうね。
と、ほのめかし発言をするコロンボ。
コロンボは、さきほどシャロンの死を電話で知らされたメイフィールドが、興奮しながらも時計を直していた冷静さをほめたたえます。

並みの人間ならあんな場合おろおろするばかりで何もできやしませんよ。
時計の針を直すなんざ…。
はいここですね。
すでにコロンボはメイフィールドがシャロンを殺したことを疑っています。
そして自分が疑っていることを、メイフィールドにも暗に伝えてますね。
シリーズでは、コロンボが会ったとたんに犯人を見抜くパターンが何作品かあります。
するとコロンボと殺人犯との心理戦や頭脳戦、駆け引きの時間がよりたっぷりと楽しめるわけですね。
メイフィールドは時計を直ししていたことを、反射的な行為だったのか何も覚えていないと言い訳します。
そして立ち去ろうとするメイフィールドにコロンボは

この階にコーヒー飲むとこありますか。
と、5回目のコーヒー発言ですね。
これが日本だったら、コーヒーなんてそこらへんに自動販売機があって購入できるのにね。
ちなみに自動販売機があるのは、日本が平和で安全な国である証ですよ。
海外ではすぐ壊されてお金が盗まれるので、自動販売機なんて置くことができません。
ハイデマン博士の様子を見に行くメイフィールドをさらに追いかけてコロンボは、気分が悪いことを相談します。

病院に来るといつもこう…。
何か不安になってですね。
と言うコロンボにメイフィールドは
「確実な治療法が扶突だけありますね。できる限り病院に近寄らんこと。」と言い放ちます。
これ、コロンボを追い払うために言ったのでしょうかね…。

はい…。なるべくそうします。
と、コロンボは返事するしかありませんね。
コロンボが凄腕刑事だと見抜いた殺人犯
さて、ハイデマン博士の診察をするメイフィールド。
シャロンの死を聞いて、ハイデマン博士はたいそうショックを受けています。
犯人は捕まったのかと聞くハイデマンに、メイフィールドは「いえ」と答えて、コロンボという担当の刑事が来ていることを伝えます。
やり手の刑事で首尾よく犯人を挙げるとすればあのコロンボさんでしょうな、と語るメイフィールド。
メイフィールドもすでにコロンボの有能さを見抜いていますね。
最初はそのとぼけた風貌から見下されることが多いコロンボの能力を、いち早く気付いたこのシーンは好きですね。
さあ、いよいよお互いを認めた二人の天才の駆け引きが始まります。
コロンボの捜査開始
シャロンのアパートにあったモルヒネ
コロンボはシャロンのアパートで、彼女のルームメートのマーシャ・ダルトンに話を聞きます。
マーシャが語るには二人は親友で
自分の内部(エゴ)を大切にする指向?
上流階級に憧れて整形外科医で働く
でも独身男性との出会いがない
自分の外部(他人)を大切にする指向?
他人の願望によって高い人間性で全力で献身して看護師の職務を全う
天使のような人
という違いもあったそうです。
このマーシャというキャラクター、ちょっとミーハーでおしゃべりでおバカっぽいんだけど情にもろい良いキャラですね。
恐らく婚活中で、素敵な独身男性を探しているのもちょっとした伏線です。
しかしコロンボはマーシャの話に少々食傷気味で、

マーシャさん、あなたのことじゃなくてシャロンさんの事を聞きたいんだがね。
なんて彼女の話を遮ってます。
するどシャロンとマーシャのアパートを捜索中の警官が、バスルームの流しの下に隠された二本のモルヒネの薬瓶を見つけ出しました。
メイフィールドが持ちこんだ薬瓶ですね。
そのモルヒネの瓶からは、指紋は出ませんでした。
ひとつふたつ-1 うかがいたい
コロンボは愛車「プジョー403」に乗って、ホームパーティー中のメルフィールドの自宅を訪ねます。
高台にある見晴らしの良いプールつきの立派なおうちです。
華やかに着飾った人々の集まりに、コロンボは場違いだと気がついたのか、自分の乱れた髪や爪を気にしてますね。
しかしメイドにオードブルを勧められて、嬉しそう。
ビュッフェを取り分けているところに、コロンボに気がついたメイフィールドから声をかけられます。
「証拠集めですか?儀礼的訪問ですか?」とね。
コロンボはやれ徹夜だの、やれ朝飯を食いはぐれただの、やれ昼飯も飛ばしただの、やれこの分じゃ夜も遅くなりそうだの、など、クドクドと自分の事情を語ります。
食事を食いっぱぐれたというコロンボに、メイフィールドはハマグリのお料理を勧めてくれます。
それにしてもコロンボって殺人容疑者をしつこく質問攻めにするくせに、相手の質問にはまともに答えませんよね。
それも作戦なのか、天然なのか…。
再びメイフィールドが「なるほどご苦労ですな。ここへのご用は?」と再度用件を聞いてやっと

