作品情報
刑事コロンボ:ピーター・フォーク(小池朝雄)
殺人犯:ワイナリー経営者 エイドリアン・カッシーニ/ドナルド・プレザンス(中村俊一)
被害者:殺人犯の弟 リック・カッシーニ/ゲイリー・コンウェイ(加茂嘉久)
エイドリアンの秘書:カレン・フィールディング/ジュリー・ハリス(大塚道子)
リックの婚約者:ジョアン・ステーシー/ジョイス・ジルソン(北島マヤ)
エイドリアンの友人:ファルコン/ダナ・エルカー
演出:レオ・ペン
脚本:スタンリー・ラルフ・ロス
殺害の動機:ワイナリー売却を防ぐため
- 殺害の動機とバッググラウンド
- 物語開始約20分 刑事コロンボ登場
- コロンボの捜査開始
- うちのカミさん-2 祖父のワイン作りを手伝う
- コロンボの疑惑-5 リックの人物像への矛盾
- コロンボの疑惑-6 一つだけ-1 リックの車好き
- コロンボの疑惑-7 喪中を気にしない
- コロンボの疑惑-8 リックの死により得をしたエイドリアン
- ワインへの愛-3 葉巻はNG
- コロンボの疑惑-9 弟の死に悲しまない
- ワインへの愛-4 デカンターのこだわり
- コロンボの疑惑-10 リックに最後に会ったのはエイドリアン
- コロンボの疑惑-11 リックは雨の日にダイビングした
- コロンボの疑惑-12 5~6日置きっぱなしの車
- コロンボの疑惑-13 雨なのに車に幌をかけなかった
- うちのカミさん-3 親父は闇ビールの用心棒
- コロンボの疑惑-14 風程度で幌が飛ぶか
- コロンボの疑惑-15 リックの胃が空だった
- コロンボの疑惑-16 エイドリアンがデカンターをしなかった
- コロンボの追い込み
- ワインを習うコロンボ
- 懐に入り込むコロンボ
- うちのカミさん-4 親父の年収より高い
- うちのカミさん-5 ピクニックに行けないほど暑い日
- コロンボの疑惑-17 デカンターをしなかった理由
- コロンボの疑惑-18 ワインセラーの密室性
- コロンボの疑惑-19 野ざらしだったのにきれいな車
- コロンボの疑惑-20 リックは帰ったのか
- うちのカミさん-6 食事に同席
- もう一つだけ-1 エイドリアンとカレンの付き合い
- カレンの疑惑
- ウェイターに値踏みされるコロンボ
- うちのカミさん-7 会計を知ったら大事だ
- ワインへの愛-5 ワインの酸化を見抜く
- コロンボの追い込み-1 とても暑い日
- コロンボの追い込み-2 カレンの嘘を伝える
- カレンの追い込み
- コロンボのチェックメイト
- コロンボのトラップ
- 別れのワイン
- ANY OLD PORT IN A STORM
殺害の動機とバッググラウンド
キュート過ぎる殺人犯
「別れのワイン」がコロンボシリーズ最高傑作とされるのは、ドナルド・プレザンスが演じる殺人犯エイドリアン・カッシーニのキュートな魅力とも言えるでしょう。
とにかくかわいいんです!
かわいいと言えば、コロンボだってかわいいですよ。
でもコロンボのかわいさが、計算なのか天然なのか計りかねるのと違い、エイドリアンは完全なる天然ですね。
一点の曇りもないピュアでクリアなかわいさなんです。
その時の感情、喜び、怒り、驚き、焦りが素直に表情に出て、わたしたちはエイドリアンを眺めてるだけで、彼の心情と物語の展開が手に取るように分かります。
こうなってくると、ハゲなのか坊主なのか分かりませんが、むき出しにされたその額すら、キュートな表情の一つのように思われます。
また、コロンボシリーズのほとんどの殺人犯が、お金や名誉などのエゴのために殺害を犯します。
これと違ってエイドリアンの犯罪は愛するワインを守りたいがための、衝動的なうっかり殺人です。
悪人と言い切れないエイドリアンの犯行動機にも、わたしたちは同情し敬意を抱くのです。
さあ、かわいさ対決では圧倒的にコロンボに勝利した今回の殺人犯。
エイドリアン・カッシーニの魅せるくるくる変わる愛らしい表情もまた見逃せませんよ。
物語のキーワードはワインとイタリア
今回の主な舞台は「カッシーナ・ワイナリー」というワイン工場です。
グラスに注がれた4杯の赤ワインの乾杯シーンが映し出され
「画家テッツィアーノでもこの美しい赤は出せまい。」
というエイドリアン・カッシーニのセリフから、物語は動き出します。
導入のセリフから、この作品がワインとイタリアにとてもゆかりの深いものだと分かります。
セリフに登場する画家テッツィアーノとは、ティツィアーノ・ヴェチェッリオというルネサンス時代のイタリア人画家です。
色彩感覚に定評がある画家で、以下が彼の描いた「聖愛と俗愛」という作品です。
確かに美しい赤がアクセントとして印象的な絵ですね。
この「別れのワイン」もそのタイトルにふさわしく、モチーフのように登場するワイン色が、物語に花を添えます。
またエイドリアン・カッシーニが語るワインのうんちくも今作品の特徴の一つですね。
ワインへの愛-1 お金儲けに使わない
とびっきりのワインをワイン協会の仲間3人と味わった後、
「(このワインを)ボトルで売りますか?」と尋ねられるエイドリアン。
「とんでもない!」と言うエイドリアンの表情がとてもキュートですよ。
年に10ケースしかできない貴重なワインなのですって。
「友人に味わってもらいたい。」というエイドリアンに、集った仲間たちが特別だと印象づけるシーンですね。
また儲けを気にしないエイドリアンの性格も分かります。
続いてエイドリアンはワイン仲間のためにチーズと、ボルドー産赤ワインの代名詞であるクラレットを取りにゆくのです。
部屋から出たエイドリアンは、残された3人のワイン仲間の話を盗み聞きします。
仲間たちはワイン業界に尽くしたエイドリアンをワイン協会の「今年の人」に決める相談をしています。
決定を聞いたエイドリアンのまゆを上げて喜びと驚きを示す「してやったり!」な表情もなんとも言えずキュートです。
腹違いの弟リック
ワイン業界の「今年の人」に選ばれ上機嫌でオフィスにクラレットを取りに行くエイドリアン。
そこに待ち受けていたのは、腹違いの弟リックです。
エイドリアンの表情、棘のあるセリフから、弟を嫌っていることが明らかですね。
リックに少し腕を触られただけで、エイドリアンはものすごい嫌悪感を表情に浮かべるんです。
リックもまたエイドリアンを日曜日も働く変人だと評し、お互い相容れません。
この二人、腹違いの兄弟だからかあまり似てませんが、グレーのかかった薄いブルーの瞳の色はそっくりですね。
