作品情報
殺人犯: 女性弁護士レスリー・ウィリアムズ/リー・グラント(山東昭子)
被害者: 殺人犯の夫 ポール・ウィリアムズ/ハーラン・ウォード
その他出演者
コロンボ:ピーター・フォーク(小池朝雄)
マーガレット:パトリシア・マティック(上田みゆき)
カールソン:ハロルド・グールド(北村弘一)
マイケル:ジョン・フィンク(納谷六朗)
殺害の動機: 遺産目当て他
監督:リチャード・アーヴィング
脚本:ディーン・ハーグローブ
いきなり殺人事件勃発
今回は早いです。
物語が開始して2分ちょっとで、被害者が銃殺されます。
始まって2分なので何で殺されたのか、動機も目的も犯人と被害者の関係も分かりません。
殺害現場は自宅らしき豪邸。
被害者男性が殺される直前に、犯人の女性に「レスリー、君は…。」と話しかけたことから、どうやら二人は家族で夫婦なのかなと予想できます。
犯人はすでに分かっていますが、物語が展開していくにしたがって、動機が明らかになってゆきます。
アリバイ作り
画像は殺されたポール・ウィリアムズです。
犯人の女性レスリー・ウィリアムズは、脅迫状を作り、アリバイ作りのため夫ポールの声の入ったテープを改ざんします。
そして夫ポールの遺体を夫の車で運び、崖から捨てます。
夫の車は道路に乗り捨てて、夫が帰宅途中に車から誘拐されたように装うのです。
そして歩いて帰り、ポストに脅迫状を投函します。
さらに知人に電話をかけ、翌日事務所に「テニスを忘れないように、一言電話して。」と連絡してくれるよう頼むのです。
レスリーのファッションチェック-1 黒づくめの殺人ファッション
直接のストーリーとは関係ありませんが、この美人弁護士のレスリー・ウィリアムズの華やかなファッションも素敵です。
殺害のシーンでは黒ずくめなので細かいファッションが分かりませんが、洗練されてますよね。
犯人は女弁護士
翌日は法廷のシーンから始まるので、レスリー・ウィリアムズが弁護士だということが分かります。
事務所に戻ったレスリーのもとに、昨日知人に頼んだように、ちょうど電話がかかってきます。
「レスリー、一言よ。テニス」とレスリーの依頼通り電話した知人は、そのまま電話を切ります。
レスリーは電話の会話が続いているふりをします。
夫を誘拐した犯人からかかってきた電話のようにふるまうのです。
レスリーのファッションチェック-2 マント風スーツ
マントみたいに長いジャケットが素敵な格子模様のツーピース。
秘書のナンシーの制服もかわいいですね。
コロンボ登場
コロンボが登場したのは、物語開始12分30秒当たりでしょうか…。
レスリーの自宅に、犯人から身代金受け渡しの電話を待つFBI (Federal Bureau of Investigation)が逆探知機を設定しています。
レスリーはそれとなく、逆探知機で犯人の居場所が分かるのかを確認します。
FBI捜査官は、短い会話時間だと難しいが、長い時間ならできると答えます。
FBIは連邦捜査局、アメリカ合衆国の警察機関です。
コロンボは、ロサンゼルス市の警察です。
FBIの方が規模が大きく、強い権限と権力を持っているので、市警察よりも優秀なはずです。
そこにコロンボは、市の警察担当者として、レスリーの自宅を訪ねるのです。
うちのカミさん-1 ではなくうちの女房のボールペン
コロンボはレスリーの自宅チャイムを鳴らしたものの、ボールペンを落としたようで、玄関先でウロウロしています。
心配するレスリーに
「女房から巻き上げたばかり(のボールペン)なので無くしちまうと『あらあなたまたですか』なんてうるさいもんですから。」
と答えるコロンボ。
出ましたねぇ。
登場して1分程度でお決まりのセリフ「うちのカミさん(うちの女房)」。
ボールペンをなくしたコロンボに、「あらあなたまたですか。」と妻に言われるのも、筆記用具をよく失くすというキャラクターをたった一言で物語っています。
このセリフは、コロンボファンからすれば、かなりツボですよね。
レスリーのファッションチェック-3 パープルの部屋着
家着だと思うのですが、パープルのドレスが素敵ですね。
コロンボの疑惑-1 飛行機の操縦ができる女性弁護士
すでにFBIが捜査を取り仕切っている中、コロンボは所在なさげにウロウロしています。
身代金の受け渡しが、レスリーの操縦する飛行機から投げ落とす方法で行われることを知り、コロンボは違和感を覚えます。
まず女性であるレスリーが、飛行機を操縦できることへの驚き。
そして犯人が、レスリーが飛行機を操縦できることを知っていることに引っかかりを感じるのです。
コロンボの疑惑-2 ハウスキーパーが休暇中
レスリーは、FBI捜査官やコロンボのために食事を用意することにします。
コロンボは大きなお金持ちの家にお手伝いがいないことを不思議に思い、レスリーに尋ねます。
レスリーはハウスキーパーが休暇中であることをコロンボに伝えます。
夫を殺害するために、レスリーはあえてハウスキーパーに休暇をとらせたのでしょうが、これを見逃すコロンボではありません。
「この家にお一人で?そりゃ大変でしょう。
何か手伝えることがあったら言ってください。
ジャガイモの皮むきとか。」
とコロンボはお得意のほのめかしをします。
ジャガイモの皮むきを手伝うと提案するところが、何ともコロンボのキャラクターに合ってますね。
顔がじゃがいもみたいなおっさんですからね!