実は一つ二つ伺いたかったもんですから。
いろいろありまして…。
と、コロンボの定番口癖「ひとつ」が出ましたね。
コロンボとメイフィールドは、庭の見晴らしのよいテーブルに場所を移して、話をすることにしました。
コロンボの疑惑-2 マックという男性
コロンボはメイフィールドに、シャロンが麻薬(モルヒネ)を手に入れることができたかと聞きます。
メイフィールドは、モルヒネはシャロンの出入りする研究室に置いてあるので、自由にはできたのではないかと答えます。
コロンボは、シャロンのアパートのバスルームの流しの下から、モルヒネが見つかったことをメイフィールドに話します。
そしてシャロンのアパートが荒らされていたのは、誰かがこの麻薬を探したからだと予想します。
メイフィールドは、職務に忠実で献身的な看護師だったシャロンが、麻薬に関係していたことに否定的です。

いやごもっともです。アタシだってギョッとしたぐらいなんです。
とうなずくコロンボ。
コロンボがギョッとすることなんて、あるんですね。
神出鬼没に現れて、ギョッとさせる方かと思ってました。
コロンボは、研究室の電話の横にあったシャロンが書いた「マックと8時に会う」と書かれたメモをメイフィールドに見せます。
そして今朝の8時にマックという男性と会う約束があったらしいので、この男性に記憶はないかとメイフィールドに聞くのでした。
記憶にないというメイフィールドは、このマックという男性が麻薬中毒患者なのかと、コロンボに尋ねます。

それは分りません。
というコロンボに、メイフィールドは、ルームメイトのマーシャが何か言ってなかったかと、うながします。

いやマーシャは全然駄目でした。
ねえ先生…。胃の薬ありませんかね?
とコロンボはすきっ腹にごちそうをかき込んだものですから、胃の具合が悪くなったようですよ。
コロンボの疑惑-3 モルヒネに指紋がない
メイフィールドはコロンボに胃薬をあげただけでなく、親切にも処方箋まで書いてくれました。
胃の具合がおさまらず、思わずゲップして「どうも失礼。」と謝るコロンボ。

刑事ってのは因果な商売でしてね。
胃が変になるっていうのもこの…事件がつっかえてるからで。
とまあ、お得意のほのめかしですね。

どうにも納得いかないのが指紋の一件なんだ。
コロンボは、荒らされたシャロンのアパートにも凶器にも、手袋の跡らしきものはあるものの、一切指紋が出ないことが納得がいかないようです。
ヤクの切れた麻薬中毒患者は、手袋をはめて家探しをする余裕なんてないはずというのがコロンボの疑惑です。

先生どう思います?
中毒患者はもっと発作的なもんでしょ?
とコロンボは麻薬中毒者が、薬ほしさにシャロンを殺したことに懐疑的です。
メイフィールドは、麻薬患者はよく知らないので何とも言えないと、はぐらかします。
しかし自分がでっちあげた、麻薬中毒者がシャロンを殺したというストーリーがすでに崩壊しつつあることに、あせりを感じていますね。
そしてメイフィールドは次の手を打つべく、シャロンのルームメイト、マーシャに電話して会う約束を取り付けます。
メイフィールドの刺客-1 マーシャ
シャロン殺害の容疑者候補
麻薬中毒者の犯行に見せかけて、看護師シャロンを殺害したメイフィールド。
しかしコロンボに犯行に穴があることを、気付かれてしまいました。
メイフィールドは、シャロンのルームメイトマーシャを慰めるふりをして誘い出します。
海岸を散歩するメイフィールドとマーシャ。
上流階級の独身男性を探しているマーシャはしっかりとメイフィールドの腕を組み、熱い瞳で彼を見つめています。
メイフィールドもマーシャの下心に気がついているのか、彼女の手をしっかりと握っています。
そしてシャロンを殺した麻薬中毒者に心当たりがないか、二人で考えようと働きかけるのです。
メイフィールドは、シャロンが麻薬中毒者専門の病院でボランティアしていたことが、手がかりになるかもしれないと言います。
その病院はベトナム戦争帰還兵の麻薬中毒者専門であったことを、マーシャは思い出します。
メイフィールドはその中で、シャロンが特に親しくしていた「ハリー」という名前に聞き覚えがあると、マーシャにヒントを与えます。
メイフィールドの思惑通りに、マーシャは「ハリー・アレギザンダー」という名前を思い出すのです。
メイフィールドは、ハリー・アレギザンダーのことを警察に話すようにマーシャに進めます。
そして「これからどうする?」とランデブーを期待するマーシャ。
メイフィールドはもうマーシャには用なしなのか「うちまで送ってあげるよ。」とそっけない態度。
何となくですけど、メイフィールドはゲイじゃないですかね。
ベトナム帰還兵とは
ベトナム戦争は、だいたい1965年から1975年まで続いた戦争大国アメリカが唯一勝てなかった屈辱の戦争です。
アメリカ兵士は心を病む人も多く、何とその15%が麻薬中毒者になってしまったとのこと。
そこで事態を重く見たアメリカ政府は「薬物乱用防止対策局」を設立して、リハビリプログラムに力を入れたそうです。
恐らくここで登場する「ハリー・アレギザンダー」もそのプログラムを受けた帰還兵ではないでしょうか。
1973年のこの作品は、まだベトナム戦争の傷跡が生々しく残り、戦争を体験した人々も多く登場します。
コロンボの疑惑-4 メイフィールドとマーシャの逢引
車でマーシャを家まで送ったメイフィールド。
マーシャは家で飲まないかと誘いますが、「まだ今度にするよ。」とメイフィールドは断ります。
そして麻薬中毒者候補であるハリー・アレギザンダーのことを、必ず警察に話すようにマーシャを念押しします。
見てます見てます。
この様子をマーシャとシャロンのアパートに訪れたストーカーコロンボが、しっかり見てますよ。
秘伝のくしゃみの治療法
メイフィールドが去った後、コロンボはくしゃみしながらマーシャの前に姿を見せます。
くしゃみが止まらないコロンボは、メイフィールドがパーティーのときに勧めてくれた、ハマグリのせいかな、なんて言ってます。
マーシャのアパートで話を聞くことになったコロンボ。
ここでもマーシャはコロンボの腕を組んでますね。
距離感の近い女性なのかもしれません。
くしゃみの止まらないコロンボに、看護師でもあるマーシャはくしゃみの止め方を教えてくれます。
水を7回呼吸せずに調子をつけてすすります。
そして4つ数える間に息を止めます。
これをすると本当にコロンボのくしゃみがとまりました。