二人の父親はイタリア人で、エイドリアンが言うにはワインを残してくれた良い人だそうです。
エイドリアン
遺産を相続
母は育ちの良いイギリス人
儲けることよりも良いワインを所有することに意義を感じている
おそらく結婚歴なし
リック
ワイナリーを相続
母は貪欲な性格
女と車にお金をかける浪費家
この度4度目の結婚をするプレイボーイ
明日アカプリコのカッサ・ロッホで結婚するというリックに、エイドリアンはしぶしぶお金を渡します。
殺害の動機
リックはお金を手に入れるために、カッシーナ・ワイナリーをマリノ酒造に売ると言い出しました。
それを聞いたエイドリアンは、怒りに狂い我を失います。
エイドリアンは、マリノ酒造は儲けのためにうがい水にも劣るワインを作る軽蔑するべきワイナリーだと罵ります。
エイドリアンは激高するんですけど、やっぱり怒ってもちょっとだけかわいいんですよね。
演じるドナルド・プレザンスのお人柄がにじみ出てるからか、演技が達者だからか分かりませんが、キュートなんです。
生涯をかけた愛するワイナリーを守るために、エイドリアンは飾られていたトロフィーで、弟リックの頭を殴りつけます。
倒れ意識を失うリックに声をかけるも、エイドリアンは何か算段を練っているようです。
そして倒れたリックをそのままにして、エイドリアンはクラレットを持ち、仲間たちの元へといったんは戻ります。
秘書カレン・フィーリディング
エイドリアンがオフィスから出ると、ちょうど秘書室兼受付に秘書のカレン・フィーリディングがやってきました。
エイドリアンとカレンは明日、ワインの競売のためにニューヨークに立つ予定です。
カレンはその前に残った仕事を片付けに来たのです。
エイドリアンは、弟リックに言われた言葉そのままに
「変人だけが日曜日に働く。」と言って、カレンに帰るように促します。
またエイドリアンはニューヨーク滞在を1週間に延ばすことにしたとカレンに伝えるのです。
エイドリアンがニューヨーク滞在をのばしたのは、アリバイ作りのためのようですよ。
それを聞いたカレンは、すぐに家に帰ってゆきます。
しかしカレンはリックの車を見たので、彼がやって来ていることを知ってしまいました。
名誉の絶頂と殺人
エイドリアンは、ワインを持って仲間たちのもとへと戻ります。
ワインのおりをのぞくためのデカンターの役割を、友人ファルコンに頼みます。
光栄の至りだと言って、デカンターを引き受けるファルコン。
このファルコン、髪型がエイドリアンとかぶっているのですが、同じくかわいいキャラクターでよい味を出しています。
ワイン仲間のステインが、エイドリアンがワイン協会の「今年の人」に選ばれたことを伝えようとします。
エイドリアンはすでに自分が選ばれていることを知っているのですが、知らないふりをしてとぼけるところもかわいいですね。
そして初めて聞いたように無邪気に喜んで見せるのもとってもチャーミング。
ワインのために尽くしてきたことが報われたエイドリアンは、本来ならば栄誉と喜びで幸福の絶頂にいるはずでした。
しかし一方で、大切なワイナリーを守るために肉親を消さなければならないという闇を抱えているのです。
アリバイ作り
ワイン仲間を帰宅させた後、エイドリアンは腹違いの弟リックの痕跡を消そうとします。
気を失ったリックを地下室にあるワインセラーに運び、目覚めても動けないように手足を縛ります。
そして空気の流れを滞らせるために、空調を切ります。
リックの車は車庫の奥へと隠します。
そのままニューヨークに旅立つのです。
ニューヨークに向かう飛行機の中で、エイドリアンは秘書カレンに、リックに手紙を出すように言います。
さらに5000ドルの小切手も、結婚祝いとして送るように頼むのです。
リックを殺したことを隠す、いわゆるアリバイ作りですよね。
電報にすることを提案する秘書に、電報は悲劇的だからと断るエイドリアン。
時間差をつけるために手紙にしたのでしょうか。
何も知らない秘書カレンは、5,000ドルを結婚祝いとして送りエイドリアンに、「お優しいですわね。」と褒めます。
「金はそのためにあるんだよ。」と、かっこつけてワインを飲むエイドリアン。
ワインがまずかったのか、じっとグラスを見つめる表情もまたチャーミングですね。
ワインへの愛-2 5,000ドルのワイン
ワインの競売会で、試飲したワインの銘柄をぴたりと当てるエイドリアン。
感嘆する仲間たちに
「ラベルを盗み見た。」と軽いジョークで場を和ませます。
そして「経済に刺激を与えに行きましょう。」と言って、オークションに向かいます。
オークションにかけられた銘酒を、高すぎるから自分には無理だと言いながら、執着するエイドリアン。
「人生は短い。悲しいほど短いのだ。」
と愛するワインを手に入れようとするその情熱はとても詩的ですね。
とうとう5,000ドルでワインを競り落とすエイドリアン。
「5,000ドルのワインが必要ですか?」とたしなめる秘書のカレンに
「5,000ドルのワインを必要とする者などいない。他の人に渡したくないだけだ。」
と語るエイドリアンが認めるワインは、さぞかし素晴らしい一品なのでしょう。
1973年は1ドル=280円。280円×5,000は140万円。
貨幣価値は今の2倍ぐらいはあるでしょうから、300万近い金額のワインということになりますね。
物語開始約20分 刑事コロンボ登場
リックを探すフィアンセ
物語開始約20分で刑事コロンボ登場です。
珍しくコロンボは、自分のオフィスである警察署にいます。
そこへ結婚式にフィアンセのリックが現われなかったことを心配したジョアン・ステーシーが、捜索願を出しにくるのです。
リックのフィアンセであるジョアンは、意外なことに清楚系の金髪美女でした。
ジョアンは夜中の2時に警察署を訪れたため、家出人係がおらず、殺人課のコロンボにリック捜しを依頼します。
当初朝出直すようにジョアンを諭すコロンボ。
ですが若い金髪美女の頼みでもあり、行方不明のリックがコロンボと同じイタリア系であるよしみから協力することにしました。
ジョアンは三日前からリックが行方不明だとコロンボに伝えます。
リックは日曜日にワインセラーに閉じ込められたので、この日は水曜日でしょうか。
あるいは翌日月曜日の結婚式から数えると、木曜日かもしれません。
ジョアンのもとに、リックの兄エイドリアンから、手紙と結婚祝いもちゃんと届きました。