コロンボの疑惑-3 夫から身代金受け取りの電話
レスリーが事前に準備した夫ポール・ウィリアムズの録音された声の電話が、自宅にかかってきます。
これは実はレスリーの事務所の電話からかかってきたものであり、特定の時間にかかるように細工がしてあるんです。
以下が夫の録音テープを使った、レスリーの一人芝居の会話です。
青部分が夫の録音テープです。
君かい
もしもし
レスリー
あなた
やむをえない。30万ドル届けてくれ
いつ
明日の晩、指示通り頼む
あなた!あなた!
正確な逆探知ができないように計算された、いたって短い会話です。
この会話を聞いて、コロンボはあからさまに腑に落ちない様子で首をかしげています。
そして椅子に座りこんで考え込むのです。
FBI捜査官であるカールソンが、コロンボにそろそろ帰るように声をかけます。
コロンボは
「変わってますなぁ。ここの奥さん。
何て言うか女性には珍しいタイプだ。」
と、カールソンにレスリーへの不信感を打ち明けます。
「どうしてだね。」とコロンボに疑問を投げかけるカールソン。
コロンボは誘拐された主人にたいしてレスリーが、無事を確認しなかったことに違和感を覚えます。
この後のコロンボのセリフがけっこうシビアで怖いです。
うちの女房-2 はいさよなら
「もしもあたしが誘拐されたとして女房が『ご無事?』って聞いてくれないとしたら「はいさよなら」ですな。」
これが今回二度目のコロンボのうちの女房のセリフです。
おどけた言い方ですが、なかなかシビアで怖いセリフです。
この事件の裏に女弁護士レスリー・ウィリアムズが大きくかかわっていることを、コロンボはすでに気が付いていますね。
コロンボの疑惑-4 身代金を入れるかばん
レスリー・ウィリアムズはすでに自分が殺して亡くなってしまった夫ポールのために、全財産をなげうって、身代金を用意します。
まさにタイトル通り、死者の身代金ですね。
レスリーは、身代金を入れるかばんを自分で用意しています。
何かを感じ取ったのか、コロンボはその白いかばんをじっと見つめています。
コロンボの予想通り、レスリーは身代金を入れたかばんと、全くおなじかばんを用意していて、こっそりすり替えるのです。
つまりレスリーが持ったのは、空のかばん、身代金の入ったかばんは、空港のレスリーのロッカーの中。
ここでレスリーの夫殺しの目的が、どうやら身代金、夫の財産であったことが分かります。
レスリーのファッションチェック-4 操縦するときのトレンチコート
レスリーは一人で小型飛行機に乗り、身代金受け渡しの場所まで向かいます。
飛行機に乗るときのファッションも素敵ですね。
犯人の合図である自作自演のライトを点滅させて、飛行機から落とします。
さらにその合図の場所に、空っぽのかばんを落とします。
空っぽのかばんを見つけた警察は、犯人がお金だけ抜き取ったのだと考えます。
しかし一人納得できないコロンボ。
コロンボはすでにこのとき、レスリーを完全に疑っています。
かばんのトリックに気がついています。
だから飛行場のレスリーのロッカーを、勝手に開けて何かを探すのです。
しかし何も見つかりませんでした。
レスリーの完全犯罪はこれで完了です。
ここまでで30分と少し、物語の導入部になるのでしょうか。
レスリーのもう一人の敵、登場
レスリーのファッションチェック-5 青いドレス
身代金を手にして、自宅に帰ってきたレスリー。
青いドレスが素敵です。
レスリーは優秀な弁護士、キャリアウーマンですが、ファッションはフェミニンなものが多いですね。
レスリーが身代金を衣裳部屋の奥に隠して、ほっと一息ついたところで招かれざる客が…。
その客の名前はマーガレット、レスリーの義理の娘です。
つまり夫ポールの連れ子ですね。
父親の誘拐事件を聞いて、留学先のスイスから慌てて帰国したのです。
二人の険悪な会話から仲が悪いことが分かります。
自分が殺した男の娘なんて、レスリーにとっては目の上のたんこぶ、まさに最大の邪魔もの、敵ですね。
まだ未成年?か学生の娘がいる男を知っていて殺すというレスリーの残酷な性格もうかがえます。
このマーガレット、どうやらコロンボと同じく、レスリーを追い詰める役割を果たしそうなにおいがプンプンします。
レスリー対マーガレットの、戦慄母娘バトルがめちゃくちゃ怖くて物語の一つの見どころです。
ビリー・ワイルダーの「深夜の告白」
翌日朝からテレビを見ているマーガレット。