ぴったり治まった。奇跡のごとしだ。
と感動するコロンボなのでした。
しかしこれ、くしゃみの止め方じゃなくて、しゃっくりの止め方じゃあないんですかね。
コロンボの疑惑-5 シャロンの私生活
コロンボはマーシャにシャロンの私生活について聞きたいと言います。
するとマーシャはメイフィールドに言われた通りに、
「ハリー・アレギザンダーっていう人をあたってみたらどうかしら?」
と答えます。
ハリーは、シャロンがボランティアをしていた麻薬治療病院の患者で、何か月前には親しくしていた人物だと、マーシャは説明します。

有力な情報だ。メモしておきましょう。
と答えるコロンボですが、筆記用具を持っておらずマーシャに鉛筆を借ります。
コロンボの定番シーン、よく筆記用具を忘れるですね。
一つ…2 質問がある

一つ質問があるんですがね。
と、コロンボは定番セリフ「一つ」を口にします。

「私生活について聞きたい」と言った時どんな意味だと思いました?
と続けるコロンボ。
コロンボは聞き込みでしょっちゅうこの質問をすると相手は「どういうことか?」と聞いてくるそうです。
そして、帰宅の時間とか友達とか癖とかそういうことか?と、さらに踏み込んで私生活の具体的な内容について説明を求めるのだそうです。
なのにシャロンはすぐに具体的な情報、ハリー・アレギザンダーの名前を出したのが、コロンボの疑惑でした。
コロンボの疑惑-6 ハリーはメイフィールドの入れ知恵だった
コロンボにすぐに「ハリー・アレギザンダー」の名が出たことを質問されたシャロンは、今メイフィールド先生と話してきたばかりだからだと説明しました。
さらにおしゃべりなシャロンは、メイフィールドから呼び出されたこと、ハリーの名を出したのも彼であることを説明します。
このシャロンとメイフィールドの連携プレイでハリーの名が挙がったことに

なるほど。チームワークですな。
と感心するコロンボ。
ハリーの行方をマーシャに聞くと、「知らないわ。悪いけど。」という答え。

とんでもありません。おかげで大助かり。
謝られるとかえって恐縮だ。どうもホントにありがとう。
と、何度もお礼を言うコロンボ。
はい、ここでコロンボはもう、メイフィールドがシャロンを殺したことを確信しました。
いえ、とっくに確信していたのかもしれませんが、さらにゆるぎなく強いものになっています。
冷静沈着で有能なはずの医者メイフィールドですが、刺客におしゃべり女を選んだのが失敗でしたね。
コロンボの疑惑-7 シャロンは興奮していた
翌日コロンボは、手術を受けたハイデマン博士のもとに聞き込みに訪れます。
面会謝絶で絶対安静中のはずのハイデマン博士ですが、看護師に研究中のリポートを取ってくるように頼んで断られてます。
看護師はコロンボを追い返そうとしますが、気のいいハイデマン博士は
「二日ぶりで人間くさいお人がやっと来てくれたんだよ。医者や看護師にはもううんざりだ。」
とコロンボを大歓迎。
気のいいじーさんなので、こんな人を殺そうとしたメイフィールドに、わたしたちは余計に憎しみがつのるわけです。
さて、看護師がハイデマン博士に注射をすると、コロンボは思わず目を背けます。
怖がりのコロンボは、病院や注射、残酷な遺体などが苦手。
ここは物語の重要な伏線です。
ほんの一つ二つ…3 シャロンの興奮
コロンボはハイデマン博士に