日曜日にはリックからジョアンに電話があり、朝スキューバダイビングをしてから、兄に会うとのことでした。
リックはイタリアミラノ系のエンリコ・カッシーニというのが本名なのですって。
リックの写真を見て
いい男だ。これじゃ心配でしょう。
というコロンボって、ホント、コミュ力高いですよね。
殺人トリックと遺体工作
一週間のニューヨークの旅を終えて、エイドリアンはロサンゼルスに帰ってきます。
手に入れた5,000ドルのワインを、飛行機の中でもずっと抱きしめているエイドリアンは、本当に少年のような愛らしさ。
秘書カレンに、空港の駐車場に停めている自分の車で帰るというエイドリアン。
一緒に乗せて行ってくれるつもりがないエイドリアンに、カレンの少しさみしげな表情が印象的です。
この「別れのワイン」は、表情で気持ちを語る人物たちが、良い味わいを添えています。
殺害方法
帰宅したエイドリアンは、まずワインセラーに向かいリックの状態を確認します。
頭にカゴをかぶせられた形跡のあるリックは、多少暴れたようですが、息は絶えていました。
空調を入れて、ふぅーっと息をつくエイドリアン。
空気の流れを悪くして、窒息死させたのが殺害方法だと分かります。
このシーン、エイドリアンは裏地が赤いコートを手に持っています。
この作品のモチーフカラーであるワインの赤が、場面を美しくいろどっています。
遺体の行方
辺りが暗いので明け方でしょうか。
エイドリアンはダイビング用のウェットスーツを着せたリックの遺体と酸素タンクを、リックの車で海辺へと運びます。
トランクには、折り畳みの自転車を用意しています。
エイドリアンはリックの遺体を海に投げ込んだようです。
海の中をゆらゆらとさまようリックの遺体を、崖の上からエイドリアンはじっと見つめています。
しかし飛び込むには高すぎる海辺の崖だと思うんですが、本当にダイビングはあんな高いところから飛び込んで行うんでしょうか。
エイドリアンは、リックの車を崖の上に残して、自分は自転車で帰宅します。
ダイビング中の事故死に見せかけたわけです。
うちのカミさん-1 うるさいんで節煙中
翌朝でしょうか。
リックの遺体が上がったのでコロンボが現場に駆けつけます。
葉巻を噛んでいるコロンボに
「火をつけましょうか。」と待機していた警官が声をかけます。
いいんだよ。女房がうるさいんでね。節煙してるんだ。
と答えるコロンボ。
一回目のうちのカミさん登場です。
このシーン、吹き替えと字幕で少々意味が変わってきます。
吹替
コロンボは警官に、煙草を吸わないのではなく煙を吸わない節煙をしていると説明。
その後煙草を吸うことにしたのか、警官に「マッチある?」と尋ねる。
しかし「火をつけましょうか。」と提案したはずの警官に、持っていないと断られちぐはぐな会話のに。
字幕版
字幕版でコロンボは、警官に葉巻の値段を下げては?と提案され、生活レベルは保ちたいと説明。
その後、マッチではなく「鉛筆ある?」と警官に尋ね、ないと断られている。
コロンボの疑惑-1 リックの車
続いて警官は、何度も塗装を繰り返したリックの車をベタ褒めします。
リックの車は赤いフェラーリです。
この赤も、「別れのワイン」が示すワインカラーですね。
ちなみにエイドリアンの車はロールスロイスです。
コロンボもリックの車について、乗らずに毎日眺めているというほど、素晴らしい車でした。
リックの死体を見つけたのは、近所の釣り人でしょうか。
リックの誕生日パーティーにウェイトレスをしたことがあると言って、すぐに遺体の身元が割れたわけです。
リックは29歳だそうで、早すぎる死でした。
29歳で4度目の結婚をしようとしていたんですね!
わたしなんて一回も結婚できてないのにね!
リックの名前を聞いて、コロンボは通日前に家出人を探しに来たジョアンのフィアンセだと気がつきました。
コロンボの疑惑-2 兄弟の不仲
コロンボは遺体が見つかったリックの婚約者ジョアンに、訃報を伝えに行きます。
ジョアンは仲間たちと海辺でパーティーをしていました。
リックの死を知り、涙にくれるジョアン。
そこでコロンボは亡くなったリックが、兄エイドリアンと仲が悪かったことを知ります。
そしてエイドリアンが道楽のような商売をしており、リックがその会社を結婚資金のために売ろうとしていたことも知ってしまいます。
これでエイドリアンのリック殺害の動機があることを、すでにコロンボは予感してしまったわけです。
コロンボの疑惑-3 リックはスポーツマンだった
さらにリックの仲間たちは、スポーツ万能だったリックが、ダイビング中に亡くなったことに衝撃を受けているようです。
得意だったダイビングで亡くなるなんて不自然ですね。
コロンボの中に、リックがただの事故死ではないと確かな疑惑が芽生えた瞬間ではないでしょうか。
コロンボの疑惑-4 リックが死亡した日は雨か?
コロンボは、とあるバーでリック事故死のニュースを観ています。
熱心にニュースを聞き入るコロンボに、隣に居合わせた客が何度も話しかけて邪魔をするというコミカルなシーンです。
ニュースによるとカッシーナワイナリーの経営者であるリックは地元では有名で、プレイボーイでアマチュアのレーサーで賞金を稼ぐほどのスポーツマンでした。
スポーツは楽しむものという考えから、実力がありながらもプロには転向しなかったそうです。
監察医の見解
リックが亡くなったのは6日前の火曜日。
頭に強い打撲の跡があったため、岩で頭を打って意識不明
溺死ではなく、タンクの酸素が切れた窒息死。
このニュースを見て、コロンボの頭によぎるものがあったのでしょうか。
コロンボはしきりに周囲の客に、「火曜日は雨だったか。」と聞きまわります。
気象局や新聞社に電話をかけて、火曜日の天気を確認します。
結局この日に火曜日が雨だったかは分からなかったのですが、翌日に判明することとなります。
コロンボの予想通り、火曜日は雨でした。
コロンボの捜査開始
うちのカミさん-2 祖父のワイン作りを手伝う
コロンボは、カッシーナワイナリーを訪れてワイン工場の見学会に参加しています。
このシーンは、コロンボの声を銀河万丈さんにチェンジでしょうか。
この見学会の説明により、カッシーナワイナリーでは
・6種類のワインを製造
・シャンペンは泡で味がぼやけるので、エイドリアンが嫌って作っていない
・一つの道を究めたいのでボトルはボトル会社にまかせている
ということが分かります。
コロンボはガイドに
厳しい方ですね。カッシーナさんって。
部下も大変じゃないの?