流れている映画はビリー・ワイルダーの「深夜の告白」です。
保険金目当てで夫を殺した後妻に協力した保険勧誘員の話のようです。
「古い亭主に飽きたら保険をかけて金に換えませんかと勧めて歩く保険勧誘員。」
というセリフが、まるで夫を殺したレスリーを暗示しているようで怖いですね~。
じっとこの映画に見入るマーガレットの表情も、何かに気がつきつつあるようです。
ちなみに映画「深夜の告白」の感想です。
わたしのインスタより。
コロンボの疑惑-5 夫の死の詳細を聞かない
仕事場で、夫ポールの死を知らされたレスリー。
しらじらしく、倒れこむ演技なんてしちゃってます。
皆が心配する中、一人不信感をあらわにする表情のコロンボ。
レスリーが夫の死について、どこで見つかったとか、遺体の状況、死因について聞かないことを疑問に感じています。
そしてFBI捜査官のカールソンに
「あんなにしっかりしている女性が大勢見てる前で急にぶっ倒れちまうんだから。」
と、レスリーの反応が、用意されたかのように出来過ぎていると言います。
カールソンは、コロンボにレスリーを疑うなんて「げすの勘繰り」と言い放ちます。
「これはFBIの事件だ。田舎警察の君が口出しすべきことじゃない。」
これよこれ。
コロンボを田舎警察とバカにするFBI。
コロンボの見どころは、一見バカにされるような立場のコロンボが、犯人やその他の人を追い込んでいくというカタルシスですね。
決して権力に屈しないコロンボは
「あれ?お言葉ですけどね
そりゃ筋違いじゃないですか。
単なる誘拐事件じゃなく殺しと決まったんですよ。
つまりこの事件はあたしの畑だ。後には引けませんな。」
と負けていません。
さすがコロンボ!
おれたちのできないことを平然とやってのけるッ!
そこにシビれる!あこがれるゥ。
レスリーのファッションチェック-6 ワンピースに毛皮のコート
このシーンでのレスリーのファッションは体にぴったりとした細かい模様のあるワンピースに、ゴージャスな毛皮のコート。
1970年代のファッションですね。
この毛皮のコートは、お気に入りなのか使いまわす頻繁に登場します。
レスリーのファッションチェック-7 悪魔のようなドレス
家に帰って部屋着に着替えたレスリー。
黒っぽい濃い色のドレスです。
夫の死にショックで眠れないだろうと、睡眠薬を用意してくれる部下。
皆がレスリーの家から引き揚げた後、彼女は睡眠薬を暖炉に棄ててしまいます。
そして鼻歌を口ずさみながら、ご機嫌で踊りだすのです。
怖い!
このシーンが一番怖いんじゃないですか?
まるで悪魔のようです。
夫を殺しておいて、夫を殺された悲劇の妻を演じた後、一人に返って素に戻る瞬間ですね。
レスリーは全てが完璧に計画通りいったことに、喜びを隠しきれません。
この様子を目の当たりにした義娘のマーガレットは、何を察したのか表情が引きつっています。
レスリーのファッションチェック-8 喪服
レスリーの殺した夫ポールの葬儀のシーンです。
黒いベールをかぶったレスリーの横顔、きれいですね~。
キリスト教徒の女性が、結婚式やお葬式でベールで顔をおおうの、素敵ですよね。
一仕事成功させた女の充実感が、この美しさをかもし出しているのでしょうか。
しかしそれを許さない女が一人…。
コロンボの疑惑-6 義娘との不仲
ポールの葬儀を終えた墓地で、娘のマーガレットは、皆の前でレスリーに食ってかかります。
「こうなればいいと思ってたのね!」
と言って、マーガレットはレスリーの頬をひっぱたたくのです。
これを見ていたのがコロンボ。
コロンボは本当に神出鬼没。
どこにでも顔を出しますね。
これでコロンボは、レスリーが夫を殺したことを確信したのでしょう。
コロンボはマーガレットに困ったことがあったら相談してほしいと声をかけます。
きれいな広い墓地ですね。
お墓の美しさでその国の文化レベルが伝わってきますね。
義母と義娘の戦慄のバトル
葬儀の後、自宅に戻ったレスリーとマーガレット。
ただでさえ険悪な二人なのに、葬儀での一見でさらに亀裂が深くなります。
この女同士の戦慄のバトルもみものです。
レスリーは、身代金を作るために財産がなくなってしまったので、マーガレットの学費が払えないと言い出します。
身代金を全部せしめておいて、マーガレットを父親のいない娘にしておいてこの言い草。
レスリーがいかに強欲か、いかにマーガレットが嫌いか分かるシーンですね。
レスリーは本当に怖い女です。
長くなったので続きます。