ほんの一つ二つ伺えばよろしいんで…。
と、いつもの口癖で質問します。
コロンボはシャロンが殺される前日に、妙に興奮していたと語った人が2.3人いたと、ハイデマン博士に話します。
ハイデマン博士もシャロンが興奮していたことを認め、自分の手術の心配をしてくれているからだと思っていたと答えます。
もう一つ…4 ハリーについて?
さらにコロンボが

もう一つお伺いしたいんですが…。
と質問を続けようとしたところで、メイフィールドがやってきて、遮られてしまいました。
メイフィールドはコロンボの喫煙を注意し、面会謝絶だから病室から出るように言います。
コロンボがハイデマン博士に何を聞きたかったかは不明です。
しかしコロンボは、ハイデマン博士の代わりにメイフィールドに聞きたいと言って、ハリー・アレギザンダーのことを尋ねます。
ハリーの名を聞いて最初はすっとぼけるメイフィールド。
コロンボがマーシャから聞いたというと、メイフィールドは思い出したフリをします。

事件の事考えて下さってホントに感謝してるんですよ。
というコロンボは大ウソつきですよね。
すでにメイフィールドが犯人だと確信しているくせに。
いや、メイフィールドが犯人だと確信させてくだすって感謝していますという嫌味でしょうか。
そうとはつゆ知らずなのか、コイツもすっとぼけているのか
「(シャロンのために)できるだけは…してあげたいものだとね。」
と答えるメイフィールド。

ありがたいな。どうも。
さらにお礼を言うコロンボ。
内心は、もっとしっぽ出せやーいやーい、って思ってるすかね?
ハリー・アレギザンダーについては、詳しくは知らないというメイフィールド。
ちょうどコロンボに電話がかかってきたという館内放送が流れます。
電話があるところにコロンボを案内するメイフィールド。
コロンボはさらに胃薬を処方してくれたお礼と、マーシャと協力してくれたお礼を、メイフィールドに伝えます。
マーシャなら事件の役に立つと思ったというメイフィールドにさらにコロンボは

ぴったりでした。ありがとうございます。
と、しつこ過ぎるお礼魔ですね。
コロンボの本心を知っているわたしたちにとっては、へりくだり過ぎて嫌味ですよね。
慇懃無礼とは、コロンボのためにある言葉でしょうか。
ちなみにコロンボ記事を読んでくださる方なら、それなりの年齢で教養のある方なので説明するまでもないでしょうが、慇懃無礼とは、「非常に丁寧で礼儀正しいのも、過ぎると嫌みになり、かえって礼を失することになるということ」という意味でござります。
さてコロンボにかかってきた電話の内容は

ハリー・アレギザンダーをめっけました。
ということでした。
メイフィールドの刺客-2 ハリー・アレギザンダー
薬物中毒から立ち直ったハリー
コロンボは、メイフィールドがシャロン殺害の重要容疑者として仕立て上げた薬物中毒患者のハリー・アレギザンダーに会いに行きます。
ハリーはすっかり薬物中毒から抜け出して立ち直り、動物園で働いていました。
ちなみに刑事コロンボの第五話「ホリスター将軍のコレクション/ DEAD WEIGHT」では、心を病んだヘレンという女性も動物園で働いていました。
アメリカでは精神を病んだ人の復帰プログラムとして、動物園で働くのがデフォなんですかね?
さて、子供たちと一緒に山羊にエサをやっているハリー。
コロンボに話があると言われて少し不機嫌そうですが、