と上手に、コロンボの中ではすでに容疑者であるエイドリアン・カッシーニの人柄を聞き出します。
ガイドが、大変でも賃金がいいとエイドリアンをかばうと、コロンボは自分も雇ってほしいと言います。
ワインの知識をガイドに聞かれて
じーさんが自家製ワイン作ってた頃、ぶどう踏むのをやりました。
と答えたので、ガイドはお話にならないと言った様子。
コロンボは家族の話をよくするということで、祖父であるじーさんも、うちのカミさんとして数えます。
コロンボの疑惑-5 リックの人物像への矛盾
コロンボは、掃除をしている男性従業員に声をかけます。
経営者であるリックが亡くなったのに、喪に服して休業しないのかと疑問を投げかけるのです。
掃除夫は、皆もそう考え驚いていたと、エイドリアンが皆を集めた今朝の朝礼について語ります。
エイドリアンは、弟は特別な存在で悲しいけれども、このワイナリーを守るために仕事を続けることを望むように言っただろうと、休業しないことを決めたのです。
コロンボはリックがワイナリーにはほとんど関与しない女と趣味におぼれる道楽息子であったことをすでに知っています。
リックさんってそういうタイプの人?
仕事一筋の?
と疑問を投げかけます。
掃除夫も、まあ、リックがそいういうタイプでないことを認めますね。
エイドリアンが事実と違うことを説明したという点で、コロンボの疑惑は深まり、ほぼ殺人犯だと特定してるんじゃないでしょうか。
コロンボの疑惑-6 一つだけ-1 リックの車好き
掃除夫に電話の場所を教えてもらったコロンボは、電話をかけて火曜日の天気を確認します。
火曜日は雨であったことが判明し、予想が的中したコロンボは笑みを浮かべ口笛を吹きます。
続いてリックのフィアンセのジョアン・ステーシーに電話をかけます。
ここでコロンボの声、小池朝雄さんに戻ったんでしょうかね。
一つだけお聞きしたいことがあるんですがね。
リックは車にたいしてはどんなでした?
とコロンボが定番セリフで訊ねると、ジョアンは自分がやきもちを焼くぐらい車好きだったと答えます。
コロンボの疑惑-7 喪中を気にしない
コロンボはいよいよ大本陣に乗り込もうと、受付で秘書カレンに、エイドリアンの行方を尋ねます。
コロンボに名前を訪ねるカレンですが、珍しくコロンボ、すぐに名乗らないんですよね。
「お遊びの相手はごめんだわ。」というカレンにやっと警察であることを告げるコロンボ。
エイドリアンがオフィスにいないので、喪中だからかと聞くコロンボですが、実際は研究室にいるとのことです。
弟が亡くなったのにバリバリ働くエイドリアンに、一瞬怪訝な表情を見せるコロンボ。
エイドリアンを呼ぼうとするカレンに
いやアタシが行くからいい。
方向さえ教えてくれれば勘はいい方なんで。
と、自ら探しに行くコロンボ。
これもコロンボの捜査スタイルですね。
容疑者のホームをわざとウロウロして、聞き込みしたり立ち聞きしたり、殺人につながる証拠を集めてゆくのです。
コロンボの疑惑-8 リックの死により得をしたエイドリアン
研究室へ着いたコロンボは、エイドリアンが研究スタッフの会話を立ち聞きします。
エイドリアンは弟リックの死を悲しんでいる様子は見せます。
経営者であるリックの死により、今後のワイナリーの行方を気にする研究スタッフ。
しかしエイドリアンは今までと何も変わらず、最高のワインを作るだけでそれがリックの望みだと言い切ります。
コロンボはリックがワイナリーを売ろうとしていたことを知っています。
そしてリックの死により、このままワイナリーを守ることができたエイドリアンの動機に気がついてしまうわけですね。
コロンボはエイドリアンに声をかけます。
コロンボのお約束シーン、最初は警察だと思われないということで、エイドリアンはコロンボを採用希望者だと勘違いします。
コロンボはエイドリアンに警察手帳を見せ、リックの死についてオフィスで話すことになりました。
ワインへの愛-3 葉巻はNG
コロンボのために、ワインを注いてくれるエイドリアン。
ワインの赤、エイドリアンのネクタイの赤、エイドリアンの机に飾られたカーネーションの赤がアクセントとなる美しいシーンです。
途中でエイドリアンが赤いカーネーションを自分の胸に飾るシーンもあります。
エイドリアンは、葉巻を吸おうとするコロンボを制します。
ワインと葉巻のお互いの味を損なうからなのですって。
ちなみに世界一のワインの原産国はイタリア。
乾杯後、エイドリアンはコロンボに、イタリア系ならワインがお分かりでしょうと言って、銘柄を当てさせようとします。
ええでも
そいつがどっかで落っこっちゃったらしいんで。
ワインだけでなくイタリア人で音痴ってのはアタシだけじゃないかしら。
と答えるコロンボに噴き出すエイドリアン。
同じイタリア系で心が緩んだのか、エイドリアンは「面白い方だ。」と評します。
コロンボの疑惑-9 弟の死に悲しまない
弟リックの死はショックだったろうと慰めるコロンボにエイドリアンは
「とんでもない。」
と答えます。
驚くコロンボに、危険なスポーツばかりしていたリックは冒険が過ぎて、むしろ今までよく生きた方だと、エイドリアンは説明するのです。
このエイドリアンの弟の死を悲しんだフリをしないところは、素直で好きですね。
その後形式的な様子で「弟を亡くして悲しまないものはいない。」と悲しんだふりはしますが一瞬で終了しました。
好き嫌いがはっきりしてそれを表情に出すエイドリアンは素敵です。
ワインへの愛-4 デカンターのこだわり
コロンボと話ながら、ワインをボトルからデカンターへ移す作業の許しをこうエイドリアン。
1時の食事のためのワインを、2時間半ほどデカンターで呼吸させるための作業です。
デカンターにおりを入れないことがテクニックが重要で、誰にも任せたことのないのですって。
コロンボの疑惑-10 リックに最後に会ったのはエイドリアン
コロンボは、リックに最後に会ったのがエイドリアンなので、それはいつかと尋ねます。
日曜日だと説明するエイドリアンですが、リックが亡くなったのは翌々日の火曜日。
そこで最後に会ったのは、死亡日の前日か当日ではないかと再度コロンボはエイドリアンに確かめます。
エイドリアンは秘書カレンを呼んで、リックが最後に来たのは日曜日であることを証言させます。
そしてエイドリアンとカレンは月曜日から7日間ニューヨークにいました。
火曜日に死亡したリックへのアリバイが成立したというわけです。
コロンボの疑惑-11 リックは雨の日にダイビングした
コロンボはリックがダイビング中に亡くなった火曜日は雨であったとエイドリアンに説明します。
雨の日にダイビングをするのかというのがコロンボの疑惑ですね。
エイドリアンは、水に潜ってしまえば雨は関係ないのではと、辻褄を合わせます。
コロンボの疑惑-12 5~6日置きっぱなしの車
コロンボは火曜日にリックが止めた車を、遺体が見つかる月曜日朝までの間、誰も見ていないことに疑問を投じます。
エイドリアンは、人通りの少ない場所の上、近頃は他人に無関心な人が多いからではと、答えます。
コロンボの疑惑-13 雨なのに車に幌をかけなかった
さらにコロンボは、リックがお気に入りの車に、雨をよけるための幌をかけなかったことがちぐはぐだと言い出します。
「お気に入りの車だったんですよねぇ。」というコロンボとその後のエイドリアンの声が一瞬だけ変わったような気がするのは、気のせいでしょうか。
エイドリアンは、車にはうといがと前置きした上で答えます。