ちょっとだけだよ。何でもないから。
とコロンボにとっては、形式的な簡単な質問のようですよ。
ハリーとコロンボの会話の要点をまとめます。
ハリーは、シャロンとは半年以上会っていない。
シャロンはハリーが自分に寄りかかり過ぎて自立できないことを心配して別れを選んだ。
また、ハリーが退院すると同時ぐらいに、シャロンもその病院のボランティアを辞めている。
ハリーはシャロンをすばらしい人だと感謝している。
ハリーは薬物はすっぱり止めてマリファナですらやっていない。
また今の仕事を失うことを恐れて、絶対に薬物をしないと決めている。
ハリーはメイフィールドと、1度か2度程度、面識があった。
ハリーは「マック」と呼ばれたことはなく、シャロンがメモを残した「マックと8時に会う」の相手ではない。
コロンボはこれだけの情報を確認すると、あっさりと帰っていきます。
もともとハリーを殺人犯だとは思ってもいないし、彼の証言を一つも疑っていないってことですね。
アメリカにおいてのマリファナ(大麻)
このシーンでハリーは、「マリファナですらやっていない。」と言います。
実はコロンボが働くロサンゼルス、つまりカリフォルニア州では、マリファナは合法なんです。
マリファナ、日本語で言うと大麻は吸ってもいいんですよ。
元ビートルズのポール・マッカートニーは、1980年1月16日、ツアーのために来日しましたが大麻所持のために成田空港で逮捕されてしまいました。
そのときに、大麻は常用性がないし、たばこの方がよほど体に悪いと、言い訳したと言います。
アメリカでは、日本人がたばこを吸うぐらいの感覚で、嗜好品としてマリファナが認められているというわけですね。
州で認められているマリファナですら吸っていないと言ったハリーですが、たばこを吸うシーンはあります。
このたばこを吸うシーンは、後のコロンボにとっての重要なファクターになります。
コロンボの疑惑-8 人望厚いシャロンは麻薬の横流しなんてしない
コロンボは再びメイフィールドの研究室を訪れ、ゴミ箱をあさって証拠を探しています。
ハイデマン博士の手術後に、夜勤中だった掃除係が、シャロンは興奮して、話しかけても無視されたと語っています。
シャロンは普段はとてもやさしい人だったのに様子が違ったと印象的な出来事だったのでしょうね。
さて、そこへメイフィールドがやってきて、自分のごみ箱をあさっているコロンボをちくりとけん制します。
コロンボは、シャロンがメモに残した「マック」が重要な手がかりなので、それにつながる証拠を探し回っていると言い訳します。
メイフィールドは、自分が仕立て上げた元薬物中毒のハリー・アレギザンダーについての捜査状況をコロンボに聞きます。
コロンボは、ハリーはすっかり薬物から卒業し、シャロンとも半年も前に別れているので、容疑者にはしなかったと答えます。
さらにColomboは、殺人犯が手袋をはめていたこと、シャロンの病院内での評判がとても良く、薬を横流しするような人には思えないことなどを語ります。
コロンボは、麻薬のもつれがシャロン殺害の理由であるとは想像できなくなったのです。
しかしメイフィールドは、コロンボにシャロンのアパートにモルヒネがあったことに疑問を投げかけます。

ああ…。あいつが問題です。
うーん…
頭絞りましたよ。
一番それらしい解答はね
ヤクを巡る殺しと見せかけて誰かが置いてったって事です。
と、コロンボが核心に触れました。
メイフィールドは一瞬研究の手を止めます。
コロンボはさらに追い打ちをかけて、研究室のモルヒネを自由にできる人物は、メイフィールド以外にいなかったのかと、質問を続けます。
メイフィールドは、自分とハイデマン博士以外はいなかったのではないかと答えます。
が、一瞬、間をおいてメイフィールドは
「私がモルヒネを彼女(シャロンのアパート)の所に置いたと言うつもりかね。」
と、コロンボをにらみつけます。
コロンボときたら、ものすごく驚いた、鳩が豆鉄砲を食ったような表情でメイフィールドを見つめ返すんですよ。
すでにメイフィールドの犯行を確信しているくせに、役者やのう。
メイフィールドはさらに、シャロンを殺す理由が自分にはないと言います。

そうもちろん。
…そう理由がない。
と、メイフィールドの言い分を認めた上で、間をおいて続けます。

ただね…。
今掃除のおばさんから妙なことを聞いたんですよ。
掃除婦によると、シャロンはハイデマン博士の手術の後、興奮していらいらしていたそうです。

だっておかしいでしょ。
手術は大成功だったのにいらいらしていたなんて。
と、コロンボは、メイフィールドが執刀した手術中に何かあったのではということを暗にふくませたまま、立ち去ってゆきます。
さあコロンボはメイフィールドのハイデマン博士の手術に何かがあり、そのためにシャロンが殺されたところまでは、たどり着いていますね。
そしてこのことがメイフィールドを追い詰めることになり、彼は研究室に置かれたモルヒネの瓶に手をのばすのでした。
第二の殺人
メイフィールドは研究室から持ち出したモルヒネを持って、ハリー・アレギザンダーのアパートを訪れます。
ハリーの部屋のドア横の窓は鍵が開いていたので、そこから手をのばしてドアの鍵を開けます。
あっさりとハリーの家に侵入に成功したメイフィールドは、シャロンのアパートにも不法侵入してたし、手慣れたもんですね。
これだけ犯罪を犯すのに肝が据わってるってことは、メイフィールドは以前にも誰か殺しているのかもしれません。
メイフィールドはモルヒネを注射器に仕込んで、ハリーの帰宅を待ちます。
玄関ドア横に隠れていたメイフィールドは、帰宅したハリーを後ろから襲って、クロロホルムか何かの麻酔薬で、眠らせてしまいます。
そして眠っているハリーに、モルヒネを注射するのです。
血のにじむような思いで、薬物中毒から立ち直ったハリーに、また薬物を注射するなんてひどい!
やがて目覚めたハリーは、薬物の影響で意識はもうろう、幻覚を見ながら階段から転落してしまいます。
多分、亡くなったと思われます。
メイフィールドにハリーを殺す気があったかどうかまでは不明ですが、非情な殺人鬼であることは間違いありません。
コロンボの疑惑-9 ハリーは左利きだった
ハリーの自宅に、シャロンのアパートで発見されたモルヒネと同じものがあったことを、メイフィールドに報告するコロンボ。

デ~ンとあったんです。驚いた。
というコロンボですが、デ~ンという表現も面白いですが、わざと見つかるように目立つように置かれていたってことを強調してるのでしょうね。
メイフィールドは、「気を落とさんことだ。誰でも間違いはある。」とコロンボを慰めます。

ええ ええ そうですとも。
は?間違いって?
というコロンボに、メイフィールドはハリーが犯人ではないという誤解をコロンボが犯したと説明します。

ああ あれね。
誤解じゃなかったんです。
と、メイフィールドの考えを否定するコロンボ。
コロンボは、ハリーに会ったとき、たばこを吸う仕草から、彼が左利きであると気がつきました。
ハリーに注射されたモルヒネは左腕に打たれていましたから、左利きなら右腕に打つのが普通であるとコロンボは説明します。
つまり誰かがハリーが犯人だと見せかけようと細工したのだと、コロンボは主張するのです。
しかしハリーの存在を知っているもは、メイフィールドとマーシャだけです。
マーシャが何か知っているかもしれないね、というメイフィールドに

いや~。あの人何も知っちゃいませんよ。
とあっさり否定するコロンボ。
もう仕上げに入ってるのか、暗にメイフィールドが仕組んだんだとほのめかしていますね。
メイフィールドも覚悟を決めたのか
「私がシャロンを殺したとしたら、動機は何だね。」
と、最後の逃げ道、動機がないことを強調します。

いや何もそんな事言ってやしない。
と言い訳するコロンボですが、全身でお前が犯人だろって表現してますよね。
だけどメイフィールドの犯罪の動機と証拠が見つからないので、コロンボも少し途方にくれているようです。
コロンボの名フィールドへの追い込みが、結果、ハリーを死なせることになってしまったのですから。
マックの正体
マックとは男ではなく企業名だった
コロンボは、入院中のハイデマン博士に、手術当日シャロンが興奮していたことを相談します。
ハイデマン博士も、手術は成功したんだから本来ならシャロンはほっとしているはずだと、不思議そう。
コロンボはシャロンのメイフィールド観を、ハイデマン博士に尋ねます。
ハイデマン博士によれば、シャロンにとってメイフィールドは少し利己的だったようだが、才能のある人間にはありがちな事だと、みじんも彼を疑っていないようです。
このハイデマン博士は本当に可愛いおじいちゃんですよね。
ふとコロンボは置かれた医療用具に、「マーカス・アンド・カールソン」と記載されているのに気が付きます。
「マーカス・アンド・カールソン」とは医療用具の専門企業で、略称は「MAC」=「マック」。
殺された日にシャロンが会う約束を取り付けたのは、この企業の人物だったのです。

頭文字か…。アタシもドジだった。
と、コロンボは「マック」が男性の名前だとばかり思い込んでいた自分に自嘲気味ですね。
これは優秀な刑事である自分が、こんなことを見逃すなんて、というコロンボの自己評価の現れだと思います。
コロンボはすぐに、マーカス・アンド・カールソン医療用具に問い合わせて、シャロンと会う約束をしていた人物はいないかと確認します。
誰かまでは分かりませんが、シャロンはその企業の科学者と会う約束があったのだそうです。
電話を受けた受付も、シャロンが興奮し、どうしてもと粘られたので記憶に残っていたそうです。
さあシャロン殺害の動機と証拠のため、コロンボの最後の追い込みが始まります。
溶ける糸
コロンボは、マーカス・アンド・カールソン医療用具が病院におさめている備品について調べます。
マーカス・アンド・カールソンのおさめている化学製品は、糸でした。
コロンボがその糸を、外科でどうやって使うのかと聞くと、医師が実際の手術現場を見せながら説明してくれました。
「やあ今日はついてる。アービング先生が切除をやってるから糸はたっぷり使いますよ。」
と興奮気味の医師。
しかし注射のシーンすら見ることができないコロンボは、とても手術を見ることができません。