幌はかけたけれどもすぐ戻ってくるので、強く締めなかったから、風で開いたのではないかと仮設を述べるのです。
何となく納得のいかない様子のコロンボですが、いったんは引き上げることにしました。
コロンボは立ち上がるのですが、思ったより酔いがまわって足に来たようです。
コロンボが飲んだワインは、カベルネ ソーヴィニヨンとのこと。
うちのカミさん-3 親父は闇ビールの用心棒
エイドリアンとの別れ際、コロンボはワインの勉強のためにまた来たいと言います。
家族がワインを飲まないのかというエイドリアンに
親父が禁酒法時代にちょいと手を出した程度なんでね。
闇ビールのトラックの用心棒で。
と言うコロンボ。
家族の話ということで、うちのカミさんとして数えます。
するとコロンボに本署から電話がかかってきました。
リックの遺体解剖の結果でした。
この結果を聞いて、おそらくコロンボはリックが殺害されたと確信したのではないでしょうか。
コロンボの疑惑-14 風程度で幌が飛ぶか
リックの検視結果を聞いたコロンボは、少し考えて、カレンの静止も聞かず、ノックもせずにエイドリアンのオフィスのドアを開けます。
そしてコロンボは、エイドリアンがリックの車の幌は風で飛んだという説明に疑問を投げかけます。
重い幌が完全に開くほど、強い風吹くのかという疑問です。
エイドリアンの、幌はどんな状態だったのかという質問に、コロンボは自分で書いたメモを調べます。
我ながらひどい字でねぇ。
どっかに欠陥があるんじゃないか。
と言いながら、メモには幌は開いていたとありました。
完全に開いていたかは分からないので、コロンボは写真を調べると言って帰ってゆきました。
これはコロンボが完全にエイドリアンの殺人を確信し、心理戦と駆け引きを仕掛けたシーンですね。
エイドリアンも疑われていることに気がついている様子です。
コロンボの疑惑-15 リックの胃が空だった
コロンボはリックのフィアンセジョアンに元を訪ねます。
解剖の結果、リックが亡くなる前の二日間何も食べていないことが分かったからです。
ジョアンによると、リックは断食などのダイエットはしていなかったし、よく運動するため大食漢で、基本何でも食べたと説明します。
断食して体力が弱っているのに、激しいスポーツであるスキューバダイビングをしたことは不自然です。
コロンボの疑惑-16 エイドリアンがデカンターをしなかった
コロンボは続いてワイン協会のファルコンとステインを訪ねます。
お決まりのコロンボは筆記用具を忘れて、ファルコンに鉛筆を借りるというシーンも登場。
ファルコンとステインは、カッシーナ・ワイナリーを訪れた日、リックは見かけなかったと証言します。
二人はワイナリー滞在中は、ほぼエイドリアンと一緒にいたけれども、彼がクラレットというワインを取りに行く4~5分ほど席を外したことも伝えます。
そしてファルコンは、クラレットをデカンターに移す名誉ある役割をまかされたので、気分良く楽しい時間だったと言います。
ここでコロンボは、デカンターの役割を決して人にまかせないエイドリアンの行動に不自然さを感じます。
「手が震えてはできない。」というコロンボは、落ち着いてデカンターをできない状態にエイドリアンがあったことに気がついてしまうのです。
つまり弟を殺すことに決めたエイドリアンは、不安定な精神状態となり手が震えてデカンターができなかったわけです。
エイドリアンに弟殺害の状況証拠ができてしまったわけですね。
エイドリアンの弟殺害の確かな根拠をつかんだコロンボは、ワイン協会を後にします。
うっかりファルコンの鉛筆を持って帰ろうとして、呼び止められるというお約束シーンを残して。
コロンボの追い込み
ワインを習うコロンボ
コロンボは酒屋の主人を訪ね、ワインについて教えを乞います。
自称この道40年のワインのことなら何でも知っている酒屋です。
並みのワインと極上品の見分け方の決め手は、価格だそうです。
懐に入り込むコロンボ
再びカッシーナ・ワイナリーを訪ねたコロンボ。
エイドリアンがついでくれた赤ワインの銘柄を、ピノ・ノアールがギャメイだとコロンボは見事に当ててみせます。
カッシーナ・ワイナリーで作っている赤ワインは3種。
バーガンディのピノ・ノアールとギャメイ、そしてエイドリアンと出会った日に飲んだカベルネ ソーヴィニヨンです。
カベルネ ソーヴィニヨンはすでに知った味なので、残るはピノ・ノアールかギャメイということになり、コロンボがごちそうになったのはピノ・ノアールでした。
ちなみにバーガンディはフランスのワインの名産地ブルゴーニュのことです。
ピノ・ノアールとギャメイ(ガメイ)はそれぞれぶどうの品種のことです。
ワインを愛してやまないエイドリアンは、「抜け目のない方だ。」と言いつつも、コロンボがワインの勉強をしてきたことにすっかり気をよくし、心を許してゆくのです。
うちのカミさん-4 親父の年収より高い
コロンボはワインは飲むものだと思っていたが、投資の対象になることも知ったと、エイドリアンに言います。
年数が経つほどワインの価値はあがるとエイドリアンはうんちくを語ります。
そしてエイドリアンはうっかり先日5,000ドルのワインを購入したことをコロンボに話してしまいます。
親父の一年分の給料より高い
と、家族へのセリフが出てきたので、うちのカミさんとして数えます。
エイドリアンは、コロンボの高いワインを見せてほしいというおねだりをまんまと聞いてしまうんです。
そしてうっかりリックを閉じ込めていたワインセラーに案内するんです。
こんなところにコロンボを案内したら、どんな証拠を見つけ出されるかたまったもんじゃないですよ。
うちのカミさん-5 ピクニックに行けないほど暑い日
地下倉庫にあるワインセラーに案内されたコロンボ。
暗い雰囲気に
気味が悪い。
ドラキュラ映画みたいだ。
どうしてこんなところに。
と感想を言います。
エイドリアンは、ワインは高温で傷むために、今はともかく夏場は常にエアコンを作動させていると説明します。
コロンボはふと気がつくことがあったのか
カミさんに電話を。
と言って、エイドリアンのオフィスの電話を借ります。
そして奥さんに電話して、ピクニックに行ったけれどもあまりに暑くて引き返した日がいつだったかを確認するのです。
コロンボの疑惑-17 デカンターをしなかった理由
ワインセラーに戻ったコロンボは、さまざまなワインを物色します。
古くて読めないワインボトルについて、エイドリアンは1,500ドルもするクラレットだと説明してくれます。
ワイン協会にふるまったクラレットは、安いワインかと聞くコロンボに、1947年ものの秘蔵のワインだと言うエイドリアン。
妙だな。
というコロンボ。
コロンボが、エイドリアンが決して他人にはまかせないデカンターの役割を、秘蔵のワインにも関わらずファルコンにお願いしたことに疑問を投じます。
エイドリアンは、ワイン協会の今年の人に選んでくれたお礼と、ファルコンなら慣れているのでまかせられると説明します。
手も震えない。
と追い打ちをかけるコロンボ。
これはもう、弟殺しのために手が震えてたから、デカンターができなかったんだろうって言ってますね。
コロンボの疑惑-18 ワインセラーの密室性
コロンボはすでにエイドリアンがリックをワインセラーに閉じ込めたことを疑っていますね。
何度もしつこく
閉じ込められたらイヤだな。
閉じ込められたらワイン三昧だ。
閉じ込められる心配はない?