あのね。
糸の話だけで見るのはいいんだけど…。
と手術から目をそらし、弱弱しく尋ねるコロンボ。
医師の説明によると、糸は二種類あるそうです。
・永久に残したいパーマネントの糸
・傷がすっかり治って用がなくなると溶けて消える糸。
そして溶ける糸は、心臓には絶対に使いません。
なぜなら心臓に使って糸が解けると、弁が分離してしまい命が亡くなってしまいます。
溶ける糸は、通常2週間で無くなりますが、心臓に使った場合は圧がかかり、数日で消えるということでした。
コロンボは、メイフィールドがこの糸を使って、ハイデマン博士を殺そうとしたことに、ようやくたどり着いたのです。
コロンボ最後の追い込み
珍しくコロンボが激怒
メイフィールドが本当に殺害しようとしていたのはハイデマン博士だと気がついたコロンボ。
コロンボはハイデマンに別の医師の診察も受けるように勧めるのですが、
「メイフィールドはこの分野では最高の人だよ。」
と、博士は聞く耳を持ちません。
おじいちゃん。
お人好しが過ぎるで。
そこへメイフィールドが現われて、ハイデマンは面会謝絶中だと、きつく言ってコロンボを追い出します。
コロンボは病室の外で、メイフィールドを待ちます。
そして出てきたメイフィールドに

マッチありますか。
と声をかけるのですが、無視されてしまいました。
メイフィールドはしつこいコロンボにうんざりしている反面、追いつめられてそっけない態度なのかもしれませんね。
しかしハイデマン博士の命がかかってますから、コロンボはめげずに「先生ちょっとだけ。」とメイフィールドを追いかけます。

アタシはだいぶ勉強しましたよ。
糸のことをね。
面白いですねぇ。
と、まだとぼけたふりをして、糸の話をほのめかします。
そしてまた、「ちょっとだけ。」と言って、メイフィールドにつきまとうのです。
コロンボは、仮にハイデマン博士の心臓手術に溶ける糸を使った場合、数日で溶けて博士が死ぬことをメイフィールドに確認します。
そしてハイデマンが死んでも手術ミスとは気づかれず、心臓発作による死因だと思われることも確認します。
メイフィールドは、溶解する糸とパーマネントの糸は全く別の色をしているから、そんな初歩的なミスを犯す人はいないと、否定します。
しかしコロンボはさらにメイフィールドの個室まで追いかけてゆき、

糸を染め変えることもできるんでしょ。
パーマネントと同じ色にね。
と食い下がります。
「それだと殺人になるんじゃないかね。」というメイフィールドに

そうです。
れっきとした殺人です。
でもこれで手術後シャロンが興奮していた訳も糸を製造している会社の科学者と会おうとしていた事もちゃんと説明がつくわけだ。
彼女は知っていたんです。
と、全ての謎を明らかにします。
するとメイフィールドは突然、笑い出しました。
驚いたコロンボが

何がおかしいんです?
と聞きます。
メイフィールドは笑い続けながら、
「失礼。あまり気味が大真面目なんでね。
まさか本気で言っておられるんじゃないでしょうな。」
と、コロンボの推理を冗談にしようとしています。
するとコロンボはメイフィールドのデスクにあった、黒い魔法瓶を机にたたきつけて、大きな音で威嚇しました。

アタシはねあんたがシャロンを殺したと思ってる!
そしてハイデマン先生をも殺そうとしていると!
いつもほのぼのとしたコロンボが、大きな音を立てて怒ったので、さすがに冷静沈着なメイフィールドもびっくりしています。
しかしメイフィールドは気をとりなおして
「君は立派な刑事だ。
知性もあり勘も鋭くそして粘り強い。
ただ証拠がないのが惜しいな。」
と言います。
もうこれ、コロンボの迫力に押されて、自分の犯行をほぼ認めてますよね。
自白にならないのでしょうか。
コロンボは

ハイデマン先生の面倒をよく見ることだ。
もし死んだら当然我々は検死解剖を要求する。
そして単なる心臓発作による死亡なのか糸のためなのかを確認するからな。
とメイフィールドをけん制して、去ってゆきます。
さすがにクールなメイフィールドも少し困った表情をして、次の手を打ちます。
シリーズ屈指の有名なコロンボ激高シーン
このコロンボが魔法瓶をたたきつけて怒るシーンは、シリーズでも有名なシーンですね。
ただ日本語吹き替えでは怒鳴りつけてますが、原語ではそこまで激しい様子ではなく淡々としていますね。
とはいえ、コロンボが敵意むき出しで怒るのはめったにない貴重なシーンです。
それほど今回の殺人犯が外道だったということでしょう。
ちなみにこの動画は、ラストシーンまで続きますのでネタバレにご注意。
ちなみにシリーズ第一作「殺人処方箋/Prescription:Murder」でも、コロンボは共犯者を恫喝しているようなシーンがあります。
珍しくコロンボが手術現場を凝視
メイフィールドは、ハイデマン博士の薬に細工して、容体を悪化させ再手術に持ち込みます。
「息ができんのだ…。」と汗だくになり真っ赤な顔で苦しむハイデマン博士。
もうこんな気のいい愛らしいおじいちゃんをいじめるのホント、やめてほしいです。
ハイデマン博士の手術中、メイフィールドがふと上にある観察室を見上げると、コロンボが身をのりださんばかりに凝視しています。
あの注射シーンですら目をそむけるコロンボが、大仏さまのようにじっと身じろぎもせず、強い圧をかけながら手術を見つめているのです。
珍しくメイフィールドが激怒
メイフィールドは無事にハイデマン博士の再手術を終えました。
と同時に、医療服に身をつつんだコロンボが、複数のドクターを引き連れて手術室に乗り込んできました。
医療服のコロンボ、なかなかキュートです。
捜査令状も取っており、手術室の総てをチェックするというコロンボに、冷静なはずのメイフィールドも怒りをあらわにします。
そして、メイフィールドは糸を鑑識に回したいというコロンボを
「こんな芝居につきあえるか!」と言って突き飛ばすのです。
「こんな不愉快極まる話は初めてだ。手術室に押し入ってくるとは。
警察にはいずれ医師会から厳重な抗議を行ってやるからな!」
といつもはお上品なメイフィールドも、とっても怒ってます。
コロンボと捜査一味は、手術室をくまなく探すのですが、あやしいものは見つかりませんでした。
そしてメイフィールドを見張っていた医師も、おかしな動きはなかったと証言します。
メイフィールドは勝ち誇ったドヤ顔で、コロンボを見つめ、自分の髪をひとなでします。
てっきりわたしはメイフィールドが自分の髪に、糸を紛れ込ませて隠したのかと思いましたよ。
ちなみにどうも彼はカツラのようです。
溶ける糸の行方
メイフィールドの個室で待機するコロンボとメイフィールドに、糸がどこを探して見つからなかったことを、警察が報告に来ます。

絶対と思ったんですがねぇ。
だってつじつまはちゃんと合うでしょ?
シャロンが殺された理由としては実にぴったりだし…。
とまだ、メイフィールドがシャロン殺害の線を捨てていないコロンボ。
しかし

今度はポカやりました。
アタシも年ですかねぇ…。
と言って、コロンボは医療服を脱ぎます。

そうアタシの負けだ。
尻尾巻いて退散だ。
と、コロンボは今回のライバル、メイフィールドと握手して立ち去ります。
メイフィールドは、
「じき元気になりますよ。
まあせいぜい気を楽にもって。」
と優しくコロンボを慰めます。
だけど殺人犯のぬれぎぬを着せられて、こんなに優しくできるわけはないので、完全犯罪成功の喜びゆえの優しさなんでしょうね。
コロンボが出て行った部屋で、「ふーっ」と息をつき、清々しい表情のメイフィールド。
がその勝利の喜びに打ち震えるのも一瞬の夢で、すぐにコロンボがノックもせずに乗り込んできます。

先生ご立派。
まず完璧と言っていいでしょう。
たった今の今までアタシを押さえ込んでいたんですからね。
さあ、コロンボ劇場の再開です。
コロンボは一方的にまくしたてます。

もともと先生は冷静を必要とする外科医で怒った時でさえ一度だって爆発はした事はない人だ。
それがさっき手術室ではなぜかカッとなってアタシをつかんだり小突いたりした。
その時あんたは絶対捜索されない所に糸を隠した。
コロンボは、さっき自分が脱いだ医療服を差ししめし

それはここだ。
アタシのポケット。
と言って、医療服のポケットから、溶ける糸を取り出しました。
コロンボの勝利でした。
コロンボの王手
今回のコロンボの王手は、れっきとした証拠品、溶ける糸を見つけ出したことにあります。
問答無用の清々しい結末でした。
うちのカミさんというセリフは、最初の一回しかありませんでした。
「一つ」や「もう一つ」は、対決時間が長かったので連発され、4回登場しました。
この作品は、コロンボは早い段階で犯人を確信していたのですが、本来の殺害したいハイデマン博士が存命のため、証拠や動機がなかなか解明できませんでした。
コロンボとしてはもどかしかったと思いますが、二度目の殺人が起こったり、ハイデマン博士が三人目の犠牲者にならないかと、はらはらどきどきの展開でしたね。
クールで感情をあらわにしないはずのコロンボとメイフィールドが、ラスト近く激高するシーンも、物語に良いスパイスを与えてました。
そしてこの二人の激高が、最後の謎を解く重要な転換期となりました。
ある意味激高対決、激高することが頭脳戦、心理的駆け引きだったのかもしれません。
しかしコロンボが、どの時点で溶ける糸の隠し場所に当たりをつけたのか、気になりますね。
とっくに気がついていたけど、メイフィールドをあえてぬか喜びさせたなら、コロンボは性格が悪すぎます。
メイフィールドの部屋を出た後も、糸の行方についてぐるぐる頭を巡らせるうちに、ふとひらめいたと、わたしは解釈しています。
この「溶ける糸」の原題は、「A STITCH IN CRIME」で、「一縫いの犯罪」とでも訳しましょうか。
メイフィールドが、ハイデマン博士を殺すために溶ける糸で心臓を縫ったことを指しているかと思われます。
「溶ける糸」は、ネタバレタイトルなので、原題の方がよかったんじゃあ、ないでしょうか。
ではまた、刑事コロンボでお会いしましょう!
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