エイドリアンに尋ねます。
そこでエイドリアンが外から扉を閉めて、コロンボが何分で出られるか実験をしようと提案します。
エイドリアンの言う通り、コロンボが中から押したら扉はあっさりと開き、閉じ込められる心配はないということが分かりました。
コロンボの疑惑-19 野ざらしだったのにきれいな車
コロンボの帰宅を見送りながら、エイドリアンは弟リックの遺体が返ってこないことに疑問を投げかけます。
そして事故死なのに殺人課のコロンボが担当していることも、気になっているようです。
「誰かが殺したと疑っているようだ。」というエイドリアンにコロンボは
でもあなたは心配ない。
死亡時には5,000キロの彼方にいた。
とアリバイを証明しますが、イヤミですよね。
そしていつものごとく帰るそぶりを見せて口笛を吹きながら歩きーの、しばらくしてから振り返ってからの
弟さんの遺体を返せない理由を思い出した。
言い忘れていた。
と叫ぶわけです。
崖に停めて1週間野ざらしだったはずのリックの車は、雨の跡もなく新車のようにピカピカでした。
この謎を解明できないと、事件解決とは言えず、リックの遺体は返せないのです。
謎の理由が分かったら、一番にエイドリアンに知らせると言って、コロンボはその場を去ります。
コロンボの疑惑-20 リックは帰ったのか
コロンボはカッシーナ・ワイナリーを後にするとき、守衛に何かを聞いています。
その夜、コロンボはエイドリアンの秘書カレンの家を訪ねます。
いつもきちんとまとめた長い髪をおろしたカレンは、別人のようですね。
コロンボはカレンに、日曜日にワイナリーを訪れたリックが帰るところを見たかと聞きます。
来るところも帰るところも見たと、カレンは嘘をつきますね。
コロンボは、守衛が12時半にリックが来るところは見たが、帰るところは見ていないと話したとカレンに伝えます。
カレンは、守衛は酒浸りでお情けでエイドリアンが雇っていると説明します。
コロンボは、納得したようです。
うちのカミさん-6 食事に同席
コロンボはカレンに電話をかりて、エイドリアンにかけます。
カレンのおかげで気になっていたことが解決し、迷惑をかけたお詫びに、エイドリアンとカレンをディナーに招待したいという電話です。
お店はエイドリアンに選んでもらい、明日と予定は決まりました。
子守りが見つかればカミさんも。
と、コロンボのカミさんも同席するとのこと。
明日のディナーの約束をして、コロンボはカレンの家を後にしました。
もう一つだけ-1 エイドリアンとカレンの付き合い
カレンの家から立ち去ったように思えたコロンボ。
庭から窓をたたいて再びカレンを呼びます。
もう一つ聞きたいんですが秘書になって何年?
とコロンボの定番セリフ「もう一つ」の登場です。
12年と答えるカレンに、長い付き合いで気心はしれているとほのめかすコロンボ。
つまりカレンがエイドリアンをかばってリックの帰りを見たと嘘をつくだけの信頼関係があると、コロンボは言いたいのです。
さあ、カレンもコロンボがエイドリアンを疑っていること、そしてエイドリアンの犯罪に気がついたようですよ。
カレンの疑惑
翌日、カレンとともにコロンボと約束レストランへ向かうエイドリアン。
エイドリアンは、「野暮にいえばこれはデートなのだから、気軽にエイドリアンと呼ぶように。」とカレンに言います。
そしてこれからも礼儀にこだわらなくていいというエイドリアンは、カレンのおかげでコロンボの疑いから免れたと思っているからでしょうか。
それともエイドリアンの犯罪に気がつきつつあるカレンを丸め込むつもりなのでしょうか。
しかし一方でカレンはエイドリアンに、コロンボが弟殺しを疑っていることを伝えます。
カレンもまた先週のエイドリアンの様子がおかしかったことに、疑惑を感じています。
ですがエイドリアンに「私を疑っているのか?」詰め寄られて、「いいえ。」とカレンは答えます。
ウェイターに値踏みされるコロンボ
レストランについたコロンボ。
冴えない風貌をレストランマネージャーにじろじろ見られて値踏みされ、末席に通されるのはお約束のシーンですね。
後からやってきたエイドリアンが「暖房の前の席とは失礼な!」と怒って席を変えさせます。
エイドリアンはやはり上流階級、コロンボは下流階級であることを示すシーンですね。
まあコロンボの場合は作戦で、わざとこきたなくしているのかもしれません。
うちのカミさん-7 会計を知ったら大事だ
食事を終え、談笑するコロンボとエイドリアンとカレン。
コロンボのワインの選択にエイドリアンは「よく研究されましたな。」とご満悦。
予習したんですと言って、コロンボはデザートワインにフェレイラ・ヴィンテージ・ポート45年ものを注文します。
その名を聞いてエイドリアンは顔色を変え、おそらく置いてないし、あっても値が張ると、コロンボに説明します。
ソムリエがあるかどうか探してくれるようです。
カミさんが会計を知ったらおおごとだ。
というコロンボ。
カミさんは子守りが見つからなかったので、来られなかったそうです。
会計を気にするコロンボに、エイドリアンは支払いを半分持つと申し出ます。
しかしコロンボは
あなたを疑って迷惑をかけた。
と、エイドリアンの申し出を断ります。
上司に告げ口されなくてよかった。
感謝してます。
というコロンボですが、いつも告げ口されても上司はコロンボを信頼してまかせてますよね。
このコロンボのセリフもいやらしい駆け引きですね。
ワインへの愛-5 ワインの酸化を見抜く
何と!あるはずもないと思っていた貴重なワイン、フェレイラ・ヴィンテージ・ポート45年ものがありました!
驚きと喜びと味わいへの期待とワインへのときめきを、繊細な表情で魅せるエイドリアン。
初恋に胸を高鳴らせる乙女でさえ、このような繊細な表情は見せないでしょう。
まずコロンボが味見するのを、自分も味わっているかのようにキラキラした瞳で見つめるエイドリアンは本当にかわいいです。
得意げにカレンとエイドリアンにワインをつぐソムリエの表情もいいですね。
さあ、お待ちかねのワインを口にしたエイドリアンなのに…
「これはひどい。飲むに堪えない。」
と怒り出したのです。
「偉大なワインは美術品と同じなのだ。
細心の注意で保存するべきだ。
この酒を65度以上の高温にさらしたな。
このような無神経さは許せない。」
と席を立ち、会計を払う必要はないと帰り支度を始めたのです。
エイドリアンの舌によると、ワインは過熱のために酸化しているそうです。
騒ぎに駆けつけたレストランマネージャーにも
「こんな酒を出すとは侮辱だ。素晴らしい食事がだいなしだ。この汚水で。」
と、エイドリアンの怒りはとまりません。
エイドリアンはよほどのVIP待遇なのか、レストランマネージャーは
「お許しください。お勘定はけっこうですので。」
と平謝り。
店を後にするエイドリアンとカレンを追うコロンボですが、一度戻ってきて、お金をマネージャーに渡します。
残されたマネージャーとソムリエが、よほどワインの味が気になるのも無理のないこと。
二人同時に、残されたワインをテイスティングするシーンは、ユニークです。
コロンボの追い込み-1 とても暑い日
レストランの外でエイドリアンとカレンはコロンボを待ちます。
出てきたコロンボは
食い逃げするにはいい手だ。
と、おどけます。
エイドリアンも
「取り乱して…。」とさすがに反省の色を見せますが、あの酒はひどかったそうです。
暑さのせいで?
というコロンボは、思い出したように、冷蔵庫の修理の話を持ち出します。
先週、エイドリアンとカレンがニューヨークに滞在中、最高気温43度を越える日があったのだそうです。
ピクニックに行ったけどあまりの暑さに逃げ帰り、ビールはコーヒーのように熱くなっていたとコロンボは語ります。
その話を聞いて、エイドリアンの顔色が変わります。
そしてコロンボは
ではもう、お目にかかることもないでしょう。
と別れの挨拶をするのです。
コロンボの追い込み-2 カレンの嘘を伝える
コロンボは続いてカレンに
フィールディングさんありがとう。
おかげで事故だと分かりました。
とお礼を言います。
コロンボは、カレンがリックが帰るところを見たと証言しなければ、まだエイドリアンを疑っていたと言います。
勘繰り過ぎですね。
というコロンボですが、すでにコロンボはエイドリアンの犯罪を確信しています。
とぼけたふりして見事な心理戦です。
どこまでもしたたかな男です。
リックはカッシーナ・ワイナリーのワインセラーで命を終えました。
ですから、カレンがリックの帰宅を見ているはずがないことは、エイドリアンが一番よく知っているのです。
だから当然エイドリアンは、コロンボと別れた後カレンに、なぜ嘘をついたのかと確かめるわけです。
カレンの追い込み
カレンはエイドリアンを守るために嘘をついたと言います。
そしてカレンはエイドリアンに、「あなたがすべてです。」とその想いを告げるのです。
好きな人がずっと独身のままそばにいるというのは、幸せなようで蛇の生殺しというやつでしょうか。
なかなかキツい恋ですが、カレンは一途ですね。
「驚きだ。」というエイドリアンですが、ワインを愛し過ぎた独身貴族は、カレンの気持ちに本当に気がつかなかったのでしょうか。
カレンはエイドリアンがリックを殺したことをほのめかします。
「エイドリアンの生きがいを奪おうとしたのだし、誰も責めない。」と言うカレンは、エイドリアンをかばうようでいて、秘密の共有者であることを暗に伝えてますね。
「コロンボは証拠を握っていない。」というエイドリアンもまた、カレンの前で罪を認めたのです。
しかしエイドリアンはカレンの気持ちを、秘書としか思えないと拒みます。
なかなかお似合いの二人だと思いましたが残念ですね。
しかしカレンは
「これからはパートナーよ。700ドルの月給よりもっといいものをいただくわ。」と追い込みをかけるのです。
愛が目当てかお金目当てか分かりませんね。
両方でしょう、女は欲張りですから。
「愛情を無理強いできない。」というエイドリアンは、悲しいほどカレンに愛のかけらもないのでしょう。
しかしカレンは引きません。
「愛がなくても結婚できるわ。つまらない理由で結婚する人も。」と結婚をせまり、キスをねだりますが、拒まれてしまいます。
やだ、わたしだったらプライドが傷つく~。
エイドリアンは、「明日にしよう。」と何とかその場から逃げ出すのです。
コロンボのチェックメイト
カッシーナ・ワイナリーに戻ったエイドリアンは、ワインセラーのワインを全て処分するようです。
怒りと悲しみにまかせてワインをたたき割ります。
翌日エイドリアンは、リックの遺体を沈めたあの崖から、次々とワインを海へと投げ捨てるのです。
エイドリアンが崖に停めた車にワインを取りに戻ると、コロンボが待ち構えていました。
ワインを捨てた言い訳にエイドリアンは、「二級品を処分しただけだ。」と言います。
シャトー・デイケムの38年ものが?
と答えるコロンボは、すっかりワイン通になっています。
「良い銘柄が良いワインとは限らない。」と答えるエイドリアンに
気温の急上昇が命取りでしたね。
と言います。
つまり銘柄の良いワインも、高温にさらしたためにダメになったことをコロンボは見抜いたのです。
エイドリアンはリックを窒息死させるために、ワインセラーのエアコンを切りました。
そしてこの時期では予想できない猛暑にみまわれ、ワインセラーは高熱となり、ワインを痛めてしまったのです。
コロンボはエイドリアンがニューヨークに滞在中に猛暑になった話をすれば、ワインの酸化に気付くと踏んだのです。
おつらかったでしょう。
というコロンボに、「死ぬ思いでした。」と涙を浮かべながら言うエイドリアンが切なくてきゅんきゅんします!
コロンボのトラップ
ワインが酸化したことに、なぜコロンボが気がついたのかと尋ねるエイドリアン。
アタシもワルでね。
というコロンボは、エイドリアンのワインセラーを見学したときに、こっそりとフェレイラ・ヴィンテージ・ポート45年ものをくすねていたのです。
つまりエイドリアンとカレンとコロンボが食事したレストランで出されたワインは、カッシーナ・ワイナリーのワインセラーに眠っていたものだったのです。
エイドリアンは自らの舌で、自らのワインセラーのワインが高熱にさらされたことを証明したのでした。
「まったく皮肉なものだ。」と苦笑いするエイドリアンのセリフの通り。
高温で酒がダメになったことを見抜ける人間は、わずかだそうです。
この季節に43℃の猛暑になることに納得できないエイドリアンですが、コロンボが言うには1938年と1870年に44度の記録があるそうです。
「残念だ。史上最高ならよかったのに。」というエイドリアン。
それならばあきらめもつくというものですね。
あっさりと逮捕を選ぶエイドリアン。
愛するワインを失った今、もはや俗世に未練はないのかもしれません。
洗いざらい自供するというエイドリアンは、「重荷をおろした気分だ。」と清々しささえ感じます。
カレンに真相を知られ結婚をせまられたとコロンボに言うエイドリアン。
「女性は怖いですな。結婚するより刑務所の方が自由かも。」
というエイドリアンは、どこまでもチャーミングです。
別れのワイン
コロンボとエイドリアンは、カッシーナ・ワイナリーで車を停めます。
ワイナリーの行く末を心配するエイドリアン。
「ワイン作りに尽くしてきました。幸せでした。」
と語るエイドリアンは、例え人でなくとも、愛するべきものがある人生はこんなにも美しく幸福であることを教えてくれます。
そんなエイドリアンのために、コロンボはモンテフィアスコーネという極上のデザートワインを用意してきました。
エイドリアンは
「この場にふさわしい。最後の宴に。よく勉強された。」とコロンボを讃えます。
これが逮捕した刑事と、逮捕された殺人犯の関係でしょうか。
殺人犯逮捕のために、エイドリアンと同化するかのように彼の愛したワインを学ぶコロンボ。
エイドリアンとエイドリアンの愛とワインへの敬意。
そしてコロンボが学んだワインの知識が、やがてエイドリアン逮捕のチェックメイトとなります。
エイドリアンもまた自分を深く理解したコロンボに、敬意を抱くのです。
この刑事と殺人犯の不思議な友情は、極上のワインよりも深く深くわたしたちの心にしみわたり、切ない余韻を残しました。
ANY OLD PORT IN A STORM
邦題「別れのワイン」の原題は、「ANY OLD PORT IN A STORM」です。
「ANY PORT IN A STORM」という慣用句があり、そのまま訳すると「嵐の中ではどんな港でも良い」という意味です。
つまり「「窮余の一策」という意味で、苦し紛れに思いついた手段のことなのですって。
この慣用句の「PORT」に「OLD」をつけることで、レストランのシーンの希少なポートワインの暗示とも取れますね。
エイドリアンが愛するワインを奪われそうになり、苦し紛れに弟を殺したこと。
コロンボがエイドリアンの犯行を暴くために、苦し紛れにワインを盗んでエイドリアンに飲ませたこと。
「ANY OLD PORT IN A STORM」は、両方の意味を指しているのではないでしょうか。
シリーズ最高傑作
シリーズ最高傑作と誉れ高いこの「別れのワイン」。
本当に素晴らしかったですね。
その素晴らしさは、エイドリアン・カッシーニを演じたゲストスター、ドナルド・プレザンスの繊細な演技力にほかならないでしょう。
わたしはこのドナルド・プレザンスという役者さんを始めて知ったのですが、どんな役も選ばずにこなして表現力を磨いた脇役俳優で有名な方だそうです。
くるくる変わるチャーミングな表情と、豊かな表現力にわたしはすっかりこの役者さんのファンになってしまいました。
ドナルド・プレザンスのピュアな魅力と、ピュアなワインへの愛がそのままに、「別れのワイン」は非常に芸術性の高い作品になったのではないでしょうか。
美しく儚く切なくとても詩的で、熟成されたワインのようなこの作品は、コロンボファンにいつまでも醒めない酔いを残し続けるでしょう。
毒のある花との類似点
コロンボ作品19話「別れのワイン/ ANY OLD PORT IN A STORM」ですが、実は前作18話「毒のある花/ LOVELY BUT LETHAL」と、構成が全く同じなんです!
「別れのワイン」のエイドリアンは愛するワインを守るため、「毒のある花」のビベカは愛するしわ取りクリームを守るため、衝動的に殺人を犯してしまいます。
エイドリアンの場合は、気絶させただけで死にはいたりませんでしたが、殺害方法も似ていて、二人とも頭部を固いもので強打させます。
殺害相手も、エイドリアンは腹違いの弟、ビベカは元恋人と、親密な関係にある人物です。
また途中で腹心とも呼べる人物に、殺害に気付かれて脅迫されるところも同じですね。
エイドリアンは秘書に気付かれ結婚をせまられ、ビベカはスパイに気付かれ出世をおねだりされます。
ここでビベカは秘密を知った相手を殺してしまいましたが、エイドリアンはそこまでしませんでした。
これが「別れのワイン」という作品の品性にも繋がります。
ラストシーン、殺人を犯してまで守りたかった大切なものを、崖から捨てるシーンも全く同じですね。
エイドリアンは殺人トリックのために酸化してしまったワインを、ビベカは殺人の証拠隠滅のためにしわ取りクリームを、海へ投げ捨てます。
この構成が全く同じの作品を並べて放送したのは、何か意図があるのか、ただの偶然か。
全く同じ構成にもかかわらず、この二つの作品は、全く違う印象を与える物語になっていますね。
一つは最高傑作として名高い作品、もう一つはどちらかというと地味なその他大勢として扱われる作品です。
構成がどれだけ素晴らしく同じだからといって、同列レベルの作品が出来上がるわけではないということです。
でもわたしは、強い女が活躍する「毒のある花」も好きな作品です。
コロンボの王手
今回のコロンボの王手は少し難しかったですね。
エアコンを切って窒息死させたことを見抜いて、ワインの酸化に気がついた。
そしてワインが酸化していることを、殺人犯に証明させた、です。
コロンボがワインの勉強をしなければ、エイドリアンという男を深く知らなければ、とても見抜けなかったトリックです。
コロンボの執念に脱帽ですね!
ただまあ、ワインの酸化が殺害の証拠になるかといえば、少し弱い気もします。
しかし愛するワインを失ったエイドリアンにとっては、秘書との結婚から逃れるためにも、逮捕された方が気持ちが楽なのでしょう。
コロンボは家族の話をよくするということで、「うちのカミさん」というセリフは7回登場しました。
そのうち祖父の話が1回、親父の話が2で、カミさんは4回でした。
ではまた、刑事コロンボでお会いしましょう!
刑事コロンボが、視聴できる動画サービスは、以下の二つです。
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